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第21話 銀髪弓使いの幕間 その6

「傭兵」


 レイヴンが意気揚々として口調で言い切った単語をヴェルフは口にする。その色合いには多少の胡乱が含まれている。


「そんな要素……」


 故にヴェルフは疑問を表に表そうとするが……


「ミストフォロスの事ですよ」


 エクストが()()()()がある単語と共に口を挟んだ。


「毎回ミストフォロスと言うのが面倒なんで同じ意味である傭兵がプレイヤーの間での通称となったんですよ」


「あ……そうでした」


 そのやり取りを聞いたヴェルフは同時にミストフォロスがどの様なものなのか頭の中で巡らせるとエクストとレイヴンが何を言いたいのか理解できた。


「確かに傭兵と言った方が分かりやすいかもな、ならギルドに入れないか」


「ギルドとミストフォロスは両立不可能、故に当然でしょう」


「はい、そういう事です」


 三者三様でミストフォロスに関する事を口にする。全員、ミストフォロスがツインファンタジーワールドにてどの様な要素なのか知っていた為に詳細を説明する必要性もされる必要性も皆無であった。


 ミストフォロスに所属している事を知った事によってレイヴンが唐突に現れた心当たりがヴェルフの中に過る。


「ならレイヴンがここに来たのはエクストからの依頼関係かい?」


 何も知らない者が聞けば困惑されそうな事を口にしたヴェルフであったがレイヴンは明るい様子で答える。


「はい、エクストさんからの依頼を完了したのでその報告にここまで()()()()()()()


 自身が予想したとおりの事を口にしたレイヴン。しかしその中に予想外の言葉が含まれていた。

 それが何なのか考える最中にエクストが喋り始める。


「しかし直接来たのは何故? 依頼の完了ならメッセージで済むでしょう」


 それを聞いたヴェルフもミストフォロスに依頼をした経験があった故に「確かにな」と同意の言葉を向ける。


「実は気になった事があって」


 するとレイヴンは自身がこの場に現れた理由を語り始めた。


「キングオブ・ゴブリンの討伐を依頼をしたエクストさんが……」


 その言葉の中にはヴェルフが初めて聞く依頼の内容が含まれていた。しかしその内容はエクストが先まで口にしていた言葉を思い出せば想像できる内容である為に余計な思考も口も挟まずにレイヴンの言葉の続きを聞いた。


「どうしてなのかキングオブ・ゴブリンが出現した付近に留まっている事に気づいて、気になったので来ました」


「依頼遂行中のミストフォロスは依頼したプレイヤーの位置を把握できる。逆も可能ですが」


 レイヴンが自身の位置を特定できたからくりを口にするエクスト。


「後、飛行の練習も兼ねて」


 と、口にしたレイヴン。


「飛べるんだね」


 今迄飛行可能なプレイヤーを見た事が無かったヴェルフは驚きの声を上げる。


「黒い翼で空を飛べます」


 顔を黒い仮面で隠している為に表情こそ分からないがその声は喜びの色で満たされていた。


「だから黒い羽が舞っていたのか」


 姿を見せた時の光景が脳裏に過ぎたヴェルフ。その言葉を受けたレイヴンは喜びの色をそのまま喋り始める。


「はい! 戦いの最中に黒い羽が周囲を舞い――プレイヤーが黒い翼を身に纏う。だから黒翼こくよくの二つ名が付けられました」


 自身の異名の由来を明かしたレイヴン。


「シンプルで良かったですね」

 

 淡々としながらも寿ことほぐ声色のエクスト。


「だから黒翼こくよく


 同時にそれを聞いたヴェルフは納得すると同時にある事に気づいた。


「それにしても伝えたい漢字と文字が伝わる機能は便利なものだ」


 レイヴンが口にした黒翼こくよく。そのニュアンスをヴェルフは言葉が届くと同時に漢字と読みが伝わっていた。

 黒い翼と想像しやすい読み方でもあるがそれには明確な理由がある。


 ツインファンタジーワールドをプレイする時に使用している第二世代になるVR専用ゲームハードには相手に伝えたい文字と読みを同時に伝える機能が備わっている。

 その機能によってレイヴンは自身の二つ名の文字と読みを相手プレイヤーに伝えていた。

 そして初めて実感したヴェルフは感慨さが身体を通り過ぎる。


「はい、誤解されないのでこれから役に立ちそうです!」


「君のは分かりやすいから大丈夫だろうけど」


 自身の感覚を口にしたヴェルフはそのついでに出会った当初から気になっていた事を聞いた。 


「その服は何処で入手したんだい? 初めて見るデザインだけど」


 続くようにエクストは口を挟んだ。


「それは私も考えました、その服は今日初めて見ましたが」


 知り合いであるエクストも知らない事を口にする。


「実は新調した服なんです」


 するとレイヴンはエクストの疑問を肯定した。


「貰い物です」


「成程、黒翼こくよくの名に似合う服だったのはそういう事ですか」


「――――!」


 エクストの無色で飾られた言葉が途切れると同時にレイヴンの身体は硬直する。


「? どうしました?」


 それはすぐに気づけるものであり、エクストの口から疑問が現れる。

 するとレイヴンは迅速に反応すると口早に応じる。


「な――なんでもないですエクストさん」

 

「ならいいですが」


 ――服が似合っていると言われて喜んだ事に気づいていないのか。

 そんな二人の様子に見たヴェルフはエクストに対して呆れる。しかし自身がそれを指摘するのはお門違いだと心の中に留める事にした。

 変わりにレイヴンが口にしていた事の続きを訪ねる。


「貰い物だっけ、もしかして二つ名になった記念に貰ったのかい?」


 エクストが話したとおり、黒翼の異名に似合う服装だとヴェルフも感じていた。

 故に名をイメージした服装だと合点したが……


「違います」


 レイヴンは一瞬で否定した。


「違うのかい」


「はい、二つ名になる前に貰いました。差出人の名前は確か……」


 今迄そこまで気にしていないのかプレイヤー名を思い出そうとする仕草を見せるレイヴン。

 そんな彼女に向けて――


「もしかしてレオナでは?」


 唐突にエクストは助言を口にする。


「レオナ……はい! 確かそんなプレイヤー名だったような」


 迷いの霧が晴れた様子を見せるレイヴン。しかし同時にエクストに対する疑問が噴出していた。


「ですけどエクストさん……どうしてあなたも知っているんですか?」


「それは俺も疑問だね」


 双方の問いにエクストは即座に答えた。


「私も知っているからですよ、そのプレイヤーの事を」


「知っている……もしかしてエクストさんが着ている服装」


 レイヴンは自身と同じような経緯で服装を新調した。その考えが脳裏を通った様子であったが……


「それは違うぜ」


 ヴェルフが相異なると反応する。


「え」

 

 エクストに聞いた事がヴェルフから返されると想定しない反応を見せたレイヴンは驚いていた。


「いまエクストが着ている服は別のプレイヤーが作成した物だよ」


「そうだったんですか……どうりで見た事がない……」


 エクストを観察している様子であったレイヴンの視線が自身に届いた事にヴェルフが気づいた。


「もしかして……貴方の服もですか?」


「そうだね。俺もエクストと同じで他のプレイヤーが作成してくれたものだよ」


 その予想は当たっているとヴェルフが答えるとレイヴンはエクストに顔を向けると再び疑問の言葉をぶつける。


「ならどうしてレオナさんの事を?」


「私のフレンドにレイヴン、貴女と同じミストフォロスに所属しているプレイヤー。ベルセルがいるのですが、彼もレオナなるプレイヤーから衣装を送られているのですよ」


「そんな巡り合わせがあるんですね、ベルセルさんでしたか、その人もコロシアムで有名な……」


 自身と同様の経緯があると思ったのだろうか? レイヴンは面白そうに言葉を奔らせる。


「彼は強豪プレイヤーではありますがコロシアムに参加してませんよ」


 だがエクストはやんわりとレイヴンの想像が異なると話した。


「ではどうして?」


「それは私にも分かりませんよ」


 想定するには材料が足らないエクストは早々に断言する。それを横から聞いていたヴェルフは疑義を口にする。


「レオナってプレイヤーは何がしたいんだい?」


 そもそも服を渡す意図が理解の範疇外であった為の問いにレイヴンが応じる。


「多分ですけど――強いプレイヤーに自身が作成した服を着てほしいだと思います」


「そんなものなのかい?」


 その考えはどういう事なのかとヴェルフは指摘する。


「そんなものだと思います」


 レイヴンはヴェルフの言葉を強気な語調でそのまま返す。


「それ以上の言葉に意味はないでしょう」


 サングラスに触れながら淡々とした口調でエクストは二人の間に割って入る。


「レオナ本人がいない以上、何を言っても推測にしかなりません」


「そうだな」


 エクストの言い分に納得したヴェルフは頷いた。


「――そう……ですね」


 レイヴンも同様の反応を見せるが渋々な様子であった。


「レオナがどんな理由で渡しているか分かりませんが、渡せる以上、何も問題はないでしょう」


「どういう事だい?」


 その言い方はまるで渡せないパターンがある様に聞こえたヴェルフのエクストに向けての問いにレイヴンが答えた。


「オリジナルの衣服は作成した後に運営が確認するんですよ、ゲームの中の服として採用していいか」


 一切制約なくプレイヤー側が作成すれば何らかの問題が引き起こる。その想像は容易かったヴェルフは「そういう事か」と解する。


「実はわたしもオリジナルの衣服の作成にチャレンジした事があるんですよ、それで知ってました」


「だからか」


 自身が知らなくて、レイヴンが知っていた訳をヴェルフは了解する。


「後すっかり忘れてましたけど……」


 それを見たレイヴンは聞きたい事を思い出した為にその事を尋ねた。


「エクストさん達がここにいるのはどうしてですか?」


「その事ですか――貴女になら話していいでしょう」


 レイヴンの疑問を受け止めたエクストはこの場に暫し滞在する事になった理由を語り始めた

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