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フォニックス 光と闇  作者: ことこん
第八章 フォニックス始動の裏側
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第四部 蛇の科学者の過去

 エヴェルと別れた後、俺たちはとっ捕まえていたらしい蛇の科学者と続けて面会した。

「あなたのその科学は、誰から学んだのですか?正直に話さないと永遠に檻の中ですよ」

相変わらず容赦ない。蛇の科学者は一瞬たじろいだが、すぐにいつもの調子に戻って話し始めた。

「分かった。全部話す。私は見ての通り蛇だ。だが、私はお前らと同じように猫の親から産まれた。当然ながら、私は両親から気味悪がられて、すぐに捨てられた。私はそこで静かに生きていただろうな。…あの人に出会わなかったら。こんな姿の私を育ててくれたのは、レクフォンっていう女の狼だった。私はレクフォンをレンと呼んで、ずっと私だと思ってた。しかし、幸せな日々の終わりは突然来た。レンは、時の館の主人に利用された。私はすぐには気づかず、そこで研究者と出会った。そいつはレン経由で人を合体させて新たな人にするという科学を教えてもらった。私はそれを利用して、蛇を増やし、国を作っていたのだ。まあ、これからどうするかは決めてないけどな。不死の能力なんて、持つんじゃなかった」

蛇の科学者は、自嘲気味に笑った。俺は、少し気になったことがあった。

「その、レンは今どうしてるんだ?」

「そのレンこそが今お前らと戦ってる奴だよ。…今回の戦争の首謀者。時の館の主人は本当に恐ろしい奴だ。その名を聞くだけでも震え上がりそうな程に。あいつに利用されてる奴は、みんな狂ってる。俺はレンを助けたかった。でも、俺には、何の力もない…」

一人称を変えた蛇の科学者の言葉はいつになく真っ直ぐだった。ギルド様は蛇の科学者をじっと見た。

「つまり、あなたは研究者の科学を一番知っている。だったら、一つ、聞きたいことがあります。一度研究者に合体させられた人たちを、元に戻すことはできますか?」

蛇の科学者はその細い目を大きく開け、ギルド様を見た。俺もまさかそんなことだとは思っておらず、同じようにギルド様を見ていた。

「可能性はゼロではない。やってみる価値はあるだろう。だが、失敗した時の保証はできない。念の為ネズミで試したりはするけどな」

「ありがとうございます。こんなにすんなり受けてくれるなんて意外でした」

「俺はレンを救う為なら誰とだって手を組む。その代わり、うまく行ったら檻から出してくれよな?」

「いいでしょう。また帰って来たりはしませんよね?」

2人とも怖い。さっきのいい雰囲気はどこに行ったって言うんだ。ギルド様は時計を見て、はっとした表情をしていた。

「いけません。もうこんな時間です。フォニックスたちが帰って来てしまいます。しかし、エントさんを1人にするとこの前の二の舞になりそうですね…。では、こうしましょう」

「どういうことですか?」

「今ここにいる3人で、フォニックスの本拠地に行きましょう。そして、そのまま居候として…」

「ちょっと待ってくださいよ!」

「別にいいじゃないですか。元々私が用意した場所ですし」

…ぐうの音も出ない。結局、そのまま俺たちは家に帰った。もちろん瞬間移動で。

「おかえり。エント。どこ行ってたんだ…って、なんでギルド様と蛇の科学者がいるんだよ!」

「居候させていただきます。もちろん、仕事はしっかりしますのでご安心ください」

ギルド様の無言の圧によって、居候が決定してしまった。まだここにいるニーケルはギルド様を見るとすぐにその場にひれ伏した。

「そういえばフウワさんとソウマさんを見ませんね。今一番話したい人達だというのに」

「なあ、フウワとソウマ知らねえか?」

ギルド様の独り言を俺が大きく言い直す。自分が言うと勘違いされるというのは自覚しているらしい。

「ソウマ君なら図書室に行ったで」

「ありがと、スイン」

俺たちは図書室に向かっていたが、図書室前の様子を見て驚いた。壁は大きくへこみ、床は削れていた。そして、その中心にソウマが倒れていた。俺は慌ててソウマをリビングに運ぼうとした。しかし、どこからか岩が飛んできて行手を阻まれた。俺が振り向くと、そいつはいた。

「やあ、久しぶりだね、エント君。直接話したことはないけど、一応知り合いだったのに、こんな形でおさらばしちゃうのは悲しいな。でも、仕方ないよね。君は知りすぎちゃったし、ソウマ君がいるとややこしいことになっちゃうんだよね。だから僕がわざわざ消しにきたのに、なんでギルド様がいるのかなあ?さすがの慎重さだけど、『その姿』じゃあ僕に勝てない」

ギルド様が少し反応した。一体、どういうことなんだろうか?だが、今はそれを考えている余裕はない。

「僕的には、とりあえず君たちを消して、スインちゃんを連れて行ければそれでいいの。まっ、せいぜい足掻いてみなよ」

そう言って、目の前の相手、そうスインに突っかかってたあいつ、エムルは、俺たちに向かって不敵な笑みを見せ、大きな岩の塊を幾つも作った。俺は、わからないことだらけのまま、ソウマを持ちながら、一歩を踏み出した。

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