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フォニックス 光と闇  作者: ことこん
第二章 速さと遅さ
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プロローグ 急なピンチ

 五月。ツーハちゃんがやけにウキウキしていた。ウンモちゃんはツーハちゃんのおばさん、ミトさんに預かってもらった。ツーハちゃんは最近会話が少ししっかりした。

「わたし、明日が楽しみ!だって、こどもの日があるんだもん!」

一方、まだ子供と言っていい年齢のシン君はさして興味がないというように飾られていた兜や鯉のぼりを気にも止めていなかった。しかし、目が輝いているのがバレバレだ。照れているだけだろう。そこで、明日は未成年の知り合いを呼んでこどもの日パーティーをしようという話になっていた。だが、そんな楽しげなムードを壊すかのように、新たな依頼が来た。副業のおかげで生活費に困ることはなくなったが体力の消耗が著しくぐったりしている日もあった。幸い、今日はマシな日だったので、全員で行くことにした。どうやら、場所は以前テルルと出会った所辺りらしい。シン君は遠くに見える闇屋敷を見て眉をひそめていたけれど、相手はすぐに見つかった。2人組で、私たちを見るなり何も言わずに攻撃してきた。さすがによけると、2人はこちらにやってきた。私たちは攻撃をしたが、1人には俊敏な動きでかわされ、もう1人には技を謎の力でのんびりにさせられ最も簡単にかき消された。なんだか、対照的な2人だ。2人はほぼ同時にこちらを向くと、私たちに向かって一礼した。

「初めまして。闇狐のセリカだよ。どんな攻撃をしても、私はかわしてみせるから」

「光狐のスレクだ。この能力を破れる者はそうそういないぞ」

2人はやけに自信があったが、ハッタリではないらしい。ライトさんがスレクを攻撃しようと走り出したが、なぜかとてもゆっくりになり、スレクはライトさんを攻撃して吹き飛ばした。姉さんはセリカを狙っていたけれど、全てかわされてしまう。もちろん、私たちもなんとかしようとしたけれど、結果は2人よりもひどいものとなった。セリカは挑発的な笑みを浮かべており、余計にみんなを苛立たせていた。技が一向に当たらないならば、一方的に攻撃させて負けてしまう。早いうちに解決策を見つけなきゃ…。そう思ってじっと見ていると、セリカが突然瞬間移動で目の前に来た。私は反応しきれず、セリカの攻撃をくらってしまうのかと思って覚悟を決めたのに、セリカは横から来た誰かに頭突きされ一瞬よろけた。驚いて見ると、それはソウマさんだった。しかし、すでにかすり傷がある。セリカは明らかに不満そうな顔をしてソウマさんを見ていた。

「全く、女の子に頭突きするなんて、紳士じゃないわね。おチビ君、こんなことをしておいて、タダで済まされると思っているのかしら?」

セリカは怒っているようだった。ソウマさんは返事もせず、ただセリカを見ていた。私はとにかく距離を置いた。ソウマさんはセリカが攻撃して来ても動こうとせず、ただ攻撃を受けているだけだった。私はスレクの方も見たけれど、5人がかりでも全くダメだった。私はスレクの目の前に氷の壁を作ろうとしたが、それすらもゆっくりになった。スレクは不意にフラッシュをして来て、私は完全に動けなくなった。しかし、誰かが私の手を引いている感覚があった。姉さんではない。男の人の手って感じだ。私は目が見えないままどこかに引きずられ、そっと木の幹のような感じの所に寄りかからされた。音が響く。私は閉じた目を開けようとずっと四苦八苦していると、視界がやがて開き、最初に見たのはシン君の不機嫌そうな顔だった。私は驚いて後退りしようとしたものの、やっぱり木の幹があった。

「お前ら、同じ技に2度もかかってどうする。あの馬鹿嬢も使える程度の技だぞ。おかげで、俺はここに全員運んでずっと見ているしかなかったじゃないか。早く戻るぞ。ソウマがどうなっているかわからんからな」

みんなもすぐに動き出し、戻った私たちが見たのは、ソウマさんがセリカに胸ぐらを掴まれており、スレクがひたすらソウマさんを攻撃していた。ソウマさんは全く音を上げていなかったけれど、そろそろまずい。しかし、焦るとさらに攻撃が当たらず、私たちは何もできなかった。ソウマさんはセリカをまだ見ていた。シン君は瞬間移動するとなるべくセリカの近くに行き、ソウマさんの足を掴んで引っ張った。すると、それに反応するかのようにソウマさんはセリカの手を掴み、手だけを軽く自爆させた。そのはずみでセリカはソウマさんを離した。しかし、スレクが背後にいて、2人は逃げることが出来なさそうだった。シン君の瞬間移動も遅すぎて間に合わない。私はどうしようと慌てていたけれど、姉さんは思いっきりセリカとスレクに向かって技を放った。セリカには命中した。しかし、スレクが遅くなった技に気付き、消してしまった。2人が心配でもう一度そちらを見ると、もうそこにはいなかった。

「この一瞬が欲しかった。感謝する、水狐」

姉さんは名前を覚えられていないのを気にも留めず、ただ少し微笑んだ。

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