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フォニックス 光と闇  作者: ことこん
第十二章 「これで終わりなの?」
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第三部 無茶はしないように

 ううっ。絶対師匠に怒られる。いくら眺めてみても、目の前の薙刀が直る訳では無いのは分かっているが。すると、誰かが歩み寄って来た。顔を上げると、そこにはロッセオがいた。そして、その手には薙刀が握られていた。

「ロッセオ、2人は大丈夫なの?」

ロッセオは微苦笑した。

「起きて戦いに行ってしまいました。これ、屋敷の中から探し出して来ました。新品がどうかは、分かりませんが」

「あり、がとう…。もう一回聞くけど、ロッセオはなんでいきなり態度を変えたの?」

ロッセオは私の隣に腰掛けて、空を見上げた。

「かつての主、ベルナラ様に、そっくりだと思いました。しかし、アイン様は知っているかもしれませんが、ベルナラ様は忽然と姿を消しました。それから、主を失った私は様々な場所を転々としましたが、なんだか落ち着かなくて。どの主も結局一年を越えて仕えること人ありませんでした。特殊能力の縛りがあるので、誰にも仕えないという選択肢も無く。杜撰な扱いを受けていたことも、抜け出してしまった一因なのかもしれませんが」

私が複雑な気持ちになっていると、ロッセオは立ち上がり、私に向かって手を伸ばした。

「過去のことよりも、大事なのは今です。戦いましょう。1人の、戦士として」

しかし、ロッセオはふらついて倒れてしまった。確かに、かなりのダメージを受けていた筈だ。私は無理矢理立ちあがろうとしているロッセオを気絶させ、安全な所に寝かせておいた。私は薙刀を持ってレナの所へ向かった。レナは攻撃を瞬間移動で避け続けていた。そこで、私はレナが消えて再び現れた瞬間を狙って攻撃した。薙刀は紫の弧を描いてレナを斬り付けた。不思議に思っていると、レナの動きが急に鈍くなった。おかげで攻撃が当たる様になった。それでも、レナは止まらなかった。大きく跳び上がってシン君と姉さんが合体した人の目の前に出、攻撃しようとした…が、寸前で止まり、レナは静かに落ちて行った。私たちは慌てて落下点に行こうとしたが、シン君が姉さんから離れてキャッチした。…ん?待てよ?今度は姉さんが落ちている。すっかり元の姿に戻ったツーハちゃんが助けてくれたが。シン君、何してんの。私たちは、とりあえず帰って行った。


 ぼんやりと目を覚ますと、見慣れない部屋にいた。徐々に実感し始める。私は、フォニックスに負けた。その事実は私の心に重くのし掛かった。

「これで終わりなの?」

誰もいない部屋でそう小さく呟くと、より現実味を帯びて来て、言ったことを後悔し始めていた。私はのっそりと起き上がった。若干体に痛みが走ったが、この程度なら動けなくはな…

「意地張ってないで大人しく寝てろ。とっとと治って貰わないと面倒なんだよ」

少々棘のある言葉の主は、紫目の闇狐。湯気の出ている何かを持っていた。

(かゆ)だ」

何故、敵に塩を送るような真似をする。手をつけようとしない私に、そいつは告げた。

「あいつらは馬鹿だから、相手を毒殺しようなんて思いつきもしねえよ。単純に、困った奴は放って置けない。それだけだ。俺も忙しいんだ。早く食え」

確かに空腹ではあったので、私は粥を食べた。想像していたよりも美味しく、あっという間に食べ終えてしまった。彼はそれを見届けると、皿とスプーンを持って出て行ってしまった。耳障りな足音が聞こえる。そして、再び眠ろうとしていたのだが、また誰かが来た。眠気に襲われていた私は、早く寝たいと思っていたが、布団の上に毛布を被せられ、誰がこんなことをと思って体を起こしてしまった。

「寝とった方がええと思うで。寒いんやったら、湯たんぽ持って来るし」

この人誰だろう。しかし、頭を撫でられた瞬間再び眠気がやって来てそんなこともどうでも良くなってしまった。そこからの記憶は無い。


 「お前、休んだ方がいいと思うぞ」

一方、今山でも休むことを推奨された人物がいた。言わずもがな、ソウマである。

「大丈夫。これまでどんな怪我でも大丈夫だったんだし」

私は大きなため息を付いた。普段の物腰はあんなに柔らかいというのに、なぜ怪我のこととなるとこんなにも頑固になるというのだ。

「で、今日は何の用だ?」

「実はね、探して欲しい人がいるんだ。ブラックスの時本拠地を見つけたみたいに。…出来そう?」

本当に良いように使われている気しかしないが、ここで断る理由もない。…それに、戦争はもうごめんだ。

「やってみてやってもいいだろう。出来なくても怒るなよ?」

「そんなことする訳ないじゃないか」

ソウマは微笑みながら言ってみせる。仕方ない。今回も、協力するとしよう。ギューがソウマに抱き付いた。すると、ソウマは本気で痛そうにしていた。…やっぱり、無理矢理来たようだ。

「…ギュー、やめてやれ」

ギューは不満そうにしながらも離れて行った。しかし、ロルが歩み寄った。私は注意しようとしたが、美しい遠吠えをし始め、思わず聞き入ってしまった。ロルも、中々粋な計らいをするようだ。


 

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