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戦友と初陣


 低級アンデッドは、戦いやすい相手だ。

 特に人型のスケルトンはこれと言った特技もなく、武器を持ってないことも多い。

 ただの骨が魔力で結合され、多少頑丈で力が強いといった魔物。


 一対一なら幼少期から武器を使った訓練をする騎士階級の男が、負けることは絶対にない。

 ただし囲まれると危険で、四方八方から手や歯で肉をむしり取られ悲惨な最期を迎えてしまう。

 だから人類はチームを組んで戦う。


 ソルタにも仲間が出来た。

 まずは自己紹介だが、リヒテットが手本を見せた。


「あー、オヤジが失脚して戦線送り。ここで手柄を立てねばお家が危ない、リヒテット、15歳です。特技は高熱魔法弾の”究極超新星(エクストリームノヴァ)”」


 九人の少年が拍手をするが、ありがちだなと言った表情で、リヒテットも反応が薄くて残念そうだ。

 次の少年が口を開く。


「父が先の大戦で片腕を失って、一族で戦えるのが自分だけ。せっかくなので目立つところが良いなと、16歳のシルクレイです。ちなみに魔法は長距離連絡、便利だから頼ってくれ」


 これは境遇よりも能力が評価されて拍手が大きかった。

 魔法で一番簡単なのは魔力を光や熱に変換することで、それと回復系が最もスタンダードとされる。


 それから、王都に居たら当主が参加するのでおまけで、次男なので手柄が欲しくてなど、ありきたりな理由が続く。

 だがソルタの一人前の少年は凄かった。


「14歳のソリュオンです。6つ違う一番上の姉が、ゼルタス隊長の取り巻きで気を引くために放り込まれました。目立つ戦果を上げるまで帰ってくるな、隊長に名前を覚えて貰い、姉のことを思い出すまで戦い続けろと。戦闘用の特技は……ないです」


 皆から万雷の拍手が起きる、部隊最年少のソリュオンが一番悲惨で間違いない。


 三千人の浸透遊撃隊には、王家の近衛第二騎士団、テティシア麾下の東方守護騎士団、元軍事大臣の家からも一団が参加し、精鋭中の精鋭で間違いなかったが、広く募集もしたのでこういう事も起きる。


 ソルタの所属する一隊は、15歳前後の少年ばかり10人の部隊だ。

 指揮系統はゼルタス直下、連絡要員を兼ねた士官候補生といった扱い。

 ただし誰がどう見ても、最初に死にそうなガキどもを集めて保護したようにしか見えない。

 事実、次々と送り出される偵察部隊や伝令に、少年部隊が指名される気配は一切なかった。


「えっと最後になったけど、ソルタです。腹違いの妹の母が参戦するので、自分も出ない訳にはいかないなと。投擲の加速減速と欠損再生までの回復魔法、防御魔法は全周広域、精神阻害系無効、森育ちなので探索系魔法も妨害含めて一通り、武器の扱いはさっぱりだけど前線耐久向きです」


 おお、流石だなという反応があった。

 面倒になる前にソルタの父と母のことは伝えてある。

 出来れば頼ってもらい、皆で生きて帰りたいと思っていた。


「じゃあ飯にするか!」

 

 焚き火を中心に円く座った若者達は一斉にパンにかじりつく。

 分厚く塩辛いベーコンと目玉焼きを固いパンに乗せたもの、炭酸水で割った葡萄汁、丸焼きの野菜が幾つかと皮ごとの酸っぱい果実。

 戦場の夕飯としては最上級だろう、補給は万全で余るほどだ。


 ソルタも若さに任せてがつがつと一心不乱に食う。

 のんびり食ってて敵襲だとなったら後悔しても遅いのだ。

 王都を出て五日、この部隊になって二度目の夜、戦闘も始まっているが、まだソルタの出番はない。

 ただ単に他の大人達が安定して強いのだ、既に雑魚ばかりだが一万体は駆逐している、しかも味方の死者はゼロ。

 大人達の口癖は、油断するなに変わっていた。

 飯を八割ほど片付けたソルタは気付く、野営地が急に騒がしくなったと。


「駄目だ一人やられたっ! もう息がない!」

「取り残された奴がいるのかっ!? 大隊集合おうっ!」


 大人達の叫び声にソルタも立ち上がる。

 残った食い物を両手で口に突っ込んでゼルタスの幕舎へと向かう。

 ソルタは世間知らずで、かつ戦闘にも自信があるが、命令系統を無視して動くほど馬鹿ではない。

 他の九人も続くが、最年少のソリュオンだけがまだベーコンを乗せたパンを持っていた。


「早く食え」と誰かが急かし、ソリュオンは必死で口を動かすが、一番の小柄だけあって進みが遅い。

 十人はソリュオンを中に隠すようにして本陣へと急いだ。

 ゼルタスは直ぐに幕舎から出てきて、少年達を見ると忙しい中でも歩きながら説明してくれた。


「本部大隊で救出に向かう。統制の取れた数千のアンデッドだ、死の士官(デスオフィサー)がいるかもしれん。最悪でも部下の遺体は持ち帰りたいところだな」


 ソルタ達は黙って上官に付いていく。

 馬を繋いである所まで行くと、ゼルタスは立ち止まって振り返った。


「俺の話を聞いてたか? お前らの出番はないぞ。もうちょっと楽な相手を用意してやるから待機だ」


 ソルタよりも先にリヒテットが答えた。


「自分は五等級の灼熱魔法が使えます。死の士官(デスオフィサー)にも止めを刺せるはずです」

「だが当たればだな。乱戦で敵に魔法を当てるのは難しい。上位アンデッドは想像以上に素早いし、味方を平気で盾にするぞ?」

「なら、動きは自分が止めます。リヒテットを護衛しながら接近出来ます」

「ソルタ、お前が強いことは知っている。ただし集団戦の経験はないだろ? いずれ英雄級になると目されてた奴でも簡単に死ぬ、それが初陣だ」

「自分が使ってた最上位の風精霊(ハイエンドシルフ)が、死の士官(デスオフィサー)なら一撃で仕留めました。余裕を持って戦えるはずです」


 馬に乗ろうとしていたゼルタスが止まった。


「……本当か? その精霊はもう居ないのか? うん、フォルミリア様からの借り物だと。お母様方はそれほどのお力があるのか?」

 ゼルタスは即決した、悩まないところが素晴らしい。

「よし、二人は付いてこい。ただし俺から離れるな」

 ソルタ達十人は、それぞれの愛馬の元へ走る。

「うーん、全員とは言ってないのだがなあ……」


 一番近くに居たソルタが代表して答える。


「同じ部隊の仲間だから、初陣も一緒に。だから、今回は全力を出します」

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