第四部 こどもの日パーティー
「やっぱしよ?ソウマさんの分も楽しむから!」
そう言ったのはツーハだった。ずっと楽しみにしてたから中止は嫌だってだけなんだろうけど、その言葉で少し沈んだ雰囲気が良くなった気がした。そうして、こどもの日パーティーは決行された。
翌日。とにかく知り合いが来た。セレンちゃん、テルルちゃん、フェル君、ケトクちゃん、ウンモちゃん、ウーベイ君、カリちゃん、ハス君。来れなかった人もいるけれど、パーティーをするには十分な人数だと思う。ウーベイ君、まだ子供なんやな。アインもそうか。ツーハちゃんが奥から大量の柏餅とちまきを出して来たのをきっかけに、パーティーは始められた。私はその様子を柏餅を一つ取って見ていた。ウーベイ君がご機嫌そうにスマホを取り出すと、それを見たテルルちゃんがスマホに入り、ウーベイ君は驚いていた。でも、そのあとウーベイ君が色々と情報を打ち込んだおかげでテルルちゃんが混乱し、目を回して出てきた。それを見たセレンちゃんはウーベイ君がテルルちゃんを攻撃したのかと勘違いし、ウーベイ君をボコボコにしようと意気込んでいたので、さすがに止めようと間に入った。
「セレンちゃん、それはやりすぎや。それに、先にテルルちゃんがウーベイ君のスマホに入ったんやし」
テルルちゃんはバツが悪そうに縮こまった。正直でよろしい。ほっとしていると、今度は何かが割れた音がした。驚いて振り返ると、フェル君とコウ君が揉めてとうとう喧嘩になってしまい、その拍子に皿を一枚割ってしまったようだ。でも、フェル君に非があったようで、ヤバいヤバいと慌てていた。そんな兄を、ケトクちゃんは冷静な視線で見ていた。フェル君は柏餅が一個減るという罰を受けて不服そうにしていた。その時、セレンちゃん、カリちゃん、フウちゃん、アインにイネイちゃんがやって来た。
「どうしたん?」
「せっかく集まったんだからさ、やろうよ!女子会!」
そして、半ば強制的に別の部屋に連れ込まれ、しっかり鍵をかけていた。セレンちゃんはニヤリと笑ってイネイちゃんを見ていた。
「ねえ。私、知ってるよ。なんで、ライトさんが好きになったの?」
なるほど。こういうパターンか。じゃあ、とことん付き合ってあげた方が良さそうだ。
「え、ええと、初めて会った時もかっこいいなと思ったんですけど、何度も会っていくうちになんだかライトさんに話しかけられると緊張するようになって…。で、告白は勢いでしてしまいました。ああ、勢い任せになってしまうこの癖、治したいんですけどね」
イネイちゃんは早口でそう喋った。なんでそんなことを知っているのだろうと思ったら、セレンちゃんはそっとノートを出した。その表紙には、『ツーハのフォニックスけんきゅう②』と書いてあった。どういうことだろうとページをめくっているセレンちゃんを見ていると、あるページを見せてきた。『今日はイネイさんがライ兄にこくはくして、ラブラブになった』と書いてあった。
「ツーハさん!?」
「ツーハちゃんにもらったら、こんなに面白いことが書いてあったんだから!キスした?手を繋いだ?」
…セレンちゃん、恋愛漫画に感化されすぎや。イネイちゃんは真っ赤になって立ち上がった。
「ライトさんとキスなんてしてません!…手は、繋ぎましたけど」
カリちゃんも終始面白そうに見ていた。
「あと、①の方にはこんな面白いことも…」
バッと広げたページには『フウワさん、ソウマさんのことすきっぽい。ずっと見てる』と書いてあり、フウちゃんがフリーズした。アインは立ち上がり、鍵を開けてどこかにいった。一方、ようやく動き出したフウちゃんが立ち上がった。
「やめろ!プライバシーの侵害だ!」
と言ってあたふたしていた。すると、どこからか声が聞こえてきた。その声が近づいたかと思うと、アインが悪い顔をしてこちらを覗いた。すると、この部屋にライト君が入ってきた。全員の視線がイネイちゃんに集まると、フウちゃんは
「わ、私、ソウマの見舞いに行ってくる」
と言って部屋を出ていってしまった。
「ラ、ライトさん」
「ん?どうしたんだ?」
「い、いえ、今日はいい天気ですね」
「雨でございます」
イネイちゃんのおかしな会話を、やって来たウーベイ君が指摘していた。
「ライトさん、責任を持ってくださいよ。それじゃあ、僕はこれで」
それに乗じて、みんなもその部屋を去り始めたので、私も行くことにした。でも、最後にセレンちゃんが言った
「ファイト。頑張ってね!」
は余計だったと思う。私もソウマ君のお見舞いに行こうとしたら、セレンちゃんに止められた。私は内心呆れながらも、やめておくことにした。食卓では、ツーハちゃんとフェル君が大食い対決みたいに柏餅を食べていた。でも、コウ君は文句も言わずにただレシピ本を見ていた。手作りやったんか。1番エント君がつまらなさそうにしていて、ちまきの葉っぱで船を作っていた。こんな日も、悪くないのかもしれない。