第四部 忠誠心も絆の一つ
非常にも、日は落ちて行ってしまう。だんだん暗くなって来た。視界が悪い上に、レクフォンの技の威力は上がって来てしまう。少し焦っていると、奇跡的に今日は雲一つ無い満月で、かろうじて戦う事が出来た。これで闇夜だったら終わりだったが、運も実力のうちと思っておこう。満月といえばセレンちゃんだなと思っていると、やっぱり巫女服姿で彼女はやって来た。セレンちゃんも浮いているので、ツーハちゃんと見分けが付かなくなりそうだ。本人には絶対言えない事だけれど、結構飛べる人がいる中で、ツーハちゃんの特殊能力は良いものなのだろうかと思ってしまう。セレンちゃんは体があるけれどレクフォンに攻撃していた。今、レクフォンは悲しい思い出で苦しんでいるのだろう。そう思うと、複雑な気持ちになった。でも、セレンちゃんにやめてと言うのも変な気がして、何も言えなかった。もし、自分が操られて、無理矢理自分の大切な人まで傷つけさせられたとしたら、きっと地獄だろう。消えてしまいたいと思うだろう。時の館の主人に苛立ちを覚えた。何か出来る訳でも無いのに。レクフォンは苦しみによってより暴走し始めたような気がする。しかも、攻撃のほとんどはセレンちゃんに向けられていた。セレンちゃんは避けようとしたが、対応し切れそうに無かった。ツーハちゃんも大慌てで向かっているが遠すぎる。私の氷の壁は位置が高すぎて届かない。みんなが必死に努力しているが、セレンちゃんが避けられる方法は見つかっていなかった。セレンちゃん自身が諦めかけたその時、見覚えのあるメイドさん、キリーさんがどういう訳かセレンの所まで来ていて、セレンちゃんを思い切り下に叩き落とした。ライトさんがセレンを受け止めた。しかし、キリーさんは技を受けてしまった。セレンちゃんは巫女服姿でも慌てた様子を見せ、キリーさんの様子を見に行った。キリーさんのメイド服の裾やフリルは結構ボロボロになっていた上に、怪我もしていた。セレンちゃんは心底心配そうにしていたけれど、キリーさんは立ち上がった。今気づいた。キリーさんって、王族なんだ!なんで王族じゃないセレンちゃん達のメイドをしているのか疑問に思ったけれど、今はそれを聞くような状況ではない。なんだか、ロッセオにそっくりだなと思っていると、こちらも来た。レナと一緒に。怪我は大丈夫だったのだろうか?まあ、病院にいたから医師の許可ありきで来ている…筈だ。ロッセオはやっぱり私の身代わりになってくれていた。私には分からない感覚だけれど、守りたい人がいたら命だってかけられるっていつかソウマさんが言っている気がするからそういう事なのかな?あの人、無茶の代名詞みたいな人だし。ロッセオはまだいい。私が後ろにいない時はちゃんと避けるし、ガードもきっちり使うから。ロッセオは私を守る事に気を取られすぎて攻撃出来ていない様な気がする。私はこれは良くないと思って話しかけた。
「ロッセオ、私は大丈夫だから、レクフォンを攻撃して。絶対にね」
反論できないようにと念を押して言ったからか、ロッセオは何も言わずに突っ込んで行った。結局これも無茶な気がする。セレンちゃんも同じような事を言ったのだろうか、キリーさんも同じような動きをしている。セレンちゃんは困り顔でこちらにやって来た。まあ、気持ちは分かる。私はセレンちゃんの肩に手を置いた。セレンちゃんは私が自分の気持ちを理解してくれたと思ったのかホッとしていた。人って仲間を見つけないと落ち着かない生き物なのかもしれない。セレンは再び空へと飛んで行った。私はそれを見送る事しか出来ない。私は私に出来る事をやるしか無いのだ。キリーさんがあそこまで跳べた謎は後ろを振り向いた時に判明した。そこにはすごく既視感のあるロボットがあった。そして、その肩にはやはり、あのエンジニアがいた。多分だけれどロボットは手を地面に付けてキリーさんを乗せ、それからセレンちゃんのいた位置より少し高い所まで手を上げたんだと思う。だったらキリーさんがあそこまで跳べていてもおかしくない。私が1人で勝手に納得していると、すごい爆発音が辺りに響き、驚いて音のした方を見ると、ロッセオとキリーさんが見事な連携プレーでレクフォン相手に結構戦えていた。でも、レクフォンの妖力と2人の妖力の残量を妖気で確かめてみると、なんとレクフォンの方が多かった。その時、シャイニング・バーストイーグルみたいな鷲が飛んで行った。シン君が出したものの様だが。
「ようやく飛んでくれたぜ。体が重かったのか?」
シン君がやれやれという様子だった。その鷲は空にいる2人を援護し始めた。私はちょっと安心して地上に集中する事にした。丁度その時ロッセオがダメージを受けそうだったので援護したら、ロッセオは驚いた顔をした。シン君は私より前に出た。邪魔だったんだろうか?シン君は後ろをチラチラ見ていた。きっと後ろにケイルがいるんだろう。




