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フォニックス 光と闇  作者: ことこん
第五章 一ヶ月越しのリベンジを
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第二部 諦めの悪い戦士たち

 目の前の相手は不敵な笑みを浮かべながら次の標的を探しているようだった。足だけじゃない。身体中が動かない。これではせっかく教えてもらった薙刀の意味がない。私はつい空気中の水分を凍らせて作った小さな小さな氷を相手にコツンと当ててしまった。相手は振り返って私の顔を覗き込んだ。

「さっきやったのはあなたでしょ?優先順位が変わったわ。あなたからにしてあげるから」

私は一体何をしているというのだろう。あんな中途半端な攻撃で余計に怒らせるなんてさ。緊張でどうにかしてしまったのだろうか。相手は腰にあったナイフを私の喉元に突き出した。私はただ相手を見ていた。私の命乞いを楽しもうとしているのだろうか。今までにないくらい不気味な笑みだった。私は動かない体を指先だけ動かした。すると、相手のナイフが凍った。相手は明らかにチッと舌打ちすると、笑みを消して私を睨んだ。彼女はナイフを投げ捨て、再び私に迫ろうとした。しかし、突如発生した強い光が辺りを照らすと、影撃ちは脆くなって崩れ、私の体は自由になった。見ると、ツーハちゃんが空中で光を放っていた。そこに同じく動けるようになったシン君が手だけに影を纏わせて相手の背中を殴った。2人が標的になりそうな気がするけれど、大丈夫なのだろうか。相手は2人を見ていた。

「つくづく、諦めの悪い人たちね。大人しく見ていれば、生き残れたかもしれないのにさ。私、本気出しちゃうよ?」

相手はとうとう本気で怒ったようだった。高ぶった妖気がそれを物語っている。シン君とツーハちゃんは並んで立った。それぞれバラバラに動き出し、同時に技を受けると、まるで鏡写しのように同時に立ち上がった。しかし、タイミングはやはりバラバラだ。でも、何度もそれを繰り返していくうちに、だんだんと動きがシンクロしていった。そして、2人が同時に相手に向かって走り出した瞬間、2人は光と闇になり、混ざり合って一つになった。ようやくそれがはっきりと形になると、そこにはシン君でもツーハちゃんでもなく、知らない1人だけが立っていた。シン君の紫とツーハちゃんの水色のオッドアイで、妖気は2人のそれを混ぜ合わせたみたいだった。性別はなんとなく男のような気がする。でも、見た目はどちらかというとツーハちゃんの光狐寄りだった。彼は相手に向かって挑発的に笑ってみせた。

「これで2度目だな。名前、決めておくのも悪くないかもな。あいにく俺は2人とは別の人格なんでな。さっきの可愛い子供コンビだと思ってかかったら後悔すると思うぜ。本気で来てみなよ。じゃないと、お互いつまらないだろ?」

彼は確かに2人とは違った。でも、2人の性格がどことなく残っているような気がする。相手はさらに怒ったようで、影からズルリと大きな蛇を出してみせた。シン君は分身だったけれど、何が違うのだろうか。蛇は大きな体を地面に叩きつけて彼を潰そうとしていた。しかし、彼はそれを光の槍で貫き消してしまった。

「こんな手品で倒されてたまるかよ。まさか、これが本気だなんていうわけじゃないよな?ふう。サクの戦いが役に立ったぜ。お前、気が立ってて今は話してる場合じゃないかもしれねえけど、本当はこんなことするやつじゃないだろ。ブレックジン。最初にその名前を聞いた時はよくわからなかった。だが、それを受けている奴は全員そんな目をしている。解放されたいんじゃないのか?ブレックジンに、打ち勝てよ。確かに俺がお前を倒せば強制的に効果は切れる。だが、今の俺とお前は戦えば同じくらいの強さだ。倒せる保証がない。だから、自分の力で、戻って来い」

話している間にも、攻撃は続いている。本当に、その声は届いているのだろうか。でも、相手すら思いやって仲間にしてしまうその姿勢はライトさんにそっくりで。そこにライトさんに憧れるツーハちゃんらしさを感じた。こちらからは攻撃音のせいで聞こえないが、彼はまだ何かを語りかけている。彼は一切攻撃をしない。ただ、話すだけ。何も知らない人が見たら、あいつは何をしているのだ、と軽蔑するかもしれない。でも、私には彼も戦っているように見える。本当の彼女と一緒に、相手である彼女と。それは周りのみんなもよく理解しているようで、何も言わず、何もしなかった。ただ、彼らを見ているだけだった。相手の動きが鈍くなる。しかし、攻撃をする。でも、少しずつ優勢になろうとしている証拠だった。おそらく、彼は完全に勝つまでこれを続けるのだろう。しかし、それを打ち破る残酷な言葉が聞こえた。

『何言いくるめられてるの。全く、こうなったら、あなたを暴走させて、そいつらを消してもらうわ』

彼女の目から一滴の涙がこぼれた。しかし、急激に妖気が高ぶり、ただただがむしゃらに攻撃をし始めた。これにはさすがにみんなも黙って見ているわけにはいかなくなり、とりあえず攻撃を防いだ。しかし、相手の動きが止まることは全くなく、ただこちらに向かって攻撃をしてくるだけだった。

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