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フォニックス 光と闇  作者: ことこん
第一章 闇に近づく光
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第五部 フォニックスたちの副業

 「なあ、お前ら。現実的な話、していいか?」

翌朝。ライトさんは結構早めに起きてきたかと思うと、朝食でそんな話を切り出してきた。ツーハちゃんとウンモちゃんは首を傾げているだけだったけれど、私はなんとなく察した。ライトさんはパサっと一昨日解決した任務の報酬を見せた。

「たったの五千だ。別に依頼主に文句を言う訳じゃないが、そろそろ金がやばい。任務もあんま来ねえしな。だから、副業が必要だと思うんだ。もちろん、フォニックスの活動はやるけど、日によっては本拠地に残ってる奴もいるよな。休日はいるけど、毎晩遅いわけじゃないし、その時間を有効活用できないかなと。アルバイトは自分たちで探すしかないんだけどよ」

「いい案だけど、僕たち決まった時に来れるわけじゃないから、少し難しいかもよ」

ソウマさん、結局怪我を気にせずいつも通り生活してる…。ライトさんはうーんとうなり、トーストを口に運んだ。

「じゃあ!私がやります!平日の昼間ならツーハさんもいませんし!なんとかやってみせますよ!」

「イネイ、気持ちはすごく嬉しいんだが、俺がウーベイにぶっ飛ばされる」

「ふえ?なんでですか?」

イネイさんはキョトンとしているが、そりゃあそうだろう。ライトさんとしても、イネイさんにそういうのを押し付けたくないだろうし、シスコンなウーベイ君が許すわけがない。とはいえ、また振り出しだ。ライトさんはもう食べ終わったようで、どこでもらってきたのか求人のチラシを読んでいた。だが、思うような所が見つからないようで、険しい顔はそのままだ。やがて、私たちも食べ終わり、どうしようかなと思うとある人物が頭の中に浮かんできた。

「私は心当たりがあるから行ってくるね!」

私は誰がどう反応していたのかも見ずに、家を飛び出して行った。狐の国を出て猫の国に入り、そしてとある森に入って行った。森と言っても、街からずっと道があるので迷うことはない。その道を突き当たりまで歩くと、見渡す限りの畑とその中にポツンとある一軒家。私はとりあえずそこのチャイムを鳴らしてみた。しかし、反応はなかった。奥にいるのかなとそのまま家の裏に回ろうとすると、玄関のドアが開いた。

「あれ?さっきチャイム鳴ったよね?近所の子達のイタズラかな?」

「ご、ごめんなさい!私が押して、反応がなかったから裏に行こうとしてた!」

「ああ。なんだ、アインか。ごめんね。マキガから目が離せなくってさ。あいつ、まだ小さいくせにすぐ何かしようとするんだよね」

「じゃあ、今は寝てるの?」

「いいや、こんな感じ」

突如、ばっとパキラの足元をすり抜けてマキガが現れた。まだハイハイもろくにできていないくらいの子供だというのに、なんだかじっと見られているのが怖く感じた。

「あっ!こら!もー、こうなったらだっこしとく!」

パキラに抱かれても、マキガは私から目を離さなかった。

「こいつねえ、全然本に書いてあったような行動しないんだよ。無理に移動しようとするし、ヒノガの刀に触ろうとするし。すっごい大変。だけど、なんか初めての感覚」

なんだか、パキラっていいお母さんだな…。って、本来の目的を忘れている。

「ねえ、パキラ。人手って、足りてる?」

パキラは弱ったような笑みを浮かべた。

「全然足りてない。ヒノガは自分でやるって言うけど、私は家事と育児で精一杯だし、ヒノガも買い出しとか出荷に行かなきゃならないから、最近買った農業機械を使ってもこの土地の半分くらいしか管理できてないかな。しかも、土地はこれだけじゃないし」

「土地代すごくないの?」

「こんな所、全然売れなかったみたいで思ったよりだったよ。なんか、恐ろしい妖獣がいたらしいの。で、ヒノガが撃退したらまけてくれたし」

「じゃあ、農業を手伝ってくれる人がいたら?」

「願ったり叶ったりだね。雇ってもいいからそういう人ほしいよ。ヒノガが納得いくかわからないけど」

「じゃあさ、不定期だけど私たちフォニックスが雇ってくれって言ったら?」

パキラは私の方にずいっとやってきた。

「本当に?それなら大歓迎だよ!ヒノガも納得するだろうし!確かに、あんまり稼げなさそうだもんね。いいよいいよ!他のみんなにもそう言っておいて!」

あまりにあっさりと決まって、私は流されるままに家へと帰っていった。みんなにそう告げると、ライトさんは持っていたチラシから手を離してパキラに電話し始め、他のみんなも嬉しそうだった。ソウマさんは、早速図書室から『農業図鑑』というものを持ってきて読み始めていた。エントはそれを覗くと頭から煙が上がっていた。そして、イネイさんが農業っぽい服装になってやる気満々でいたのをライトさんが必死に止めていた。なんだか、賑やかだ。でも、この感じがずっと続けばいいのにと思う自分がいた。それは、フォニックスたちが副業を見つけて、舞い上がっていた午前だった。

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