表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フォニックス 光と闇  作者: ことこん
第三章 虫好きで孤独な戦士
12/75

第二部 シンのリベンジ

 くっそ。ここが明るすぎる。あいつ、自分だけ木陰に入るようにしやがった。もう少し暗ければ出来るかもしれないが、日の入りまではあと3時間程ある。夏になって日が長くなるのが忌々しい。今までの一本の手では話にならない。せめて2本…いや、違うな。それは甘えだ。目的は『同じようになる』ではなく『勝つ』ことなのだ。俺はより力を込めた。しかし、やはり少しも出ない。妖力はあるし、体力もまだある。一体、俺には何が足りないんだ?相手を見る。虫の死骸を悲しそうに見つめていた。そして、スインが虫を新たに殺すと妖気はより一層強くなった。あいつを高めているのは、一体…。俺はライトを見る。真っ直ぐな目で相手を見続け、妖気はずっと高ぶっている。妖気の高ぶりと、関係あるもの…。全然わからねえ。なんなんだよ!と頭の中で叫んでみれば、一瞬妖気がガンと上がった気がした。まさか、感情の高ぶりに関係しているのか?だとすれば、俺はどういう時に…。そうだった。ケイルと再会した時の気持ちを忘れていた。直接は絶対言えない言葉。お前らに、命を預けるぞ。俺は俄然やる気が湧いてきて、それに応えるかのように妖気もぐんぐん上がっていく。自分の影がより濃いものとなり、そこから這い出るようにして出てきたのは1本の手でも2本の手でもなく、俺の分身みたいな姿をしたものだった。しかし、以前のように俺が思ったことを実行してくれる。それは相手の所まで瞬間移動し、手をいとも簡単に薙ぎ払った。そして、相手を拘束した。それに反応したそいつらは攻撃をし始めた。だが、拘束できる時間にも限りがありそうだ。なぜなら、自分と分身の両方に妖力を使っているわけで、いつもの2倍消費しているからだ。俺は気を抜けば倒れてしまいそうな状態の中、拘束を続けた。しかし、やがて、眠り始めてしまった。俺の名前を呼ぶ声がずいぶん遠くに感じられた。

『俺はお前の分身だ。もちろんお前に文句を言いにきたわけではない。提案をしにきたんだ。どうだ?俺とお前で合体すれば、より強い力を使えるぞ?』

「その話、信じてもいいんだろうな」

『俺がお前に嘘をついてそのせいでお前に死なれたら、1番困るのは分身の俺だからな』

「わかった。試してみるか」

分身は俺と手を合わせた。俺もそれに応えると、視界が真っ白になった気がした。目覚めると、夢を見ていたのかと思ってしまうほど何かが変わった感じはしなかった。しかし、違いは立ちあがろうとした時にわかった。動きがやけに素早く、さらに周りを暗闇で包み、技が出しやすくなった。俺はサッと手を売りかざして地面に勢いよく下ろし、地面を少し割って地形を変えようとしたところ、力余って広範囲に深く割ってしまった。まだこの力への自覚がないが、うまく使いこなせれば確かに強そうだ。俺は相手に近づき、伸びる腕で今度こそしっかりと拘束した。そして、あとは手足を使わせて攻撃させ、徐々に相手を弱らせていった。すると、違う自分が疼く。目の前の相手、いや敵をボコボコにしてしまいたいという馬鹿げたことを考え始める自分が。相手を攻撃する度に強くなっていくその思いは、いつしか行動にも出るようになった。攻撃はより急所を狙った容赦ないに成り果て、もはや説得しようなんてあたたかな雰囲気にはまるでならず、むしろ悪い方へとなっていった。くっ。なんだ、この変な意思は。でも、それで強くなったのはあるが、もう戦っているのが誰かわからなくなった瞬間、誰かのビンタが俺の頬に直撃した。驚いてみると、なぜか馬鹿嬢だった。

「はっ?なんでお前がここにいる」

「だって、人数少ないから心配になったんだもん!しかも、シンがシンに乗ってるみたいに見えるし!おかしくなっちゃったんだから!もう、シンシンじゃん!」

「パンダみたいなあだ名をつけるな」

でも、おかげで我に帰ることができた。そこだけは感謝しておこう。少し悔しいが。馬鹿嬢はそのまま俺から離れて相手の方に行き、光を集約させて棒を作った。この年で固形化ができるのなら、大したものだろう。馬鹿嬢はそのまま相手をポカポカ殴り始めた。一見すると単純で全く効き目のない技に見えるが、今は明るいこともあってそこそこ効いている。まあ、馬鹿嬢から馬鹿女ぐらいに昇格させてやろう。馬鹿女はそのまま棒にハンマーをつけると、ウンモの真似をして攻撃していた。しかし、重くて思うように動かせていない。やはり馬鹿は取れないな。馬鹿女はハンマーを小さく軽くした。威力は落ちたものの、こちらの方が手数が多くなり、体力も消費しにくいからある意味懸命な判断とは言える。俺の拘束が限界になってきた頃、相手は気絶していた。勝負あったと思い、合体をやめると、どこからともなく矢が飛んできたような気がしたが、気のせいだった。…誰かいるな。どうやら、まだ帰らせてはくれないらしい。やれやれ。しつこい連中だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ