第四部 身近な強さ
今日で、最後なのか。『妖力は消費すればするほど最大量が増えていく』という師匠の言葉を信じ、気絶するまで妖力を使い続ける毎日を過ごした。実際、妖力は人並みになった気がする。死ぬかと思ったけどな。でも、ソウマの方も多分大変そうだった。帰る時絶対ミイラ状態だったから。攻撃力を上げるって言っても、どういう修行してたんだ?まあ、私が知る由もない話だが。とにかく、まずあの師匠が来るのを待つしかない。しかし、すぐに姿を現し、微笑みかけてきた。
「ごめん、待った?ソウマ君に説明してたら遅くなっちゃった。今日は、僕の弟子に勝ってもらうよ。それじゃ、あとはよろしくね」
「はい!師匠!その代わり、僕が勝ったら技を教えてもらいますよ!」
威勢のいい奴だ。あの師匠、他にも弟子いたのか。ていうか、もう迫ってきてるし!私は間一髪で避け、テールハンドを伸ばした。師匠によれば、特殊能力は尻尾の毛を伸ばして手の形にすることで、動かすには妖力が必要だったらしい。でも、今の私にはそんなことを気にしなくていいくらい妖力がある。私は一方のテールハンドを弟子に伸ばした。弟子はそれを上手くいなした。さすがあいつの弟子なだけはある。ステータスのバランスがいい。でも、さっきのやりとりを見るに入って一年あるかないかくらいの新人だろう。なぜなら、特に抜きん出た所もない中途半端な強さだからだ。これから強くなっていくんだろう。弟子は懲りずにどんどん攻撃してくる。私は防御のために風を集中させてバリアのようにした。今までの私にはなかった発想だ。弟子はバテてきたようで、動きが鈍くなった。しかし、やたら攻撃力が上がっている。もしかすると、攻撃すればするほど攻撃力が上がるのかもしれない。だったら、長期戦は避けたい。私はテールハンドを両方伸ばして上から襲いかかった。案の定避けられたが、これで攻撃が止まった。私は竜巻を作り出し、弟子に思い切りぶつけた。弟子は天井スレスレまで巻き上げられ、私が竜巻を解除するとなすすべもなく床に落ちた。弟子は立ち上がったが、すぐに倒れた。一緒ひやっとしたな。
「合格だよ。この子と戦わせたのは、実戦で残り妖力を気にせずに戦えるか確かめるため。ちょっと待っててね」
師匠はどこかに行った。とりあえず、弟子の様子を見に行った。
ダメだ。今日が最終日だというのに、一向に師匠のバリアを破れない。生半可な攻撃では無理だってわかっているけど、僕の攻撃力では歯が立たない。
「もうちょっと頑張ってよね。またミイラになっちゃうよ?」
おかげで、師匠にやられていつもミイラになる。師匠には呆れられているけど、本気でやっている。僕は葉っぱを鋭い刃にして飛ばす。でも、やっぱり無理だ。
「君、力隠してるでしょ?出しなよ、いい加減。別に立派な力じゃないか。そんなに自分の植物が嫌なの?」
ハエトリソウは好きだ。でも、長い時間扱えない。すぐに枯れてしまう。それでも、今はやらなきゃいけないみたいだ。僕はハエトリソウを出した。ハエトリソウはバリアに噛み付く。でも、すぐに枯れていく。
「もっと力を込めなよ。植物に自分の力を渡すみたいに」
僕は言われた通りにした。すると、ハエトリソウはみるみる元気を取り戻し、パワーアップした。僕の妖力は大分無くなったけれど。ハエトリソウは最も簡単にバリアを破ってみせた。僕は慌ててハエトリソウをしまった。
「ほーらね。君は元々、ハエトリソウを使えば強いんだ。最終日になって僕に言われてから気づくなんて、無自覚にも程があるよ。まあ、ここまでわかれば僕は必要ないさ。君は基礎が出来てるんだから」
あっさりと終わってしまったことに驚きつつも、とりあえず師匠について行った。フウワさんもいて、僕を見ると顔を明るくさせた。
「はい、僕の修行はこれで終わり。これ、お土産ね。まあ、僕は基本放置だったから、ソウマ君は強くなった自覚ないだろうけど、次の戦いで確かめてみて。じゃあ、帰っていいよ」
綺麗な水晶玉を渡されたはいいものの、これになんの意味があるのか全くわからず、2人で顔を見合わせた。でも、とりあえずみんなと合流することにした。シン君とツーハちゃんはいなかったけれど、カリちゃんとハス君がなぜかいた。しかも、みんなでわいわいカードゲームをしていた。
「あ、お疲れー。カードゲームやる?」
「お前ら、何してるのかと思いきやカードゲームしてたのか。こんなところでして怒られないのか?他の人もいるだろう」
「いや?そんなことはなかったぞ?意外と柔軟な人たちなんじゃねえの?はい、あがり」
「あっ!俺とハスの一騎打ちじゃねえか!」
多分ババ抜きをしている。それにしても、あの2人ならあっという間に終わらせると思ったんだけどな。フウワさんも一緒にカードゲームをし始めている。
「ソウマもやるか?」
「いや、いいよ」
理由は単純で、やったことがないし、興味もないから。




