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第24話 銀髪弓使いの幕間 その9

私達わたしたち――エクストさん専属の傭兵のわたしですけどメガロスクエストは協力するつもりはないですよ」


 エクストに対して言い通す様な強気な声色を向けるレイヴン。

 知らなければ唐突な変容した様に見える姿であった。

 しかし彼女が傭兵――ミストフォロスに所属している事。そしてメガロスクエストの詳細を知っているヴェルフが聞けば納得するものであり、状況に対して疑問を感じていない。


「専属」


 それよりもヴェルフはレイヴンが専属と口にした事に意識を向けていた。

 突拍子もなく耳に入り込んだ為に何の事かと考えさせられたが――


 ――そうゆう関係か。

 刹那に自己解決する。それはミストフォロスを知っている彼にとって疑問として浮かんのが馬鹿らしい事であった。

 故に殊更も目の前の二人に明かす必要もなく心で反芻する必要性が皆無である。

 そんな事をヴェルフが考えている間。レイヴンに向けてエクストは喋り始める。


「無論貴女がメガロスクエストで上位の個人成績を狙っている事は知っていますよ」


「上位の成績」


 先までエクストと話していた内容の中に個人成績を重視している知り合いがいる事を思い出したヴェルフはその知り合いがレイヴンである事を察する。


「なら良かったです」


 自身の勘違いである事に気づいたレイヴンはすっかり毒気が抜かれている様子であった。


「いえ、こちらも誤解を招く言い方をしました」


 自身の言い回しが原因で怒らせた事をエクストは謝罪する。


「わたしが早とちりしただけなんで」


 レイヴンも謝罪を口にする。それから数秒後、エクストは改める口調で話し始めた。


「メガロスクエストと言えば出会っても互いの邪魔をしない約束でしたが」


 その切り口から出た内容が初耳であったエクストは何の事かと考えながら耳を傾ける。


「そうですね、()()の目標はエクストさんと異なりますから対決しても意味がないですから」


「目標が同じなら対決するやぶさかではない様だね」


 その会話を聞いたヴェルフは茶化す様に言うと即時に返答が来る。


「勿論そうですよ、戦えるなら戦いたいです!」


 同時にエクストも反応する。


「無論、そうなったら応じますよ」


 二人の反応を聞いたヴェルフは似た者同士と感じたその最中――エクストは言葉を上乗せする。

 しかしそれは想定外の内容あった。


「とは言え他のプレイヤーがいない場所が望ましいですが」


「どういう事だい? それは」


 話の繋がりが見えないヴェルフが問うとエクストが答える。


「名前付きのプレイヤー同士が全力で戦うと長期戦となる場合が多い。故に周りにいるモンスターやプレイヤーが巻き込まれる。そういう事です」


 エクストが話を終えると付け足す様にレイヴンが続ける。


「他のプレイヤーから見ると災害が衝突した。そう比喩される壮絶な光景ですね」


「災害が衝突――大袈裟だね」


 比喩表現が在りきであるとしても誇大こだいな言い方だと感じたヴェルフであったが――


「――貴方が言いたい事も分かりますが」


 エクストからは呆れた口調と冷たい視線で返された。


「――――」


 そしてレイヴンはどうしてなのか軽い溜息を口にする。

 双方の音域が両耳に届いたヴェルフは当惑するが、それが表面に発散される前にエクストが喋りだした。


「ヴェルフには後で説明しますが」


 何らかの理由があると話したエクストだがそれを終えるとレイヴンに先に話した事の続きを口にする。


「私以外にも戦わないでもらいたい参加者がいます」


「――ヴェルフさんですか」


 二人の会話の中に唐突に自身の名前が登場した事に驚いたヴェルフは「俺?」と反射的に声を出した。


「そうですよ、貴方とレイヴンが衝突したらとんでもない事になるのは目に見えてますから」


 まるでその光景を事前に見た様な言い草であったエクストはヴェルフを一瞥するとレイヴンとの会話を再開する。


「それとマノンとフォスもお願いします」


「あの二人?」


 知り合いの名前が聞こえたヴェルフは困惑するが――


「誰ですか?」


 知らないプレイヤーの名前を聞いた様な反応を見せるレイヴンもまた困惑していた。


「私とヴェルフのフレンドで後にギルドを組むこととなります――その内紹介しますよ」


「――分かりました」


 困惑こそ表に出すが一応の納得したのかレイヴンは了承の言を述べる。


「他の人はいいのかい?」


 自信とその二人以外にもエクストにはフレンドがいる事を知っていたヴェルフが問う。


「問題ないですよ、レイヴンにはレイヴンの目標があります、非攻撃対象を増やしすぎると貴方も戦いづらいでしょう?」


 と、言われたヴェルフは少し沈黙して少し状況を脳裏でシミュレーションする。


「確かに護衛対象が多いと戦いづらいな」


 フレンドリーファイアの事を考えて攻撃するのは難しいと思いエクストが言いたい事に納得したヴェルフにレイヴンが話しかける。


「あの……ヴェルフさん。メガロスクエストでは出会っても攻撃は絶対しないので貴方も攻撃しないでくださいね」


 控えめ口調でレイヴンは先にエクストが決めた事の確認を当の本人にする。


「――俺もメガロスクエストでは君を攻撃しないよ」


 自身がプレイヤー同士の戦いだけで全てを決められるイベントの参加者だったら全身全霊でレイヴンと戦う事を歓迎する。しかし残念ながら今回は既にエクストの方針に従う事を決めている為にそれは叶わない。

 故に互いに言質を取りあった。

 だがそれでも――圧倒的な実力の片鱗を見た事もあり、刃を交えられない事が残念でならないとヴェルフは思っている。


「君とは全力で戦いたかったけどな」


 それをヴェルフが表に出すと数秒後――レイヴンも言葉を返した。


「わたしも残念です――『殲輪せんりんのヴェルフ』と戦える機会を失ったんですから」


 それは底意から残念な声風で包まれた言の葉――されどもその旋律は彼に響かない。

 ヴェルフに届き――一驚させるのは言の葉で送られた意図不明な二文字であった。

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