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フォニックス 光と闇  作者: ことこん
第十一章 闇屋敷侵入作戦
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第三部 おかしな主従関係

 その頃のこと。私は薙刀で攻撃しても当たらないと分かっていたが、こいつを見過ごすわけにはいかなかった。こいつだけは、絶対に倒してやる。なんてったって、こいつは私たちを路頭に迷わせた、光逆戦争にいたからだ。なぜここに闇狐がいるのか不思議だったので、今でも覚えていた。姉さんには事前に『闇屋敷に行けばそいつに会うかもしれないけど、相手は私1人でさせて』と言っておいた。だって…私たちを襲った張本人。許せる訳がなかった。

「あら。怖い顔。そんな顔してたら、折角の可愛い顔が台無しだよ?…あなた、もしかしてあの時の…生きていたのね。てっきり家を崩した時に下敷きになったと思ったけど。生き残りを見たのは初めて。もしかして…あなた…」

「今それは関係ない!」

私の振りかざした薙刀は、そいつに到達する前に動きを止めてしまう。もうこんなことは何回目だろうか。私はだんだんと苛立ちがエスカレートしていき、妖石を身につけている筈なのに体が勝手に動き出した。女は私の薙刀を避けようともしなかったが、パリンと音がして再び動き始め、そいつの首目掛けて回していた。…私は、何をしているの?そいつは慌てて避け、頬に掠っただけだった。私は逆に安堵した。このまま殺してしまっていたら、二度と戦いたくなくなるかもしれない。

「やっぱりね。あなた、感情が究極まで高ぶったその瞬間だけとんでもない力を発揮できる血筋の人。普通の人なら、感情の高ぶりで上がる妖気は体が耐えられる限界くらいだけど、あなたは妖力や体の干渉を受けない。つまり、感情の強さでいくらでも強くなれる。あの瓦礫(がれき)をどかしたの、あなたでしょ」

正直に言うと、なんで私たちが助かったのか覚えていない。こいつがどこまで本当のことを言っているか分からないけれど、そうなのかもしれないと思えた。

「多分、このまま戦ったら私死んじゃうね。もうやめよ?お互いの為にさ」

「はっ?」

「信じらんないでしょ。でもね、本当だよ?私には忠誠心がないから」

「どうして?」

「今の長は木偶の坊だよ。レクフォンのブレックジンで人を何とか繋ぎ止めてるような状況。普通の子は倒されてブレックジンが解けた時に忠誠心を失うんだけど、私は前の代、つまり闇逆戦争でしくった代から忠誠心失せてるの。だから光狐と何の抵抗もなく組めたって訳。レクフォンのブレックジンは中々のものだったけど、私は無理だったみたいだし。『風狐ちゃんを駒にできるかな?』とか言ってたけど、多分無理だろうね。私は今主と仰げるような人がいない。だから、あなたと契約をして欲しいんだ」

「何?」

反省しているように見えないこの人の言うことをあまり信用できず、私はそう言って睨んだ。しかし、この人の表情は全く変わらない。薄い薄い水色の目に私が映っている。その目が憂を帯びたような形に変わった時、この人はようやく口を開いた。

「私の特殊能力、自分で言うのもあれだけど結構強いじゃん?でもね、その代償として誰かの為に動く時しか発動しないようになってるの。つまり、私は次の主を見つけるまではあれを使えない。あなた、名前は?」

この人はそう問いかけ終わると急に倒れてしまった。私が慌てて駆け寄ると、この人は辛そうにしながらも私に話して来た。

「本当の所は、常に誰かに仕えてないと、こうなるんだよね」

「私はアインだよ」

「人の話聞いてた?まあいいわ。これからはあなたに尽くします。アイン“様”」

途端に彼女は起き上がってさっきと一緒になった…筈だった。しかし、この人が割と真っ直ぐに私を見据えている。

「もし、あなたが私の真の主となったら、命に代えても助けて見せます。でも、今までの奴らと変わらなかったら、即座に切り捨てるから」

「その前に罪を償ってくれるとありがたいんだけど」

「分かってるけど、どうやって償うの?死んで償えと?」

「…じゃあ今すぐ私を主と認めて、私に尽くして。あなたがしたことの精算をしながら、私の元で生きていって。逃げるのは許されないよ?」

「…許して下さるのならば、それでも良いでしょう。このロッセオ、命尽きるまであなたに尽くして見せましょう」

「意外。自分が生きる為ならポリシーも捨てるような人なの?ロッセオは」

「とんでもない。先程私に罪を償えとおっしゃった時の目。私はああいった目の人が好きなのです。レクフォンもそうでしたが、力の使い方を誤ってしまった。アインさん。大抵の事はこのロッセオにおっしゃって下さい。私は主を選ぶ分、相応しいと思った人には惜しみなく自分の能力を使います」

「じゃあロッセオ。忠誠心を見せてみて。ライトさんと戦ってる奴を倒して」

「仰せのままに」

何だろう、この差は。殺戮兵器ソウマみたいな感じなのだろうか?いずれにせよ、ここにおかしな主従関係が生まれたことは確かだろう。もしかして、ロッセオは生きるのに必死なのかもしれない。憎まれている相手に忠誠を誓うなんて、普通ありえないことだろう。

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