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フォニックス 光と闇  作者: ことこん
第十章 研究所とセンク
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プロローグ 師匠の激変

 年は明け、一月。俺たちは、ツーハが光狐たちに戦争をやめるように働きかけている傍ら、悪魔がいると依頼を受け、不思議がりながらも指定された場所に瞬間移動で向かった。すると、なんの変哲のない街…に一瞬見えたが、賑わいは無く、みんな家に立て籠っているようだった。おまけに、赤いシミが付いている建物もある。この街で何が起こったのかは大体予想がついた。

「フォニックスさん!こちらへ!」

とドアを少し開けて俺たちを手招きしたのは、どこにでもいそうな出たちである水色の目を持った少年だったが、右耳が少し欠けているのが気になった。俺たちが素早く中に入ると、その少年はすぐさま鍵を閉めた。

「今日依頼したのは、その悪魔を倒して欲しいからです。奴は本当に悪魔です。この一週間で、何人殺されたことか!このままでは、この地域は滅んでしまいます!早く倒してください!」

少年の勢いのよさに少々圧倒されたが、断る理由はない。

「分かった。じゃあ、お前はここにいるんだぞ」

「はい!」

俺たちは少年が茶を出そうとしたのを断って家を出た。なるべく早く見つけたいからな。しかし、なんの手がかりもないため、ただ誰もいない道を歩くだけだった。そろそろ街を一周しかけた頃。どこからか悲鳴が聞こえ、俺たちは急いで駆けつけた。すると、怯えた顔で逃げている旅人を誰かが追いかけていて、もう追いつかれるという所だった。俺たちは旅人の前に立ち塞がった。そいつは急停止し、俺たちを見やった。

「誰かと思えば、フォニックスだったのか。まあ、絶対来るとは思ってたけどね。やれやれ。関わらなかったらよかったのに。もちろん容赦はしないよ。あっ、自己紹介がまだだったね。僕はキリュウ。なんで君たちを知っているのかは伏せておくとするよ。さっ、戦いを始めようか」

キリュウ…誰かの名前に似ているような気がする。それはともかく、キリュウは言い終わらないうちに火の玉を作り始めた。俺たちも、つられるように技の準備をした。しかし。キリュウはなんと火の玉を操った状態のまま地面に叩きつけてきた。てっきり十分に大きくしてから放つというスタンダードなやり方だと思っていた俺は完全に油断していて、少しかすって火がついてしまった。スインがすぐに消してくれた。キリュウは叩きつけた火の玉を元の位置に戻し、今度は反対方向に叩きつけた。一度見せた技をもう一度使うなんて、なんだか不自然だった。だがその不自然さは、すぐに解消された。なぜなら、エントが地面に散らばった炎を踏んだからだ。エントでよかった。ほっとしたのも束の間、さっきの同じ大きさの火の玉が一瞬にして空を埋め尽くすほど大量に出てきた。そして、それらは一斉に俺たちの方に向かって雨のように降り注いだ。俺は走って避けようとしたが、足元の炎が邪魔で減速されてしまう。このままじゃ、間に合わない!


 私はいつも通り起き、生活していたが、ある違和感に気づいた。センクがいない!普段、というか毎日この時間帯はあのソファで寝ているのに。まあ、気にしすぎもよくないかもしれない。やる気を出してくれたのなら、それに越したことはないし。


 しかし、一瞬で視界から全ての炎が消え去り、代わりにダァンという音が聞こえた。

『聞こえて居るか、フォニックス』

急にキキ様の声だ。あと、ようやくちゃんと言えた。

態々(わざわざ)弟子の為に駆け付けるとは、師匠の鑑で有るな。彼奴を見て居ると、『能有る鷹は爪を隠す』と云う言葉を思い出す』

俺はキリュウがいた方を見た。

「…師匠?」

フウワのその一言で、現れた人がセンクさんって人であることは分かった。でも、あんな力に満ち溢れた人だとは聞いてない。センクさんはキリュウの攻撃を消し、攻撃していた。こんな強い人に教えてもらってたのか!ずるいぞフウワとソウマ!とも思ったが、2人の反応は『あんな人だったっけ?』というようなもので、修行の時は本当にやる気がなかったのだろう。やがてセンクさんが優勢になり、キリュウを吹っ飛ばした。キリュウが動かなくなったのを確認すると、センクさんは一瞬俺たちの方を振り向き、走り去って行った。キリュウはどうなったのか見た。しかし、すでに姿を消していた。


 私はドアが開く音が聞こえ、誰だろうと見に行った。本来ならエトクが見に行くのだが、セグリアのショッピングに付き合わされて今はいなかった。目の前には目に鋭い光を宿し、しゃんとした姿勢で立っている、センク。私はその姿を見て、思わず泣いてしまった。

「どうしたのですか?母上」

口調も昔に戻っている。

「あなたのその口調。ずいぶん久しぶりに聞いた」

センクは微笑むと、何年も前から使わなくなり、置物と化していた、サーベルを手に取った。そして、再びドアを開けた。

「母上。どうやら、決着をつけなければならない時が来たようです。しばらく帰らないかもしれませんが、ご心配無く」

センクは去っていってしまった。

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