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フォニックス 光と闇  作者: ことこん
第八章 フォニックス始動の裏側
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プロローグ あの時の疑問

 十一月。私はフォニックスとしていつものように任務をこなしてはいなかった。その理由は…。

「全くもってー、アインさん、なんで前に来ちゃったの!わたし、あれぜったいかわせた!」

昨日の任務でツーハちゃんの目の前に相手の技が迫って来ていた時、本来なら氷の壁を張るはずが、藪から蛇が出て来、驚いて前に来てしまった。おかげで相手の渾身の技は見事に私に当たり、まさかの私が病院送りとなった。でも、藪から蛇が出て来たからなんて絶対言えない。そして初めてとも言える大怪我は想像を絶する程痛かった。これを毎月のように受けているのに手当てもせず平然としているソウマさんは一体どうなっているんだろう。改めてソウマさんの凄さとありがたさを感じた。ツーハちゃんは怒りながらもずっと私のそばにいてくれている。優しいなあ。ライトさんたちと一緒に任務に行けば良かったのに。もちろん、私はずっとベットで寝ている。ここには今コウとツーハちゃんしかいないし、もしツーハちゃんがいなかったら寝ているだけだっただろ…。

「アインさんアインさん!大怪我をしたと聞きましたよ!大丈夫ですか?」

一階からそんな声が聞こえる。ツーハちゃんは声の主を睨むようにして叫んだ。

「ギーヨ様!うーるーさーい!アインさんにめいわくでしょ!入って来ていいからさけぶのやめて!」

ギーヨ様は1分もかからずにこの部屋に入って来た。なんかまたしても玄関のドアが取れた音がしたような気もするが。

「アインさん…。すみません、取り乱してしまいました…。ご無事で何よりです…」

「げ、元気出してください!別に、迷惑と思ってませんでしたし。むしろ、わざわざここまで来ていただいてありがとうございます」

ギーヨ様は顔を急に明るくして普段の調子に戻った。

「大丈夫ですよ。国王とはいえ、休日はありますから」

私は体を起こした。2人が慌てたようだったが、骨折もしていないし、傷が痛むだけなのでこれくらいならきっと大丈夫だ。ツーハちゃんはじっとギーヨ様を見たかと思うと、急に立ち上がった。

「わたし、図書室行ってくる。アインさんとギーヨ様の2人っきりで話してたら?」

ツーハちゃんは終始ギーヨ様を見ていた。私はツーハちゃんが何を言っているのかわからず、ただただ困惑するだけだったけれど、ギーヨ様も困惑しているようだった。しかし、ギーヨ様が急にこちらを向いた。

「彼女は聡いですね…これから僕が話そうとしていることは、自分には知ってほしく無いということを、感じ取ったのかもしれません。アインさん、あなたにだけは、知っておいてもらいたいのです。これは、あなたにしか頼めないことです。できればこんな方法を取りたくはありませんでした。誰も幸せにならない方法かもしれません。…しかし、やらなければ絶対にこの世界は、救われません」

「…はい?」

いきなりスケールが大きすぎる話をされて、私は耳を疑った。しかし、ギーヨ様は至って真面目だ。おそらく、これは本当に重要なことらしい。

『妾から説明させて貰うぞ。其方は疑問に思った事は無かったか?庶民の為に立ち上がった戦闘集団『ふぉにっくす』が、活動を開始してから僅か二ヶ月程で此奴、猫の国の国王の目に留まり、一気に活動の幅を広げて行った事を。其れはな、最初から『狙って居た』のだ。元々此れはギルドとギーヨが協力して始めた事で有ってな、元々めんばぁの目星は付いて居ったのだ。…時の館の主人と関わりを持つ者と云うな。更に、運良く『時の旅人』と『召喚士』(まで)揃った。此れでふぉにっくすの真の目標に向けた計画を始める時が来たのだ。少女よ。其方には、一番辛い役目を担って貰わねば成らない。『仲間の嘘を見抜き、それを我等に報告する』と云うな』

私は完全に固まってしまった。その時の館の主人がとんでもないことをしようとしているのはわかっている。でも、それがみんなの嘘となんの関係があるのだろうか?

「一体、どういうことですか?」

「彼らの過去は、時の館の主人が仕向けたことです。つまり、彼らが過去を隠すための嘘をつけば、あなたの能力でその過去を知ることができます。最も、別に無理をする必要はありません。こちら側としては、無きに等しい時の館の主人の手がかりをほんの少しでも掴むことができればいいというだけですので。あまり、気負いすぎず。ここからはアインさんが考えることです。では、僕はこれで失礼致します。オムギさんに呼ばれているので」

ギーヨ様が帰って来ても、ツーハちゃんはここに来なかった。おかげで、寝ながら色々と思案してしまっていた。みんなが心の奥底に仕舞っている過去を、もう一度掘り返すようなことをしても良いのだろうか。いや、別に本人が思い出す訳じゃないし…。でも、なんだが心苦しいな、それって。ずっと考えていたら、やっぱり取れていたのかドアが取れてるぞと騒ぐ声が聞こえて来た。みんなが帰って来てしまった。

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