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フォニックス 光と闇  作者: ことこん
第十二章 「これで終わりなの?」
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プロローグ 忘れられない忠誠心

 急に凶暴になったレナは、次々と百鬼夜行を繰り出した。キリュウと比べてしまうと若干見劣りするが、私たちを倒すのには十分すぎる数だった。こうしてみると不安になってしまう。キリュウは今後も私の前に現れるだろう。その時、本当に大丈夫なのだろうかと。私は百鬼夜行を斬りながらレナに近づいた。しかし、攻撃する前に百鬼夜行が繰り出されレナへの道筋を阻まれてしまった。その時、私の手に冷たいものがかかった。技ではないようだ。私はレナを見てみた。すると、ボロボロと大粒の涙を流していたのだった。つまり、これは涙だったということだ。目の前の少女は、今何を考えているのだろう。

「レク…フォ…さ……ま」

その言葉を最後に、レナの目から涙が消え失せた。そこにいたのは最早先程までのレナではなかった。おそらくレナはこれはエントから聞いた話だが蛇の科学者のようにレクフォンを慕っていたのだろう。様付けだったということは部下という立場だったのかもしれない。だが、それは全て過去の話。私は全て知ってしまっていた。こうなった人は、もう組織に帰ることはできない。極限まで力を高められた状態で戦わされ、負けても勝っても力尽きてしまう。そして、回収されることはない。レナ自身もそれを悟っていたのかもしれない。レナの繰り出す百鬼夜行は質より量と言った感じだった。そして、切った感触が驚くほど軽かった。思いのこもっていない、空っぽの技だ。レナの妖気がだんだんと弱まっていく。嫌な推測だが、このまま行けばレナは妖力を使い果たして倒れ、実質的には私たちの勝利となるだろう。でも、本当にそれでいいのだろうか。私たちが技を避け続けられるのか分からないし、レナは苦しんでしまう。レナがロッセオみたいに忠誠心がない奴だったらよかったのに。なまじそれがあるが故に、今こんなに苦労しているのだ。しかし、停滞していくと思われていた場の流れが一気に変わった。それは、奇跡に等しかった。叩き落とされて空中で受け身を取ったが大きなダメージを受けたシン君と、そこで心配し歩み寄って行った姉さんが光り出した。もしかして、この光って…。そう思った途端、2人は1人へと変貌した。光が収まった後に現れたのは、姿は姉さん寄りで、シン君らしさといえばコウモリの羽くらいだったが、シン君のように目は吊り上がり、レナを冷酷な目で見ていた。

「悲しんでいるんだろ?主に捨てられ、ただ戦わされるだけ。確かに生き地獄としか言いようがない。私は無用な争いは避けたいのでな。今お前が戦うべきなのは私たちでも、主をおかしくした人でもない。その心を支配しようとしている意志。これを消さない限り私たちに太平は訪れない。気持ちを、強く持て。そうすれば、きっと覆る。自分の本当の意志が今心の隅に押し込められていたとしてもな」

女子っぽいが、声は低めで、あんな口調のため、シンくんよりの話し方な気がした。レナの攻撃にほんの一瞬の揺らぎが出来ると、シン君と姉さんが合体した人がより近くに行き、レナを諭し続けている。効果があるのかどうかははっきりとわからないが、レナの揺らぎが多くなった。

『だから、早く倒してくれない?これ以上待たせるようなら、私だって聖人じゃないんだから、さらに出力を上げちゃうよ?嫌ならもっと急いで』

この通信は私たちにも聞こえた。レナは突然苦しみ出した。人伝に聞いたことはあったけれど、レクフォン、かなり歪んでしまっている。となると、一つ疑問が浮かび上がってくる。ブラックスやここの部下たちはブレックジンを受けておかしくなってしまっていた。ということはエヴェルやレクフォンもまた時の館の主人の部下だ。もしかして、レクフォンの性格をまるきり変えてしまったのは時の館の主人なのかもしれない。だとすると、まだレナもレクフォンも救うことができる。それをシン君と姉さんが合体している人に伝えなくては。しかし、彼女はレナを挟んでちょうど反対の方向に行く。無論レナも自分の周りを歩いていて怪しまないわけがない。確か、多くの妖力を消費すれば技に自分の思いや考えを入れておくことができた筈だ。しかし、そうすると彼女には当てずにピンポイントで彼女に渡すことができるかどうか困ってしまう。私は考えても仕方がないのでとりあえず氷の弾をつくることにした。不幸中の幸いという言葉があるように、今日はまだまだ寒いので氷の弾を作りやすかった。私は今知ったことを強く思い、氷の弾丸をあっという間に作った。これでシン君の瞬間移動を使ってくれれば、届けることができるかもしれない。レナは彼女に気を取られており、こちらには一切気づいていない。彼女はレナの周りを回り始めた。よし、これで!彼女がだんだんと近づいてくる。レナは私に気づいてしまったようだ。早速攻撃を仕掛けて来た。私は走ってそれを掻い潜り、すれ違いざまに彼女の手に氷の弾丸を押し付けた。

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