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第18話 銀髪弓使いの幕間 その3

「貴方が指摘したとおりです」


 戦いを観戦する為にツインファンタジーワールドを購入した者達が何かがきっかけとなって他のプレイヤーに二つ名を付けるようになった。

 そう考えたヴェルフの言葉をエクストは肯定した。


「事の発端は何なんだい? まあ特に意味もなく始まったと言われればそれまでだけど」


「発端なら実はあるんですよね」


「あるのかい?」


 明確な理由があるとは考えていなかったヴェルフは驚く最中にエクストは話を紡いだ。


「コロシアムが始まった当初から突出した動きを見せるプレイヤー。チーム戦で圧倒的な戦績を叩き出す等、目立つプレイヤーが現れた。その状況を知った誰かが二つ名を付けるサイトを作成。それが発端」


「物好きな人もいるものだね」


「そうですね、そのサイトで知り合った者達が観戦用のツインファンタジーワールドを購入、同じ部屋で試合を見ながら討論を重ねる。それを繰り返しているそうです」


「同じ部屋で試合を見る?」


 知らない要素が現れた為にヴェルフの疑問を口に出る。


「フレンド同士だけで観戦可能な部屋があるんです……私達の場合は制限なく使えますが仕様が違うツインファンタジーワールドは課金しなければ使用する事ができません」


「課金してまでする事なのか?」


「わたしも聞いた当初はそこまでするのかと思いましたが……試しに観戦エリアに足を運んだところ、理解できましたよ、あの場は賑やかで話し合いをするには不向き」


「……そうだろうね」


 コンサート会場やスポーツで回りが盛り上がっている中、話し合いが出来るかと言われたら、無理だとしか言えないだろうと思ったヴェルフはエクトスの言い分に納得した。

 しかし疑問はある為にその事を聞いた。


「だけど特定のプレイヤーを探して試合を見る事は可能なのかい? それとも目に付いたプレイヤーに二つ名を?」


 自身がコロシアムで対人戦をするタイミングは気まぐれであった。故にヴェルフは同じプレイヤーの試合を何度も見れるとは到底思えなかった。


「観戦エリアで見れる試合の種類は二種類あります、一つは現在進行で行われる試合、そしてもう一つは過去の試合」


「過去の試合も見れるとは……」


 そこまで知らなかったヴェルフにエクトスは説明を開始した。


「とはいえ、一対一の個人戦、チーム戦等、試合方式は複数あり、コロシアムは盛況で大量の試合があります、故に全試合を見れるわけではありません」


「基準でもあるのかい?」


「人気がある試合をあの()()()()()()が選出している……そんな設定ですよ」


 硬い口調に似つかわしくない単語がエクストの口から現れるが――


「あの子達が」


 少ない情報であったが互いに知っている存在であった為にヴェルフの追及はなく、話はそのまま進んだ。


「人気が高い……故に実力が高いプレイヤーの試合は選出されてます」


「そういう事」


 見応えがある動画が流れていたら、それに多くの人が食いつくのは必定であり、エクストの言い分にヴェルフは頷いた。


「因みに私と貴方……後マノンとフェスの試合も見る事ができますね」


「あの子達も」


 唐突に現れた名であるが彼女達の実力の知っているヴェルフはその話を聞いて納得した。

 それと同時に先から話している集団にとって、実力が高いプレイヤーの試合を比較的に簡単に見れる事を意味している。


「しかしそれは二つ名を付ける人達にとって……」


「ええ、全ての試合を片っ端から見る必要がなくなり、必要な試合だけを見る事が可能になった。しかし引っきり無しに二つ名を付けたところで周囲から認識されない」


「ならどうしたんだい?」


「聞いた誰もが納得する強者を複数選定、それを大々的に発表。そんな事をした」


「――好き勝手するものだね」


 率直な感想を出したヴェルフに「勝手な者達です」とエクトスは少し憤慨した色の声で同調する。


「しかし最初に二つ名を付けれたプレイヤー達の実力は本物で、今もコロシアムのランクの最上位の位置にいます」


「最上位……」


 それを聞いたヴェルフはある可能性に気づいたが口に出すのは止めることにした。


「故に今では他プレイヤーを圧倒する実力さえあればコロシアムのランクに関わらずに、付けられる様になった。今の状況はそんなところ」


「成程ね」


 事の発端を聞き終えたヴェルフは知らない所でそんな事が起きていたのかと理解する。

 

「ところで気になった事があるんだけど、最初に二つ名を付けられたプレイヤーの人数は何人いるんだい?」


「七人です」


「意外と少ない」


 エクストの話から二桁はいるかと思っていたヴェルフはそんな反応を見せる。


「選ばれる基準でもあるのでしょう。話し合いはインターネット上ではなく、ツインファンタジーワールドの中でしているので内容も外部の人間には明かされていません――運営からは筒抜けでしょうけど、放置されてるあたり問題としていないのでしょう」

 

 淡々とその様に断言されてしまったヴェルフは「そうなんだね」と言葉を返すとそのまま喋り続けた。


「もう一つ気になる事があるんだけど……どんな二つ名があるんだい?」


 訊ねたそれはヴェルフが興味を感じていたものであった。


「今も増えている可能性があるので全てを教える事は不可能、故に始まりの7人……そしてある一人は教えられます」


 そう言いながらエクストはヴェルフに視線を向ける。


「始まりの七人……」


 妙な事を口にしたと思ったヴェルフだが七人。その部分に覚えがあり、少々考えると何を話したのか把握できた。


「最初に二つ名が付けられた、七人の事かい?」


「そうですよ、最初に口にしたのは誰だか分かりませんが……もう一つの候補として七人だから大罪にしようとする声もあったそうですが……こちらに罪があるわけがないとして不採用になりました」


 サングラスに触れながらぶっきらぼうに語ったエクストはそのままヴェルフが要望した事を喋った。


「始まりの七人は『弓聖きょうせい』『死神しにがみ』『雷刃らいじん』『魔王まおう』『烈槍れっそう』『焼尽しょうじん』」


 六つの二つ名を口にしたエクストは一度言葉を止める。

 それを見たヴェルフは――


「全員、二文字なんだね」


 即時に察した二つ名の共通点を口にする。


「二文字にする。決まりの一つらしいですよ」


「決まり?」


「ええ、決まりです、制限しなければどれだけ長くても問題ない事になるからでは」


 共通点に関して答えたエクトスはそこまで興味ないのかそこで話を打ち止めにすると始まりの七人の最後の一人の名を口にする。


「そして『智将ちしょう』……智将のエクトス。私の事ですよ」


 そして当然の如く自身が二つ名を持つ事を明かしたエクスト。


「やっぱりか」


 智将の名も――エクストが二つ名を与えられたプレイヤーである事を正真正銘初めて知ったヴェルフであったが納得した様に頷いた。


「驚かないのですか」


 その様子を見たエクトスは淡々とした口調で訊ねた。


「エクトスなら当然だろう?」


 策略が得意な雰囲気で後方支援が主な戦い方に見えるエクトスだがその戦いは真逆なバリバリの前衛型である。

 そしてその実力は今の自身より上であるとヴェルフは思っている――故に二つ名があると聞いた時点から予想していた。


「それにコロシアムで最上位のランクにいる事を自分で明かしていたからさ」


 追加で驚かなかった理由を説明したヴェルフ。対してエクトスは「成程」と言いながらサングラスに触れる。


「にしても二つ名関連に妙に詳しかったのは……勝手に異名を付けられたからかい?」


 性格から推測したヴェルフの言葉にエクトスは応じる。


「そうですね、コロシアムの中で聞こえた時は流石に驚きました。最初は個人で勝手に……かと思いましたが集団で私の事をそう呼んでる。故に少し検索した結果、辿り着きました」


 経緯を知ったヴェルフは知らない間に付けられた異名に対する感情を聞いた。 


「けど自身で二つ名を名乗ったって事は気に入っているのかい?」


「適当に付けた二つ名なら、色々と手を打っていましたが、しっかりとした話し合いの末に決められたものなら許容範囲の内です。それなりには気に入ってます」


 そのエクトスの返答が意外なものであったと感じる。だが同時にその声に不本意な色合いが含まれているとヴェルフは感じ取った。

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