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第26話 銀髪弓使いの幕間 その11

「――そんな事があるのか」


 目の前に立つエクストの知り合いであるレイヴンと自身が戦った事があるモルスがフレンド関係である事を知ったヴェルフは驚きの声を出した。


「まさか貴女と死神モルスがフレンド同士だったとは……」

 

 その関係は以前からの知り合いであったエクストも初めて聞く事であった様子であった。


「隠していた訳ではないですけど」


 少し困った色合いで事情を口にするレイヴン。


「とは言え――二つ名のフレンドがいる事を話したのはモルスにも私の事を話していて問題ない。そういう事でしょうか」


 そんな事を口にするエクスト。その言葉はヴェルフにも届いたが解読が不可能な言い方であり困惑していたがそれを尻目にレイヴンは言葉を返した。


「はい! そういう事です」


 それはレイヴンがエクストが言いたい事を完全に理解している返事であり、欠片も理解できないヴェルフは呆然としてしまう。

 そんな中――


「後でヴェルフさんもわたしとモルスちゃんの盟約めいやくを結びませんか?」


 レイヴンは唐突にヴェルフに話しかける。


「め……盟約!」


 言葉が飛んでくると考えていなかった為に驚きの声をヴェルフは上げるが聞こえた言葉はレイヴンがミストフォロスに所属している事を知っている彼からすれば会話の流れとして聞くと唐突すぎる――だが会話の内容としては唐突ではなかった。

 故に盟約がゲーム内でどんな意味を成すのか尋ねる事はない。


「後でいいんじゃないかい? どうせしばらくは行動を共にするんだから」


 しかし盟約は今の状況に一切関係ない事を口にすると「そうですね」とレイヴンの同意を意味する回答が即時に回る。


「しかしレイヴン。モルスとはどう知り合いました?」


 エクストの言葉にて話がヴェルフとレイヴンが戦ったことがあるプレイヤーの話に巻き戻される。


「――失礼。貴女のプライベートに関わって……」


 しかしそれがレイヴンの私事に触れると考えたエクストは言葉を止めるが――


「全然そんな事はないですよ」


 レイヴンはそれを全面的に否定するとそのまま喋り出した。


「モルスちゃんとはコロシアムで戦った後に出会いました」


「その様な例は初めて聞きましたよ」


 驚きを漏らすエクスト。

 ヴェルフはフレンドになった理由を推測すると口にした。


「ならモルスとは戦いの中で友情が芽生えたのかい?」


「間違ってはいないですけど」


 ヴェルフの言葉に濁った答えを返したレイヴン。

 続きは直ぐに始まった。


「正確に言うなら、共闘ですね」


「共闘?」


 疑問を浮かべるヴェルフであったが横からエクストが入り込んだ。


「方式は個別のバトルロイヤル。その試合でレイヴンとモルスは集団に狙われたっと言ったところでしょうか」


「はい。最初に戦ったのはモルスちゃんだったんですけど、途中か戦いに加わった人達がわたし達ばかりを狙い始めて」


「それをモルスと一緒に返り討ちしたのかい?」


 事の顛末を推測したヴェルフにレイヴンは頷いた後に話をを再開した。


「モルスちゃん以外のプレイヤーを倒した後再度戦おうとしたら時間切れで点数勝負になってその結果は引き分けでした。その後コロシアムの受付場所に転送して町に戻ろうとした時にモルスちゃんと鉢合わせたんです」


「共闘した件で意気投合、それ以降仲良くなったと」

  

 話を止めたレイヴンにモルスと町で再会していて以降に起きた事を予想してエクストに言った。


「そんな感じです」


 レイヴンの返答を聞くとエクストはそれ以上二人の関係を聞く事はなかった。

 ヴェルフも聞く気はない。しかしモルスに関わる事で聞きたい事があった。


「もしかして俺とモルスが戦った時も似たような事が起きたのかい?」


 モルスが集中的に狙われた事が一度ある以上、もう一度起きても不思議でないと感じたヴェルフは二人に問いかける。


「いいえ、ヴェルフとモルスのコロシアムの試合はレイヴンと同じバトルロイヤルでしたが集中狙いされてませんでした」


「そうなのか」


 予想と違った事を言われたヴェルフ。そのまま違う結果をエクストが口にするがそれは想定していないものであった。


「貴方とモルスの戦いで起きた事は周囲を巻き添えにしたもの」


「周囲を巻き添え?」


 ヴェルフは言われたことを困惑を混ぜ込みながら返した。


「その試合ではヴェルフがモルスを強襲した事が始まりですよ」


「始まりか」


「仕留める事ができなかった貴方はそのまま戦い……」


 そこまで口にしたエクストだがヴェルフが途中で口を挟んだ。


「そのまま時間切れだろ? 大体の事は思い出したよ」


 初手に大鎌を持ったプレイヤーを狙ったが仕留められずに戦ったが決着がつかない。その様な結果で終わった試合をヴェルフは記憶の片隅から引き出す事を終えていた。


「思い出したんですね、ですけど周りで起きた事を知らなかったと」


 レイヴンが話した事は事実であるとヴェルフは思う――それには理由もあった。


「戦いは拮抗していたから――その時は大鎌使いとの戦い以外の結果は気に留めていなかった」


「モルスちゃんも手ごたえがある試合を何度かしていると言っていたんできっとその中に含まれていると思いますよ」


 相手側も似たような事を抱いている。それを知ったヴェルフだが同時にその試合の別視点に関しても気になった。


「俺とモルスの戦いの巻き添えだったか、どういう事だい?」


「言葉どうりですよ、戦いの余波が周りに影響を与えた」


「余波?」


 モルスとの戦いの事は思い出したヴェルフであったがエクストが話したそれは理解の外であり困惑する。

 そんな最中に困惑を加速される言葉が耳に届いた。


「貴方の攻撃はモルスに直撃したでしょうか?」


 意味が分からない――そう思ったヴェルフだが戦いの記憶の復元が終えていた為に即座に答える事を優先した。


「鎌で弾かれたり、避けられたりと一度も当たっていないね」


 放った攻撃は直撃していない。更に言えば自身も一度たりともモルスの攻撃に当たっていない。

 故に先に思い出した状態ながらもヴェルフははっきりと言えた。

 そして同時に――


「もしかして」


 ある可能性がヴェルフの脳裏を過ると口にする。


「弾かれたり、避けられた攻撃が他の人に直撃したのかい?」


 自身の武器である戦輪せんりんは投擲した先にいるものに対してダメージを与える。それは狙った相手以外も例外ではない。

 想定外の敵を倒した経験があった故にヴェルフはその可能性にたどり着いた。


「そのとうりですよ、モルスとの戦いは大きく移動しながら戦っていた」


「それも覚えているよ」


 近距離での戦いもこなせるヴェルフであったが大鎌の変幻自在の動きを見て分が悪いと感じていた。

 その為に距離をとりながら戦い。急接近されたら一目散に離れる動きを繰り返していた。


「他のプレイヤーが戦っている場所に乱入。そこで戦う事になった貴方の攻撃はそこにいたプレイヤー達を巻き添えにした。故にその後起きた事はあなた達以外の全滅」


 試合の流れを伝えられたヴェルフは「成程」と他人事の様な言葉と色合いで把握を終える。

 彼にとってコロシアムで他のプレイヤーを全滅させるのは眠って起きる。それと同じ程度の事柄である為だ。


「だけどそうなっているとは気づかなかったよ」


 過ぎた事であるがその様な試合であったとは考えていなかったヴェルフの声に反応する様にレイヴンが口を開いた。


「それはモルスちゃんがヴェルフさんを相手すると並行して他のプレイヤーも倒していたからだと思います」

 

「そんな事をしていたのかい?」


 モルスが自身以外の相手もしていると思っていなかったヴェルフは驚いた。


「モルスちゃんは普段は本当の本当にいい子ですけど戦いでは一切容赦ないですから……きっと周見しゅうみまなこで戦いを邪魔するかもしれない他のプレイヤーを虱潰しらみつぶしで探しながら戦っていたんだと思います」 


 妙に念入りな色合いでフレンドの性格を口にするレイヴン――その最中にスキルのが紛れ込んでいるが聞いていた二人は既に内容を知っている為に日常会話の中に含まれる単語の様なものであった故に一切触れない。


「どうやらフォスに近いようですね」


 横からぽつりとモルスの戦いに向ける気持ちが知り合いのプレイヤーと似ている事を口にするエクスト。それにヴェルフは心の中で同意した。

 そしてまだ雑談を続けて問題ない状態だが果てしなく話が続きそうと思い。総括を口にする。


「とにかくモルスとの戦いが俺に二つ名が付けられる理由の一つになった。そう考えられるんだね」


「間違いなく理由の一つになったでしょう。二つ名同士の戦いで起こる周囲の被害も発生しましたから」


「はい! モルスちゃんと対峙して生き残る事は名誉ですから」


「名誉?」


 かけ離れた事を口にしたと思ったヴェルフの反応にレイヴンはすぐに気づいた。


「わたしじゃなくて、二つ名を付けるサイトでそんなコメが書かれていたんですよ」


「成程。死神の大鎌から逃げ切れた。そんな感じかい?」


 少し格好つけた言い方をしたヴェルフにエクストは呆れる様にサングラスに触れる。

 それに一顧せずにレイヴンは喋り出した。


「モルスちゃんは今迄三人以外はコロシアムで対峙したプレイヤーを倒し尽くしたと言ってました」


「三人は君も含めた数かい?」


「そう言ってました。だからわたしとヴェルフさん以外にもあと一人いるみたいですね――きっと二つ名のプレイヤーですね」


 それを聞き終えたヴェルフは自身が二つ名に関して最後に聞きたい事を口にする。

 それは二つ名を知らないタイミングで勝手に付けられた立場の人間であれば至当な問いかけであった。


殲輪せんりんだっけ、この二つ名の由来はなんなんだい」

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