第四部 シャイニング・バーストイーグル
シャイニング・バーストイーグルは、ようやく口を開いた。
『まさか私の名前をまだ知っている者がいるとはな。驚きと興味で来てしまったのだが、どうやらようやく来てくれたようだ。私が望むのは邪心を持たぬことではない。それは闇狐の方だ。ひたむきな心。それが一番大切だと思っている。だが、最近来る奴らはそんなものは全く持っておらず、自分が偉くなりたいからと願っていた。それに、お主は私の名を知るために図書館で一日中本を読み漁っていた。その情熱は評価に値する。お主をこの一族の神として認めよう。しかし、光屋敷に囚われる必要はない。お主の好きなように生きろ。しかし、この一族を危機から守る役目であり、最高権力者である事を忘れないように。これはその証の『光のしめ縄』だ。お主が更なる力を求めた時、これは光り輝きお主を神の姿にする。妖石のようなものだと思って肌身離さず持っておけ』
シャイニング・バーストイーグルはそう言うと足で持っていた首輪みたいなしめ縄を一旦バラバラにして2本の足で手際、というか足際よく赤いリボンや赤いドライフラワーなどを持ちながら編み直し、枯れ草色に赤が映えるしめ縄にした後ツーハの首につけた。ツーハはいつものようにはしゃぎはしなかったが嬉しそうだった。
「ナスタチウムだね。花言葉は『愛国心』『勝利』『困難に打ち勝つ』。ツーハちゃんにぴったりだよ」
ソウマは相変わらず詳しい。歩く植物図鑑だな。シャイニング・バーストイーグルはそのまま飛び去ろうとしたが、ライトが駆け寄った。
「なあ!お前、キキ様の所にいて手紙書いてたタカにそっくりだよな!」
いや、サイズが違いすぎるだろう。そう思ってシャイニング・バーストイーグル…いちいち長いな、を見ると、なぜか笑っていた。
『あれ、私のノーマルフォルムなのだが?そうか、鷹と思われていたか。この姿とノーマルフォルムは少し変わるからな。そういえば、あの時お前らを案内した柴犬いただろ。あれが穀物の神獣だ。私たちは普段あそこに住んでいるのだ。知らなかったか?』
「タカじゃなくてワシだったのか。ていうか、キキ様の所にいた動物たち、神獣だったんだな…」
シャイニング・バーストイーグルは今度こそ去って行った。シャイニング・バーストイーグルが見えなくなると、ツーハはこちらを向いて嬉しそうに空を飛び回った。ツーハが動く度、しめ縄が光っているような気がする。俺たちはツーハを讃えながら家に帰った。その後、全員に褒められて調子に乗ったツーハは学校を勝手に抜け出した事を先生に怒られ、意気消沈したのだった。
今日、ボクはワクワクが止まらない!なんてったって、今日はシャニー(シャイニング・バーストイーグル)が来てくれる日なんだもん!ボクはシャニーが来たのを確認すると、思いっきり手を振った。シャニーはノーマルフォルムで来てくれた。鉄格子を器用に掻い潜り、シャニーはおにぎりを一つ持ってボクの目の前に来た。ボクがおにぎりを受け取ると、シャニーは地面に着地し、ボクを見上げた。
「ゼノ、今日は元気そうだな」
「うん!だって、今日はシャニーが来てくれる日だもん!ワクワクでいっぱいだったよ!」
こうやってわざわざ来てくれるのはシャニーが初めてだ。シャニーの持ってくるおにぎりは普段食べてるパンよりもずっと美味しい。シャニーは何も知らないボクに色々なことを教えてくれる。
「シャニー、今日はなんの話?」
「そうだな、今日はピクニックの話だ」
「ピクニック?なにそれ」
「暖かい晴れの日に野原にレジャーシートという敷物を敷いて上に座り、弁当と言って箱に食べ物を詰めて持ち運べるようにしたものを食べるんだ。どうだ、悪くないだろ?」
「でも、ボクは日の光に弱いから無理かも。それに、ここから出たことすら一度もないんだし。今日も5回くらい体当たりしたけど、やっぱり無理だったよ」
ボクはシャニーによると牢屋に入れられているらしい。しかも、行き止まりの洞窟に鉄格子を嵌めただけの。ボクはこっそり岩を削って部屋を大きくしている。シャニーは仲間と協力してここに水を通してくれた。おかげで、トイレもお風呂もある。ボクはシャニーがこの前持って来てくれた鏡で自分を見る。やっぱり、真っ白だった。なのに、目だけ真っ赤で。ボクは自分の見た目が好きじゃなかった。この姿のせいでこんな所にいて、太陽に弱いんだ。しかし、シャニーはずっと笑っていた。
「別にここだってピクニックはできる。そのおにぎりも、ピクニックに持っていくものの一つだ。少し、想像させてやろう」
途端に、周りの景色が変わった。明るくて、心地よい風が吹いている。シャニーの幻覚だ。でも、おにぎりが美味しく感じた。でも、すぐに景色が戻った。まあ、ノーマルフォルムだから仕方ないよね!シャニーは飛んで鉄格子の向こう側に行った。
「また来る、ゼノ」
「約束だよ!シャニー」
シャニーはあっという間に見えなくなった。




