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フォニックス 光と闇  作者: ことこん
第十三章 ヒスラとレクフォン
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第四部 消えた忍者

 悔しすぎる。俺は姉を止める所か、ロクに戦うことも出来ないのか。ずっと、思ってたさ。有能な姉と違って、俺はただの出来損ないなんだなって。何をしても中途半端で、姉のコネでブラックスに入ることしか道が無かったのだ。本当は姉を止めたかった。でも、無理だと諦めて協力する立場についてしまった。俺は逃げた。でも、フォニックス達はどうだ?あいつらが逃げた事はトルキとあの女の時だけだ。さらに、その2人も再挑戦してちゃんと勝っている。くそっ。考えらば考える程自己嫌悪に陥りそうだ。その時、なんだか嫌な気配を感じた。もう二度と聞きたく無いと思っていた、ねっとりとしてやけに恐怖を煽る声。

『ヒスラ君、ボクは君の能力をもっと有効に使いたいと思っているんだ。今逃げたいと思ったでしょ。いい加減諦めて、大人しくその力を使えば良いのに。そうすれば、お姉さんなんかよりずーっと強くなれるよ?それに、フォニックスが正義とは限らないじゃん?彼らもまた、人殺しだ。正義を名乗ってるだけでそれが許されるなんて変な話だと思わない?ボクはね、みんなが幸せになれる可能性を探しているんだ。今の世の中の裏には苦しんでいる人がいる。物理的にも、精神的にもね。ボクはそれが当たり前だと思われている事こそがおかしな事だと思うんだ。確かに多少の犠牲は伴ってしまう。何かを変えようと思ったら、何かは消えて行ってしまうのは今は仕方のない事。だけど、もしボクの理想が実現したら、世の中はもっと輝き出す筈だ。ヒスラ君はどっちがいい?君はその気になればボクとだって戦えるんでしょ?強要するつもりは無いよ。じゃないと、後が怖いからね』

俺は少し考えた。俺はこの体を借りて生きている。確か2つに分かれた筈だが、もう一方がどこに行ったのかは覚えていない。時の館の主人の理想は有り得ない様で緻密に計算されている。一方、創造神は保守的だ。俺の判断基準はただ一つ。”どちらについた方が面白いか“だ。そんな答えはとっくに出た。この体は悲しむだろうが、生憎今主導権を握っているのは俺だ。

―良いだろう。お前に付いて行ってみてやろう。その代わり、少しでもつまらんと思った時は即座に抜けるからな?

『ははっ、君は本当に面白い子だ。流石、あの乱戦を勝ち抜いた戦士なだけあるよ。体を失ってもなお生き続ける根性は大したものだよ。とりあえずこっちに来てくれる?色々と話したいことがあるからさ』

そして、景色は一瞬にして変わった。


 師匠達が来てくれて、ホッとしたのも束の間、ヒスラが突然消えた。一体何が起こったというのか。レクフォンは弟がいなくなると容赦する理由が無くなったのか遂に真の本気になった。私達は最初の一撃でもろとも吹き飛ばされてしまった。ここが何処か、見当も付かない。とりあえず、飛ばされて来た跡を辿ってあそこに戻れるか試してみた。しかし、どれだけの距離を飛ばされて来たのだろうか、全く見たことのある地形が見えて来なかった。私は少し焦ってしまった。こんな時は冷静に対処すべきだろうに。未熟な自分自身に悪態を吐きながらも、私は歩き続けた。その時、ふわっと風が舞い上がりやって来たのは…シン君だった。私はその姿を見て安堵し涙を流して抱きついてしまった。シン君が迷惑そうにもがくと私は一気に冷静になり、シン君から即座に離れた。シン君はやっぱり怒り顔で私を睨んでいた。

「早く行くぞ。全く、姉妹ってこんなに似るものなのか?」

シン君の言葉から、姉さんは既に戻っており、さっきの私みたいにシン君に抱きついた事が想像出来た。

「他のみんなは?」

「既に着いて戦ってる。全く、こういう時は下手に動くな。瞬間移動で迎えに行き辛くなるだろ」

言葉に棘があっても、心配してくれている事はなんとなく分かった。戻ると、レクフォンはシン君のように狐を影から大量に出してみんなを襲わせていた。シン君も負けじと狐を呼び出している。数では負けていないが、どうしても質が落ちていて、当たり負けしてすぐに影に戻ってしまっている。シン君は忌々しそうに舌打ちした。でも、戦っているのはシン君だけでは無い。私達は向かって来る狐達を倒して行く事から始めた。想像以上に狐が強かったものの、やっぱり技の一部。攻撃が単純で読みやすい上に、3回ほど技を使うと疲れてしまうのか影に戻っていた。私は薙刀で狐を斬り続けていたが、やがてそれすらもまどろっこしくなって来て武器を放り投げて手に冷気を纏わせて攻撃し始めると、師匠が悲しそうにしていた。今はそんな事を気にしている場合ではないので、このまま行くが。なんだかこっちはこっちで良いかもしれない。威力が低いけれど後隙が少ない。一方師匠はたくさんの武器を巧みに使いこなして戦っていた。セムロさんは妖獣達と協力、セグリアさんは完璧に次の攻撃を予測してノーダメージで狐を倒しまくっていた。頼もしい限りだ。

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