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フォニックス 光と闇  作者: ことこん
第九章 光狐の分裂
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プロローグ 変な任務

 十二月。十一月のことがなかったかのように時は流れていった。時々、エントとギルド様が出かけることがあるけれど。今日は、逆にある光狐から依頼が入ったらしい。でも、ツーハちゃんは学校だし、エントはまた出掛けていったし、ソウマさんはオスコさんの所に行ってしまったから、結局5人で行くことになってしまった。ちょっと予定が被りすぎたかもしれないけれど、ギルド様曰く『光狐をこちら側に引き込む好機』だというので、今日行く支度をしていた。そしてシン君の瞬間移動で光屋敷に来た瞬間、門番たちに取り囲まれた。

「何者だ」

「いや、俺らここに呼ばれたんですけど?ほら」

ライトさんが慌てた様子でもらった手紙を見せた瞬間、奥にいた門番たちがざわつき始め、1人の女性が現れた。

「ごめんなさーい!びっくりしましたよね?私はセツです!どうぞこちらへ!」

本人は気さくに話しかけてくるが、たくさんの侍女を連れていることからしてかなりの地位だろう。しかし、セツが部屋に入ると侍女たちは散っていった。光屋敷は全体的に和風で、私たちの案内された部屋には囲炉裏と縦に長いものと小さいものの2つのこたつがあった。セツは私たちをこたつに座るように言い、自分は小さい方に座った。なるほど、だからこんな変わった形状だったのか。

「フォニックスさん。今日は、あなたたちにお願いがあるんです。じ、実は、私、好きな人がいるんですけど、お父…じゃなくて長が許してくれなくて…」

それって、まさか…。

「一緒に、お…さを説得して頂けないでしょうか?」

最悪の予感は的中してしまった。ちなみに、ここにいるのはライトさん、フウワさん、シン君、姉さん、私だ。…なんとかなりそうなメンバーではない。むしろ、その長さんに怪しまれてしまいそうな気がする。

「あの、俺らとセツさん、敵同士ですよね…?なんでわざわざ俺たちなんですか?」

「だって、私が好きなのはあなたたちと面識があるキセキ様なんだもの!お、さにキセキ様をもっと伝えようと思ったら、知り合いの方に話して頂いた方が説得力があるに決まっています!」

そりゃそうだ。かの演劇みたいにうまくいかないに決まっている。シン君は内心くだらないと思っているのだろうが光狐をこちら側に引き込む好機だということもあってか何も言わなかったが、イライラしているのは伝わって来た。一方セツさんはそんなことも全く気にせず話を進めていた。ライトさんだけがその話についていき、何やら電話し始めた。そして、こちらを向くと、後ろに強い妖気を感じて振り返ると、本人、つまりキセキさんがそこにいた。キセキさんは少し気まずそうな顔をしていたけれど、セツさんを見るとすぐに驚きの表情に変わった。セツさんはそんなキセキさんの方に歩いて行く。

「キセキ様!お久しぶりです!返事、ずっと待ってたんですから!」

「す、すみません。ですが、僕たちは敵同士で…」

「だから、あの日言ったじゃないですか。『私はどうなってもあなたと一緒にいたい』って。あの後手紙も送りましたのに」

どうやら、ただの憧れだけではないようだ。少しホッとしたのも束の間。

「よし、皆さんでキセキ様を長に認めさせましょう!」

ようやくスラスラ長って言えた…ってえ?もう行くの?私たちは、廊下を勢いよく走るセツさんと彼女に手を引かれていくキセキさんを必死に追いかけた。セツさんはとっくに長の部屋の戸を開けていた。まだ長からはキセキさんが見えていない。

「なんだ。またあいつの話か?俺はそんな話をしても聞く気は毛頭ないと何度言ったら分か…」

「ということで、本人連れて来ましたー!」

バーンと効果音を口ずさみながらセツさんがキセキさんを見せると、長の妖気が変わった。

「貴様が俺のセツをたぶらかしている不届き者か!出ていけ、勝手に光屋敷(俺の縄張り)に入って来るな!」

「不届き者はどっちだ」

しかし、キセキさんが放った鋭い声に、長は押し黙ってしまった。

「僕は仮にも王族だ。政治を間近で見ていた。悪政も、良政も。悪政は人々から非難を受け、やがて崩れていった。でも、良政は人々から慕われ、長く続いた。お前がしているのは、間違いなく悪政だ。『俺のセツ』、『光屋敷(俺の縄張り)』などとほざいているうちはな。こんな所にセツさんがいるなんて、馬鹿馬鹿しいよ。その程度で国を名乗るなんて、大した度胸だね。そのうち、後悔することになると思うよ」

「なんだと?実際に政治をしたこともないくせに偉そうに!」

長はキセキさんを攻撃した。しかし、キセキさんはそれを易々と避けてみせた。

「ほら、器が小さいでしょ?」

キセキさんの挑発に最も簡単に乗り、長はキセキさんに攻撃を仕掛け続けた。セツさんはそれをただ茫然と見ていた。キセキさんは今まで見たことがないような不敵な笑みを浮かべ、まるで長に攻撃されているのを狙っているみたいだった。…大勢の人の目の前で。

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