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フォニックス 光と闇  作者: ことこん
第八章 フォニックス始動の裏側
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第二部 暴かれた時の旅人

 帰って来たら、まずはアインちゃんの様子をみんなで見に行った。怪我は大丈夫そうだったけれど、何か考えているようで気になった。スインさんが

「アイン、どうかしたん?」

と聞いても、

「ううん。別に何もないよ」

とはぐらかしていた。まあ、僕はずっと誤魔化し続けているから他人事とは思えないのだけれど。みんなが部屋を出始めたので、僕も出ようとしたけれど、アインちゃんがじっとこちらを見ているのが気になった。

「どうしたの?」

「…ソウマさん、ちょっといい?」

「別にいいけど?」

「あの、ソウマさんって、フォニックスとして活動をしていく中で、不思議に思ったことってあったりした?」

「うーん、確かに、なんでこんなに庶民の戦闘集団が注目されたのかなって思った事はあったかな。でも、それ以外は無いよ?」

アインちゃんは一瞬俯いたけどすぐにこちらに視点を合わせた。

「じゃあさ、フォニックスがこのメンバーでずっと続いていくと思ってる?」

「もちろん、そうだと思うよ?急にどうしたの?」

本当のことを言えば、僕はどこかのタイミングでいなくなってしまうのだろうけど、そんなことは言えなかった。フウワさんにしか言っていない話だし。アインちゃんは、

「ありがとう。聞きたかったのは、それだけだから」

と言って眠り始めた。僕は静かにアインちゃんの部屋を出た。すると、すぐ近くにフウワさんがいて、心配そうにこちらを見ていた。

「あ、アインと、一体、何、話してたんだ?」

ずいぶんとあたふたしているなあ。フウワさん、僕があんな話をしてしまったからか、それとも『女心』というものなのか、1人でどこかに行くとか、誰かと2人きりになる時とかにすごく心配そうにしている。

「別に、大したことない話だったよ。安心して。僕、何があってもフウワさんの側に帰ってくるから」

もちろん、確証はない。だけど、そうとでも言っておかなければ後悔しそうな気がして。フウワさんは赤くなった。そんなになるようなこと言ったかな?僕は普段悪夢を見てしまうせいかあまり寝ない。でも、フウワさんの側では急に眠くなって、そういう時は悪夢を見ない。今回も、眠くなって来た。気づけば、僕はふらっと倒れて寝てしまった。


 私は寝たふりをしながらソウマさんの過去を見た。なるほど、だからキキ様はソウマさんのことを『時の旅人』と言っていたのか。それにしても、最初をソウマさんにしたのが失敗だった。しばらくは誰かの嘘を見抜くなんて出来そうにない。もし、自分はいつか不幸になって死ぬって決まっていたとしたら、私だったら途中で心が折れてしまいそうだ。今の私にあるのは、罪悪感と後悔だった。もちろん、この役目を放棄するなんてことは絶対にしないが、一ヶ月くらい間が開くことは許して欲しい。そうでもしないと、ただ見ているだけであるはずの私が持たない。やらなければならないとはいえ、これは想像以上に大変な仕事だ。この先が少し不安になった。


 僕は自室でコーヒーを飲みながらため息をついた。本当は、フォニックスを作ることに反対したかった。アインさんが全員の苦しみを背負ってしまうから。でも、時の館の主人の手がかりを掴んでおかなければ、本格的に世界滅亡に向けて動き始めた時、成す術なく滅ぼされてしまう。僕はアインさんに会いに行きたかった。けれど、僕は彼女の不幸を了承してしまったのだから。毎回会うごとに罪悪感が増していき、今では気にかけている自分に戸惑っているくらいだ。その時、キキ様を介してアインさんの知ったことを聞くことができた。それはソウマさんの過去だったが、聞いているだけでも苦しくなってしまうような話だった。これに勝る悲劇を、僕は見たことがないかもしれない。アインさんからの話は簡潔だったけれど、ここからは僕の仕事だ。僕は誰かの記憶を知れば、それを本人が忘れているようなことまで復元することができる。それが特殊能力だ。でも、これもアインさんのような状態に陥る上に、こちらの方がより鮮明に感じるのであまり多用はして来なかった。強い力が、必ずしも自分や周りの人を幸せにするわけではないのだ。


 (ようや)く終わったか。彼奴の能力はより長い間記憶に浸って居らねばならぬから仕方無いのだが。其れにしてもあの少年は此の様な事を長らく誰にも話さず1人で悩んで居たと云うのか。だが、此れで思ったより時の旅人は危険で有ると云う事が分かった。此れは放って置けば時の館の主人の思惑通り力を暴走させ、天災となり兼ね無いな。次は風狐の少女を調べて貰いたい所だが、生憎2人は今未だ気持ちの整理が付いて居ない様だからな。次は、ギルドに頑張って貰わねばならぬな。余り気は乗ら無いが、此れも此の世界存続の為。今度はあの火狐の少年に水狐の少女について調べて貰おう。前回の様に。例え本人が望んで居なかったとしても、やらねばならぬ時もあるのだ。

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