第三部 無効は最強?
時を少し遡って、三日前。うわー、絶対帰ったら怒られる。僕は少女を運びながら憂鬱な気持ちで研究所への道のりを歩いていた。あんまりゆっくり歩いてきても怒られるから、普通に歩いていたら、あっという間に着いてしまった。僕は少女を預けると、父さんに会いにいった。父さんはやっぱり僕を冷たい目で見ていた。
「やはりお前は爪が甘い。あまり失敗が続くようなら、更なる強化も考えるぞ。だが、あの少女もあっけなく倒されてしまった。あいつは必須だな。それにしても、あいつは何者なんだ?」
「僕もわかんないけど、見た目と技からして糸兎だね。大丈夫。センク君に発信機つけておいたから、大体の位置はわかるはずだよ。欲しくなった?」
「キリュウを倒した事より、一瞬であの縄を解いた事の方が驚きだ。糸兎か。キリュウ。次の仕事だ。だが、今回は入念に行う。俺が作った奴らでもいいが、協力者を呼んでおいた。実行は向こう側の都合上三日後、仕事内容は糸兎とセンクの回収だ。センクは動けんだろうから、糸兎と戦う事になるだろう」
「まあ、協力者がよっぽど役に立つ人なら三日待つよ。父さんは僕を他の子たちと一緒に見てるみたいだけど、実験から生み出された僕にとって強化はそんなに怖いことじゃないんだよ?」
「つまり、お前は望んでいるんだな、強化を」
「三日でどれくらい変わるかはわからないけど、今度こそ完全に勝ちたいんだ」
現在に戻り、センクは再び目覚めた。なんだが、嫌な予感がする…。僕は痛みに耐えながらも起き上がった。クミさんはいないようだ。と思ったが、右腕に熱を感じてゆっくりそちらを向くと、クミさんがそこで寝ていた。
「クミさん!?」
思ったより大きな声が出てしまい、クミさんは目を開けた。
「センク君、無理しなくていいのに。やっぱり初心だね。だってベッドがこれしかないんだもん。あと、声も可愛い」
クミさんは僕を掴んで自分の方に引っ張る。僕は抵抗したが、すぐに負けてしまった。この痛みをどうにかしないと、戦いなんて到底できないな。無効も体力がいるし。クミさんは僕を糸でベッドに縛り付け、絶対に起きられないようにしてしまった。
「クミさん。なんだか、嫌な予感がします。気を付けてください。奴らが追ってきたかもしれせん」
「知ってるよ。センク君に発信機つけてたもん。私も盗聴器付けてたから、おあいこだけど。あいつらは間違いなく今日来る」
「クミさん、あなた、一体何者なんですか?」
「今は関係ないでしょ?だって、あいつら来ちゃったもん。センク君は退がってて」
「ですか」
「言ったでしょ?最後まで責任は取るって。あんまり無理してると治り遅くなるよ?」
クミさんは去っていってしまった。外に出て戦う気だろう。僕は体力を回復したかった。そうだ、回復技を自分に使えば…。上手くいったみたいだ。僕は体の痛みを無効にし、糸は技で切った。僕は迷わず外に出た。すると、クミさんがキリュウと誰かのコンビで襲われているのを見た。このままじゃ不利だ。僕はクミさんに近付いていた技を無効にした。
「まあ、あなたなら来ると思ってたけど」
クミさんはキリュウを攻撃した。今回のキリュウはそれで吹っ飛ばされなかった。この三日間で強化したのか。僕はもう1人を攻撃した。すると、相手はそれを受け止めて反撃してきた。相手はニッと笑ってみせる。
「俺はバボット。母国では有名な殺戮兵器さ。火虎って言うんだ。覚えとけ!」
僕らはお互い一進一退の攻防を繰り広げた。サーベルは置いてきたけど、今回はそれでいい。僕は木の枝に飛び乗った。そして、向かってきた技自体ではなく、ダメージを無効にした。木には火がついた。よし、作戦通りだ。僕はそれを繰り返していく。バボットも変わらず攻撃してくれたのでありがたかった。燃えた木次々にが倒れ、バボットは下敷きになった。しかし、バボットの妖気は消えていない。
「よくもやってくれたな!今の殺す気だっただろう!」
じゃあ…あれをやることにするか。体力は大幅に消費されるが、そのために体力をつけてきた。僕は経過時間を無効にしてバボットに近づき、集中攻撃を浴びせた。そして無効を無効にすると、バボットは倒れた。僕はすぐにクミさんの元へ向かった。クミさんは押されていた。僕はクミさんを横に押す。キリュウは面白そうな顔をした。
「これは多分、バボット君が弱かったというよりセンク君が強すぎたってことだよね?コンビネーションは良かったけど、引き剥がされたら意味はないか。センク君、気づいてると思うけど、僕は父さんに強化してもらったんだ。ようやくもらえたよ。あの子のだけは欲しかったからね。かかってきなよ。今日は簡単に負けないでね?」
キリュウは火の玉を作った。三日前の比ではない程の大きさの。あれをぶつけられたらこの家は一瞬で焼けてしまうだろう。それだけは、絶対にさせない。恩人の家が燃やされるのを黙って見ているわけにはいかない!




