プロローグ 創造神との出会い
もし読み方が分からなければ、いつでも言ってください。読み仮名付けますので。
十月。フォニックスは先月は何もなかったかのように普段通りになっていた。…ただ、一つを除いて。シンの表情がずっと暗い。その原因は何なのか、もはや聞くまでもない。シンはまた2階のベランダから飛び立とうとした。しかし、ただ落下して行くのみ。ツーハに支えられて無事に着地した。シンは、飛べなくなった。コウモリの羽は、鳥のそれとは訳が違い、どれだけ大きく避けていても修復するらしい。実際に、シンの翼は元通りになっていた。問題はそこではない。これは心の問題だ。シンは、頭では飛びたいと思っていても、翼が動かないらしい。空を飛ばない俺たちにとっては空から落ちるという感覚がイマイチわからないため、何も言えなかった。余計に虚しくさせるかもしれないと思ったからだ。ツーハはあれからここにいる時はずっとシンの側にいる。しかし、任務は来ないというわけにもいかなかった。俺たちはとりあえず所定の場所に向かった。まずは依頼主に会うらしい。シンはちゃんと瞬間移動をしてくれた。視界が開けると、目の前に小さな犬がいてびっくりした。犬には首輪こそついているものの、自由に動けるようになっていた。犬種はあんまり詳しくないけど、茶色い柴犬だ、多分。
「フォニックス様ですね。お待ちしておりました」
急に声が聞こえて来て辺りを見回しても、やっぱり犬しかいない。…まさか。
「ここです。この犬です。私は訳あって話せますが、キキ様は別の場所にいらっしゃいます。ついて来てください」
犬はてくてくと歩き出し、俺たちもそれに続いた。キキ様…どっかで聞いたことがあるような気がする。イネイなら一発でわかりそうだ。本人は遺跡の発掘に行くとかで俺たちより先に出ていってしまったが。まあ、王族であることは確かだろう。だんだんと森の奥地に入って来、俺はちょっと不安になって来た。しかし、しばらくすると大きな和風屋敷が見え、俺はまた驚いた。
「シン、ここって何の国だ?」
「知らん。ただ来ただけだ」
柴犬は俺たちの会話を聞いて微笑んでいた。近づいてみると、この柴犬みたいな動物がいっぱいいて、庭の手入れをしていた。柴犬はそのまま器用にドアを開けて中へと促した。それにしてもデカい庭だ。見えてる範囲だけでも家の中庭が4つくらい入りそう。屋敷の中も動物たちが掃除をしており、せっせと洗濯かごを運んでいる熊や、なんと足の指で器用に手紙を書いているタカがいた。ソウマが少し左にズレたのは気のせいということにしておこう。犬は突き当たりのドアを開け、声を上げた。
「キキ様!フォニックス様をお連れしました!」
「そうか。ご苦労だった。昼餉を摂って良いぞ。其方らがふぉにっくすか。噂はあの技神から聞いて居るぞ」
ネズミだった。ああそう言えば、イネイが『ネズミの国があそこまで力を持っているのは、創造神様がいらっしゃるからなんですよ!』と言っていた。…創造神?
「妾は創造神のキキと云うものだ。大したもてなしも出来ぬが、其処に軽食を用意した。口に合うかは分からんが」
少々言葉遣いが古いものの、いい人そうだ。それにしても、この世界を作ったってことは1番偉い人なんじゃないのか?
「今日は少し其方らに用が有ってな。実は、近頃怪しい動きが見られるのだ。気のせいとも思ったのだが、彼奴は確実に此の世界の住人でありながら此の世界を滅ぼそうと画作して居る。しかし、妾は此の世界の創造神。他の世界と関わる事は出来ぬ。よって、狭間の世界と関わりが深い様である其方らに頼みがあるのだ。妾の指示に従い、其奴の野望を食い止めてはくれぬだろうか。妾は強さを求めて居らぬ。ただ、関わりの強い者にやって貰いたいのだ。どうだ?受けるも断るも其方ら次第だ。ゆっくり考えると良い」
「やります」
「おお。即答か。しかし、仲間らは…良さそうだな。其の勇姿実に立派である。其方らを選んで正解だった様だ。此れからは其方らに今風に云うとてれぱしいを飛ばす事が有る。其の時は驚かずに聞いてくれ」
俺たちは頷いた。やっぱり感じる妖気が違う。鳥肌が立ちそうだ。俺たちは、気づけば光屋敷の近くの街にいた。しかし、建物は全て壊され、人気が全くない。
『酷いものであろう。此れは光狐がやったのだ。奴らのする事成す事はいつも理解出来ぬ。不良品に出くわせば其の店を潰し、小馬鹿にされれば一族諸共滅ぼす。奴らは同族と別れて今も尚こんな馬鹿げた事を続けて居る。初代の思想は、何処へ行ってしまったと云うのであろうか』
「で、今回の任務は何なんだ?この街の奴らの生き残りを探して救助するのか?」
たとえ創造神相手でも、シンはその態度は変えないようだ。もうここまで来たら諦めるしかないのかもしれない。
『お主…少し礼儀と云う物を身に付けた方が良いと思うのだが…。まあ良い。今日は其の光狐の幹部とも云える重役を1人倒して貰う。無論、さぽおとはするので安心せい』
今回も大変そうな任務だ。




