パンデミック後の世界にロマンを求める俺と自称エルフ♀の探偵奇譚
祖母に捧ぐ。
俺の名前はササハラトヲル。今をときめくIT企業の社畜だ。手取り16万彼女なし。カートコバーンの享年と同じ27歳。そう、俺の人生は終わっている。
何を隠そう、俺はワンルームでひとり自炊に励むクレイジーサイコアニメオタクだ。今日も今日とて、趣味の都市伝説YouTubeを見ながらポテチを食べている。時間は25時。黄金時間だ。雨が降っている。
俺はJKが好きだ。いや待て、そういう意味じゃない。若さ溢れ、希望に満ち満ちて多分に愚かなJKが好きだ。彼女たちも10年後にはコンビニスイーツを週末のご褒美に、合コンに明け暮れる。そして漏れなく老いていく。そんな残酷な想像を思い浮かべながらPCのモニターを見つめていると、不思議な光が辺りを包み込んでいるのに気がついた。それはやや紫がかった、淡い暖かい光だった。次の瞬間、俺はだだっ広い草原に立っていた。
見たこともない風景だった。どこか懐かしくもある、それでいて異質な匂い。遠くでヌーなのかバッファローなのかが走り去る。きっと自分の居場所を探すキングヌーたちだろう。
不意に、俺は自分が手の中に何か握りしめているのに気づく。それはPCのワイヤレスマウス(980円税込)だった。俺はそれを地面に叩きつけると、おもむろに歩き出した。
どれだけ歩いただろうか。相変わらずの大草原。辟易する。体感では2時間ほど歩いたつもりだが、どうだろう。不思議と喉が渇かないのがそう、まさしく不思議だった。iPhoneで時間を確認すると、コンゴの現地時間で11時。なるほど、ここはコンゴか。どおりでヌーの群れがいるはずだ。ひとりで納得すると、俺は再び歩き出した。それが誤った選択だとも知らずに。
人間の行動には理由が要る。とにかく理由だ。理由があれば多少の理不尽にも耐えられるし、合理的に次の行動について考えることができる。俺は今コンゴにいる。なんでコンゴにいるんだろう。ちょっとよくわかんないなぁ。コンゴ、コンゴ、コンゴとコンゴのことを今後のこともかえりみず、こんこんと根本的に渾身の思いでconsiderしていると、脳内がコングラッチュレーションした。そして、俺は森にたどり着いた。
その森は深く、そう、もうとにかく深くて、やんごとなき森という様子だった。森にはエルフがいる。必ず、だ。必ずエルフはいる。エルフいなかったらどうしよう。暴れる準備はできている。
結論から言うと、エルフはいなかった。そのかわりに、ウサギやバッタとすれ違った。思ったよりデカくて引いたけど、あれはウサギだったな。そしてまさしくバッタだった。俺はどちらも大嫌いだ。
そろそろ腹も減ったし、日も暮れてきている。今日はここいらで野営としけこもう。漱石の草枕を思い出した。暗いなぁ。やだなぁ。蚊とか多いんじゃないか、夜は。
砂場の近くにちょうどいいすべり台があったので、すべり台のすべり台部分の下に腰を下ろした。すべり台のすべり台部分は屋根の代わりだ。これで雨が降っても大丈夫だ。雨で体が濡れると体力が奪われてしまうからな。これサバイバルの基本なり。学生時代、困ったら自衛隊にでも入ろうと思ってたのが功を奏したな。思ってただけだけどね。なんでも繋がっているんですね。
腹が減った。正確に言えば、腹が減ったような気がした。実はコンゴ(仮)に来てから、水も飲んでいないのだ、俺は。よくこんなに歩けたな、と我ながら思う。喉が渇いたような気もする。腹が減っているような気もする。しかし、気のせいかもしれない。なんにせよ、まだ俺は歩けるし、いくらでも生きていける。勘違いだろうが、なぜだか俺は幸せだった。
すべり台の下で夜が明けるのを待っていると、目の前にウサギが現れた。まあそれはデカかった。目は赤黒く濁り、頭にはツノが2つ生えている。クチバシにはビッシリと鋭い牙が生え揃い、4つの漆黒の翼はそれぞれ独立した意志を持って動いているようだった。黄金に光る鞭のような尻尾でこちらを攻撃してきたので、俺は慌ててすべり台の下から飛び出した。
ひゅっという音を立てて襲いくる尻尾は
、容赦なくすべり台を破壊する。ぎゃあっと声を上げながら、すべり台はなす術もなく壊れ去った。闇夜に残るのは森と俺とウサギと血だらけのすべり台の4人だけだった。
月明かりがかろうじてウサギのおでこを照らしている。俺も負けるまいと歯を食いしばり、横綱大鵬の土俵入り(雲龍型)を披露した。その動きがトリガーとなって、自分の丹田に魔力が集約されていくのが分かった。
集中力と敵との程よい距離を保ちつつ、俺は魔力全部をぶつけるつもりでウサギのおでこを拳で殴打した。何度も何度も殴打した。リピートビーティン。こうなったら泣くまで許してやらないぞ!しかし、先に悲鳴をあげたのは自分の拳だった。
「痛い、痛い。もう一旦やめよう!?ね、やめよう!?」と俺の拳が言う。俺はそれを聞いて何をやめるやつがあるか、と思いつつ殴り続けた。気づけば俺の右手は大きく腫れていた。
「私ももう、そのくらいで許してあげてほしいと思うのです。」
森の奥から声がした。声の主の元へ視線を送ると、ほぼ人間と同じ大きさのバッタがいた。
「許してやるだと?」
俺はバッタに問うた。
「そうです。そのダークキマイラをご覧なさい。もう息絶えております。それ以上は非道というものですぞ、王子。」
非道だと? 俺は雨を凌ぐべく、すべり台の下にいただけである。そこをもて、暴力を働いたのはウサギの方である。俺は解せなかった。しかし、バッタの眼力に負けた。おそらく、相当な魔力の使い手であろう。きゃつの複眼は所謂、強者としての矜持を湛ていた。
バッタに近づくと、後ろ足の付け根のところに小さなバッタが、それも幾種もの子バッタが蠢いていた。俺は気持ち悪っと思った。それからはそいつの言うことは入ってこなかった。とにかく気持ち悪かった。おえー。
バッタを血祭りに上げたあと、俺はステータスウインドウを開き、自分のスキルをチェックしようとしたが、そんなものはなかった。
テーレーレーレーテッテーーン。
聞き慣れた宿屋の音楽が聞こえた気がする。
夜が明けた。
血だらけのすべり台とウサギ、バッタ(だったもの)を丁寧に埋葬した俺は再び孤独になった。いい加減、森から出たいものだ。埋葬に時間をかけすぎたのか、もう夕暮れだった。今夜はすべり台もないし、どうしよう。森の奥からは、ギーギーキャーキャーワッワッとおどろおどろしい音がする。
とりあえず火がいる。野営に火はつきものだ。そもそも暗くて怖いんだ。火はいい。古来より人類が信仰する気持ちもわかるぜ。なんか神々しいもんな。
俺は枯れ木を集めようとした。しかし、そこはすごい森で、THE 森って感じだったので、枯れ木などなかった。だからもう、生えてる木を切り倒すしかなかった。なかなか切れなかった。イライラしたので昨晩、ウサギを処した時にドロップしたシャドウダガーに風属性の魔力をエンチャントして切れ味を上げてみた。なんとかキャンプファイヤー出来そうな感じになったな。
でも火がない。さすがに少し疲れた。もしかして体力減ってる?と思って、ステータスウインドウを開こうとしたが、そんなものはなかった。
俺には火が要る。そう、火がなければダメなんだ。とにかく暗いんだ。俺はもう不安で爆発しそうだった。実家に帰っておふくろの焼き飯が食べたいとさえ思った。チャーハンではない、焼き飯だ。あのネギばかりの、コショーの味しかしない焼き飯を、だ。
不意に言葉が出た。
「火よ。」
目の前に明るい火柱が上がる。メ○ミくらいの火力だろうか。俺は慌てて薪をくべた。俺の心と野営に火がついた。革の道具入れからウイスキーの瓶を取り出し、ひと口飲んでみる。クソまずい。雰囲気に流されてはダメだな。俺は下戸だった。マジで調子乗ったわ、コーラ飲みたいわ。
俺には毛布がなかった。ベッドも、もちろんない。一昨日から水も飲んでない。腹も減った気がする。ウイスキーは飲んだが肌に合わぬ。いよいよ俺は死を思った。ゆらめく炎の向こうに自分の運命を呪った。
「もし、旅人の方... 」
背後から話しかけるものがあった。俺はナイフ(闇属性、素早さ補正プラス20)を抜くと、そいつに向けて身構えた。
「そのような物騒なものをこちらに向けないでもろて...」
バッタだった。それも昨日と同じと大きさのバッタだ。昨日からのこいつはなんだろうか。
「わたしの名前はジャン・ピエ... 」
バッタが何か言いかけた気がしたが気のせいだろう。再び辺りは静寂に包まれた。残ったのは血だらけの拳とバッタのような何かだけだった。
夜が明けた。とりあえず、近くの街まで行ってみるか。街とかあんのかコンゴに。コンゴに街はないだろう。バッタとキメラしかいないだろう。
途中、トラクターに乗った農家の方とすれ違ったので、近くの街について教えてもらった。南へ9キロ歩いたところに、テキサスという街があるらしい。なんとも埃っぽい名前だが、何かあるだろう。少なくともコンゴの森よりはマシだろう。
血に染まったトラクターの座席はぬるぬるして、座り心地が悪かった。俺は我慢してテキサスを目指した。
「こんな世界は滅ぼしてやる。」
独り言のように呟き、助手席を見る。返事はなかった。ただのしかば
街に着くと俺のために、ちょっとした歓迎のセレモニーが開かれた。
城門の前の衛士Aが俺にどこからきたのかと尋ねる。とりあえず無視したら、重ねて衛士a(衛士Aよりも少し背が低い男性)が何の目的で旅をしているのかと聞いてきた。目的だと? そんなもん、あればあるだけいいだろうよ。暇潰しだよ馬鹿野郎と言ってやりたかったが、俺は笑って無視した。どうせ伝わらないから言っても無駄だ。空気の無駄使いだ。
そしたら歓迎セレモニーが始まった。武装した衛士A〜Fとa〜gまでが俺を取り囲み、代わる代わる物理攻撃を仕掛けてきた。ある者は素手で、またある者は槍で攻撃をしてくる。
俺はそれを全てかわしながら、どうしてこうなったと少し悔いていた。超絶めんどくさかった。助手席の農家はまだ無言を貫いている。どこまでもシャイな人だぜ。突然鎌を取り出して有り金ぜんぶ置いてきな、と息巻いていた彼の生前が懐かしい。鎌さえ出さなきゃ友達になれたのにな。みんなも気をつけたほうがいいぜ。気になるあの娘とお近づきになりたかったら鎌を持ち出さないことだ。きっとだぜ。
衛士全員(計13名)を炎系の全体魔法で処したのち、俺は近くの宿屋を探そうと街に入ろうとした。門の周りには野次馬が集まっている。彼らは俺に悪魔だの人でなしだのチクチク言葉を投げつけたが、俺はさほど気にならなかった。人がこんなにいる。孤独であるよりも随分良かった。
宿屋に着くと俺は受付の女子に、部屋はあるかと聞いた。何泊のご予定で?と聞かれたので、とりあえず2泊だと答えた。飽きたら出ていけばいいし、とどまるならとどまってもいい。俺は自由だ。自由っていいよな。
住所やら名前やらを書く時に、自分の手の甲に何やら黒い紋章が浮かび上がっていることに気づいた。なにこれ、恥ずかしいんですけど、と思ったのだが、もう浮かび上がってしまってるものはしょうがない。諦めて俺は案内された部屋でくつろぐことにした。ベッドは硬かった。
洗面台で自分の顔を確認した。そこには見慣れた昨日までの自分の顔があった。額には手の甲と同じような黒い紋章があったが、おそらくこれは魔族の証かなにかだろう。ごしごし洗っても消えないのでそのままにしておいた。寝床があるから今日は随分と過ごしやすい。まだ夕方なので、とりあえず市場に出てみようか。何かフルーツ的なものが食べたいな。少しだけお腹が空いた気がした。
宿屋の受付の女子の名前は何と言ったか、聞きそびれてしまった。もはや確かめる術は永遠に無くなってしまった。名前くらい聞いとけばよかったかな。まあいいや。再びどこかで出会えるだろう。
市場は人で賑わっていた。宿屋から借りてきた黒いローブを目深に被り、俺はフルーツを探して歩いた。ローブを目深に被っているせいで足元しか見えない。何度も誰かにぶつかっては、自分の非礼を詫びた。この街に住む者たちはみんな賑やかで明るい。なんだ、てめぇ、このやろう、この3パターンの会話しかできないようだが、陽気な人が多いらしい。誰かにぶつかる度に火柱が上がる。何本か目の火柱を通り過ぎて、やっとお目当ての八百屋さんに着いた。
八百屋のご主人は丁寧な言葉で、お前みたいな悪魔に売るくらいならドブに捨てたほうがマシだ、というニュアンスのことを言った。俺は笑った。ご主人からもらった焼きバナナは甘くておいしかった。でも、甘くておいしかったような気がしただけだ。本当においしかったかどうかはわからない。でも、たしかに少し満たされた気がしていた。勘違いでもいい。俺がそれを実感しているということが大切なんだ。
宿屋に戻る途中にまた幾人かを火柱に変え、ようやっと部屋に着いた。部屋に着くと窓が空いていた。不穏な空気を感じる。確かに閉めて出たはずだ。なるほど、この部屋のどこかに刺客が潜んでいるらしい。しかし、なぜ俺は命を狙われているのだ? 全く意味がわからん。しかし、向かって来られると燃やしてしまう。イライラしちゃうのでね。
「おい、いるのはわかっているぞ。3秒数える。出て来なければこの部屋ごと焼き払う。」
俺は誰もいない部屋の虚空に向けてそう言い放った。余裕を持って20秒数えてみた。
「3秒経ったぞ。もういい、後悔するがいい、野盗よ。」
炎よ、と俺は唱えた。
たちまち、部屋中に炎が広がる。俺は部屋を出た。その足で、王宮へと向かった。
後からわかったことだが、部屋に野盗はいなかった。俺が窓を閉め忘れただけだった。
王宮へ着くとまた衛士がいた。今度は違う衛士Aと衛士aだ。燃やそうとも思ったが、相手は王宮の衛士だ。事を荒げたくはない。この世界について誰かに教えて欲しかった。少し寂しい気持ちだった。
衛士は相変わらず敵意丸出しで俺と接した。彼らが消し炭へと変わりゆくその会話の中で、断片的ではあるがこの世界の情報を知ることができた。
俺がいるのはアフリカ大陸で、この国の名前はコンゴというらしい。んだよ、結局コンゴじゃねえかよと俺は思った。テキサスだと思った町の本当の名前はキンシャサだった。本格的にコンゴじゃねえか、コンゴの首都はキンシャサだよこの野郎。
王様との謁見を力づくで叶えた俺は、王様からまたまた半ば強引に伝説の宝具一式を賜った。魔王討伐のためだ。たぶんいるだろ、魔王くらい。ここは修羅の国アフリカだぜ?
現状の装備を確認しておく。
俺はステータスウインドウを開いた。と思ったらそんなものはなかった。いい加減開けよステータスこの野郎。
手元にあるのは以下の通り。
賢者のローブ
シャドウダガー
ダークキマイラの黒き羽かざり
将軍バッタのタリスマン
超超ジュラルミンの盾
ウニクロの赤いニット
リーべイス517のダメージジーンズ
あとは、王様から賜った伝説の武具一式。
憤怒の兜、隼の脛当て、太陽神の剣、混沌の大楯、金貨五千枚。心もとないが、まあこんなもんだろう。
俺は王都を後にした。燃える王都の火は1ヶ月消えなかったらしい。そんなことはどうでもいい。俺は魔王を討伐に行く。待っていろ悪魔め。
とりあえず俺は森に戻った。結局、誰も俺に世界のことを親身に教えてくれはしなかったな。どこにいるんだ魔王は。そして俺は誰なんだ。
とりあえず俺は森の声に耳を傾けてみた。森からはさまざまな声が聞こえる。心が洗われるようだ。小鳥さん、おはよう。きのこさん、おはよう。木さん、おはよう。草さん、おはよう。たんぽぽさん、おはよう。小石さん、おはよう。小枝さん、おはよう。誰一人としてあいさつを返してくれる者はなかった。
俺はその森に火を放ち、次の街へと向かった。
さて、俺は海に臨む街、アクエーリアに着いた。この街には、古代に滅びた海底都市の伝承があった。海の神ポセイドヌは海の女神ヌンディーネと喧嘩してなんやかんやあって、海底神殿都市を滅ぼしたらしい。とりあえず、俺の目的は魔王討伐である。魔王は陸地にいるのが相場である。魔王城にいてこその魔王。だから海は関係ない。ということで、海底神殿はスルーすることにした。
港の近くで船の荷下ろしを呆けながら見ていると屈強な男が話しかけてきた。
「旦那、見慣れない顔だね。どこから来なすった?」
「お前には関係ないだろう、引っ込んでろよ。埋めるぞ。」
「おうおう、そんなにケンケンしなさんなって。時に旦那、例の噂はお聞きで?」
「うるせぇなぁ。話しかけるなよ。俺は海を見てんだ。お前、髭が似合ってねぇんだよ。」
「おうおう、そんなにケンケンしなさんなって。時に旦那、例の噂はお聞きで?」
「学ばねえ奴だな。知らねえよ。なんだよ噂って。」
「おうおう、そんなにケンケンしなさんなって。時に旦那、例の噂はお聞きで?」
「え、もう馬鹿なの?どうすればいいんだ、こいつ。燃やそうかな。」
「おうおう、そんなにケンケン...」
俺はアクエーリアをあとにした。その日の夕刊には燃える漁港の記事が踊った。人々は天災か、はたまた魔王の襲来かと口々に噂をしたが、すぐに夏の参院選に向けてメディア規制が敷かれたため、世論は沈静化した。
俺は相変わらず、歩いている。
「ねえねえ、ねえってば!」
「なんだよ。」
「歩くの早いよ!」
「うるせぇなぁ、文句言わずについてこいよ」
「何よ、その言い方!」
美奈子は口を尖らせる。
俺はまったく、冗談じゃないぜとため息をつきながら美奈子の方へ向き直った。
「お前がついて行きたいと言ったから、こうして一緒に旅をしてやってるんだ。多少は努力ってものをしたらどうなんだ。」
俺は美奈子に向かって大きな声で言ってみたが、返事はない。
「...美奈子?」
そもそも美奈子はいなかった。寂しさのあまり、イマジナリーフレンドを作ってしまっていたのだ。俺の心は限界を迎えていた。
アクエーリアを出てから、西の砂漠に魔女がいるとのことでそちらへお邪魔することにした。美人だったら両足を焼いて、うちのパーティのソーサラーになってもらおう。きっと楽しい旅になるぞう。
魔女の館は探せど探せど見つからなかった。途中、サンドデスワーム9体、キラーサソリ亜種16匹、ゴンドウスナイルカ22体を処したが、レベルが上がるだけで何もドロップしなかった。怒りのあまり、水の上級魔法ハイドロアクエリアスレインを発動させてしまい、砂漠にオアシスができた。これがのちのモンゴルである。道具屋の親父が隠し持っていた呪文書のおかげだ。ありがとう親父。
いい加減、友だちとか、なんか美女とか出てこんのか。寂しくて死んでしまう。とりあえず妹にLINEしてみようかな。
オアシスで少し休んだ後、また砂漠を歩いた。どれだけ歩いただろうか。20分くらい歩いたと思う。砂漠の真ん中で流砂に巻き込まれているアラビア系美女とその他キャラバンに出くわした。なんやかんやして、その美女を助けると、彼女はアラビア語で丁寧にお礼を言った。近くに彼らのベースキャンプがあるという。そこで俺をもてなしたい、という内容のことを早口で言った。
俺はそれを丁重に断り、先を急いだ。魔女を探さねばいかんのだ、俺は。でもなぜ魔女を探しているのだろう。俺が倒すのは魔王ではないのか。疑問と不安が脳裏を駆け巡る。そこでカーズは考えるのをやめた。
砂漠の途中で、また刺客に出くわした。この前の宿屋は俺の勘違いだったが、今回ははっきりと自分たちは刺客だと言っていたから、マジなやつだ。以下はそのやりとりである。
勇者「見つけたぞ、魔王!よくも神聖なるポポルの森とそのほか多数の街を焼き払ってくれたな!お命ちょうだいっ!」
女勇者「そうよ、この人でなし!私の生まれ故郷、王都エルグレイスまで... 絶対許さない!」
大賢者「魔王よ!そなたがいかに強大な力で我々人類を滅ぼそうと企てても、聖なる力の加護で必ず世界を守りきってみせる!」
伝説の盗賊「俺はよ、特に平和なんざ興味はねえが、魔王を倒せばたんまり報酬が貰えるだろう? それこそが男のロマンってもんだぜ!」
王国の聖騎士「見つけたぞ、魔王!よくも我が故郷エルグレイスを滅ぼしてくれたな!お命ちょうだいっ!」
暗黒騎士「オ、オマエ、タ、タオス...」
俺「ひとついいかな?」
王国の聖騎士「む、なんだ!?」
俺「いや、お前はなんか勇者とキャラ被ってるからいいや。勇者、おいお前、男勇者。しゃべれ。」
勇者「む、なんだ!? 言い訳は地獄で聞いてやるぜ!」
俺「なんでお前も地獄についてくる前提なんだよ。男勇者、お前頭悪いだろ。拳闘士にジョブチェンジしろ。」
女勇者「うるさいわね、ごちゃごちゃと! みんな、いくわよ! 聖なるいかずちよ、かの魔を撃て!ホーリーライトニングサンダーボルトライトニング!」
俺「いたたた、いたい、いたい、いたいって!」
聖騎士「効いてるぞっ!今だ!みんな、畳みかけろ!」
俺「お前、仕切るなよ。いたた、お前勇者とキャラ被ってるぞ。いたた、暗黒騎士何しにきたんだよちゃんとしゃべれ!」
暗黒騎士「オレ、ヨルジャナイト、チカラ、デナイ」
俺「いたた、いたきもちいい、暗黒騎士お前もう帰れよ、いたたた。」
聖騎士「よし、イケるっ!みんな、最後の力を振り絞れ!」
俺「聖騎士、お前、勇者よりも目立つなよ、タンクだろ?キャラを守れバカ、いたた、いたたた。」
大賢者「最後の仕上げです! 究極封印魔法、エンドレスカオスバスターエターナルバースト!」
俺「うん、ダサい!とてもダサい!いたた。封印なのにバスターしてバーストしてる!もう突っ込まないぞ俺は。いたた。」
まばゆい大きな光があたりを包み込む。次の瞬間、天空に大きな光の柱が立ち上った。それは23区外からでもはっきりと見えたという。
聖騎士「はあっ、はあっ... やったか?」
暗黒騎士「オレタチノ、ショウリダ...」
大賢者「大精霊マルドゥスの御加護がなければ危うかったですね...」
勇者「ごめん俺、コンタクトに砂が入っちゃって、とりあえず声がする方に魔法撃ってた」
女勇者「アタシもなんか、故郷のこと思い出したらメンブレして、戦闘どころじゃなかったわ」
俺「俺も砂目に入ったわー。どうしてくれるんだよー。埋めるぞお前ら。」
俺以外の全員「なにぃっ!? まさかあの攻撃で無傷だと!? なぜだ!?」
俺「しらねぇよ、お前らの努力が足りんのだろ。出直してこいよ。消し炭にするぞ。あーあー、こんなに砂だらけにして。絶対責任取ってもらうわ、これは。」
大賢者「ちょっと待ってください! やつのステータスを見てみます! 状態情報開示!」
女勇者「... うそでしょう!そんな... まさか... 魔王のレベルは... な、な、な、73!!」
俺「え、やっぱステータス見れるの? なんだよ、魔法で見るのかよ、言えよー。」
聖騎士「これほどまで力の差があるとは... 」
伝説の盗賊「俺っちは一足先にお暇させてもらうぜ!触らぬ神に祟りなしってな!アデュー!」
大賢者「お、終わりだ... 世界はこれで、滅びる... 」
俺「お前らのパーティ、レベルどんくらいなの?」
聖騎士「お、俺はレベル13だ!」
女勇者「アタシはレベル9よ!」
勇者「ぐすん、ぐすん... もうおうち帰りたい...」
大賢者「私はレベル16である!」
暗黒騎士「オレ、レベル、ハチ...」
俺「お前らさ、なめてるだろ。どこの世界にレベル平均14のパーティで魔王を倒そうとする勇者がいるんだよ。おい、勇者この野郎泣くんじゃねぇ!!」
そうか、俺はいつのまにかこの世界の悪しき王となっていたのか。たしかに理由はともあれ、結果的に多くの罪人を地獄の業火で焼き払ってきたのは事実。彼らが恐れるのも無理はなかった。でも、もっとレベルなんとかならんもんだろうか。RTAとかやってたのかな。
彼らを消し炭にするのは簡単なので、とりあえず色々と話を聞いてみることにした。まずは砂だらけの服をクリーニングに出させた。ふんわりダウニー仕上げで、来週の火曜には取りに行けるらしい。
ジーパンに上裸の俺は幾たびも彼らに命を狙われたが、その都度返り討ちにしてやった。そして約束の火曜日がやってきた。
女勇者「魔王っちはさ、彼女とかいないの?」
オレ「なんだよ、いないって言っただろ。何回聞くんだよ。いたら一緒に旅してるわ!」
女勇者「へぇー、そうなんだー。じゃあアタシ、魔王っちの彼女に立候補しちゃおっかなー。」
魔王っち「なんだよ、からかうのはよせ。エルミラには彼氏(勇者=アーレス)がいるじゃないか。」
女勇者「アイツ、絶対浮気してるのよね。この前なんか、夜中、空間転移の魔法でこっそり抜け出してるの見たし... 」
魔王っち「そんなわけないだろう。きっと影で隠れて修行でもしているに違いない。お前が選んだ男じゃないか、信じてやれよ」
エルミラ「魔王っちってさ、やっぱり優しいよね... 」
魔王っち「エルミラ、その魔王っちっていうのやめない? 俺、一応人間なんだが...」
大賢者ゲントウ「魔王殿、あなたは人間族ではございませんぞ! その王魔の刻印こそ魔族の証! そしてその刻印は、現在確認されている紋様の中でも異形! 2000年前に神界戦役で封印されたと言われる大魔王ギ・サリアドムル・サタニウスでさえ、紋様は胸と額の2つ。貴殿は額、両手、両肩、胸、背中の7つ! そんなもの見たことがありませぬ! 紋様に封じられた魔力ひとつで、大陸ひとつを支配するエネルギーがござる!貴殿の力、使い方を間違えると世界そのものが消えてしまうほどの力があるのです!」
俺「唐突に長台詞... そしてお前変な名前だな。」
彼らと話していくうちにいろいろなことがわかってきた。俺は、魔族であること。強大な力を持っていること。世界を滅ぼす可能性を秘めているので、敵が多いこと。俺のような存在がこの世界にはいること、など。
だから、みんな怯えていたのか、かわいそうに。今度から優しくしてあげよう、村人とかには。
ゲントゥ「魔王殿、お主はその力をもって、何を企んでいるのでありますか!」
俺「魔王じゃないってー。そもそも、何も企んでないんだよ。お前らが勝手に絡んできたんだろう。埋めるぞ、マジで。」
ゲントゥ「ひいいっ!! お許しをー!!」
俺「... お前名前変わってない? 別にいいけどさ」
エルミラ「魔王っちは本当の名前とかあるの?」
俺「ん? 名前かー。ないなぁ。忘れちゃった。」
エルミラ「そうなんだね、思い出せないの?」
俺「うん。思い出せない」
エルミラ「そっか... いつか思い出せるといいね」
俺「うん。ありがとう、エルミラ」
エルミラ「アタシのことはエルって呼んでいいわよ、アンタだけ特別だからねッッッ!」
俺「うん、ありがとう、ほんとなんか、ほっこりしたわ。エルミラ」
暗黒騎士ダイアス「ゴハン、シタク、デキタ... 」
俺「お、ありがとう、今日のご飯は何かな、ダイアス」
ダイアス「ケンタッキー... 」
俺「ケンタッキーか。俺好きなんだよなぁー。10ピースパック買ってきたの?」
ダイアス「ウン、勇者アレスガ、ウーバーシタ... 」
俺「そっかそっか。いつもありがとな、ダイアス」
ダイアス「オレ、魔王、スキ。オレ、魔王、マモル... 」
俺「ははは。お前、守る相手間違えとるぞ。暗黒騎士とはいえ、勇者パーティなんだからさ。しっかりがんばれよ」
ダイアス「魔王、マタ、闇魔法オシエテクレ。タノム」
俺「おう、いいぜ。あんなんでよければいつでも。」
ダイアス「魔王、オデヲ、ホメル、オデ、ウレシクナル。エヘヘ」
俺「お前もっとかしこさのタネ食べた方がいいぞ。もはや暗黒騎士というより、村のハズレの洞窟に封印された知力の低い魔物みたいになっとるけん」
その後、みんなでケンタッキーを食べた。みんなで食べるケンタッキーはとても美味しかった。ちょっと、涙が出そうになったけど我慢した。泣いてるところを見られると恥ずかしいし、心配かけちゃうと思ったから。
すっかり夜になったので、もう寝ることにした。幸い、勇者アーレスが聖属性の魔法「移動式旅行聖駆動車」を使えたので、俺もそれにお世話になることにしよう。2段ベッドが2つずつしかなかったので、6人のうち2人は外で寝ることになる。ここは公平にじゃんけんで決めることにした。
俺は未来予知の魔法が使えるので勝つことは容易だった。いつのまにか盗賊も戻ってきていた。彼は悪びれる様子もなく、ケンタッキーを喰らい、寝床を要求していた。なんかコイツとは合わないな、と思った。図々しい奴って、どこの世界にもいるんだね。
結局、女勇者と勇者が外で寝ることになった。いや、運転席の座席倒して寝ればいいじゃん、キッチンスペースの床とかとりあえずあるじゃんと思ったが、そこはさすが勇者たち、果敢にも外で寝ると言って聞かなかった。レベル9とかのくせに。ここらは夜にデスサンドワームとかサソリとかヤムチャとか出るんだぞ。知らんぞ。
俺たちはベッドに入ってもしばらくは眠らず、賢者と暗黒騎士と聖騎士の4人でUNOをして楽しんだ。未来予知と時間停止の魔法を使ったので、全て勝った。つまらなかった。
なぜこうなったのだろうか。消灯後、少し考えてみた。あまり眠たくはなかった。外は寒いんじゃないかな、砂漠の夜は寒いって聞くぜ。少し様子を見てこようか。俺はブランケットを持って、キャンピングカーの外に出た。
満天の星空。言葉を失うほどの美しさだった。今これを読んでいるあなたにも見せてあげたいほど。綺麗だよね。星ってのは。うんうん。
話し声が聞こえる。
「... なたっていつもそう! ほんとうは修行とか言って、ほかに女がいるんでしょう!」
「僕は勇者だぞ! いつでも修行に励むのが勇者だろう!」
「何よ、アタシの気持ちはどうだっていいってこと!? そんなに修行が好きなら修行と結婚しなさいよ!このあんぽんたん!」
「なにぃ!あんぽんたんだと!? 僕は勇者... 」
「おーい、寒くないかー 」
俺は2人の会話を遮って、近くに腰を下ろした。2人は寝袋には入らず、焚き火の炎に照らされながら体育座りしていた。
「なになにーケンカ??邪魔しちゃったかな?」
俺はわざとらしく、おどけて見せた。これが俺の悪いところだ。いつもおどけてしまう。笑っときゃいいと思ってるからな基本。
「いや、その、見苦しいところを見せてしまったな」
とアーレス。
見苦しいって何よ、とまだまだ不機嫌な様子のエルミラ。
俺はエルミラに眠れそうにないからよかったらキャンピングカーのベッド使ってくれと伝えた。エルミラは返事をせずに、勇者を一瞬睨みつけて去っていった。
「難しいよなぁ、長く旅をしていると勇者様もいろいろあるんだな」
「いや、まあな、難しいというか、僕が弱いのが悪いんだ」
「ところでアーレスはどうして勇者になったの? 何か神託があったとか、予言とか?」
「んー、地元でオーディションあってさ、2個上の姉ちゃんが勝手に応募して、そのままとんとん拍子でさ」
「勇者って、そんな感じで決まるの? え、何か資格とか要らないの!?」
「やっぱり、顔だよね。カリスマだから。ほら僕、金髪だし」
「ちょっと違うと思うなぁ、それは。そこは実力主義でいかないと、世界滅びちゃうんだぜ?」
「僕もそう思う。でも、選ばれたからには実力もつけて、みんなに認めてもらえる勇者になりたいと思うんだ」
「うんうん、まあ、志が高いのはいいことだね。ところで勇者くん、キミは今レベルいくつなの?」
「午後のトレーニングでやっとレベル4に上がったよ。いつまでも僕はヒヨッコじゃないんだ。いつか、あなたに追いついてみせる!」
「レベル4て。 トキワの森で殴殺されるぞお前 」
「そういう魔王、あなたは今ステータスはどうなんだ!? え、レベル239!? なんで!? 同じようにケンタッキー食べてたのに!」
「いや、もう俺さ、分身魔法使えるんだよね。妙禄山でチャクラとおんなじでさ。将軍バッタのタリスマン効果で経験値1.7倍だし。お前がレベル1上げてる午後の間に、北半球すべて燃やしてるからな俺」
「極悪非道極まれり! 今日ほど自分の無力さを呪った日はない! くそう!くそう!」
「まあまあ、落ち着け、とりあえず世界の半分あげようか? 燃えてるけども」
「いらん! 僕は勇者だぞ!勇者は悪に屈しない!」
「それだよなぁ、勇者くん。そこだよ。キミのよくないところは。勇者だからーとか、正義とはーとか、そういうのは分かりにくいし、令和ではウケないぞ。相対論だろう。俺がいるから、関係性として対極に勇者がいる。俺は強いが、キミは弱い。俺は独りだ。キミたちは多数だ。俺は世界を壊す。キミたちは守ろうとする。関係性の話だよ。大きな差はない。俺は壊すかもしれないが、何かを生み出す準備をしているのかも。キミたちは守ると言うが、新しいものを阻んでいるのかも。そういう風に考えたことは?」
「何を言っているかよくわからない」
「いいか、勇者。お前が思っているほど世の中は単純ではないってことだ。しかし、何かと何かを比べた先にあるものよりも、何かひとつ理由が見つかれば幸福だろう。この長い旅路も終わるってなもんさ。それはエルフを見つけることでもいいし、女勇者を愛することでもいい。世界を滅ぼすことでもいい。お前に倒されることでさえもいいと思える。いいか、勇者、お前はきっと俺を殺すんだ。そうでなければならないぜ」
「お前に言われなくとも、僕はお前を倒すさ!」
「そうだ、その愚かさと素直さこそが俺を殺すだろう。でも、時間には限りがあるぜ。俺はいつまでも待つ。きっと俺を殺せよ」
「不思議なことを言うやつだ。殺してくれだなんて、言われなくともそうしてやる」
「それが叶わぬから俺は困っている。お前は果てしなく弱い。そして純粋だ。今はまだ夢を見ている。強くなれ、アーレス。きっと俺を殺せ」
「しつこいぞ魔王、そんなことを言いにわざわざ外に出てきたのか!」
「あ、ブランケット忘れてた。はい、寒いかなと思って」
「あ、ありがとう。めっちゃ寒くて困ってた」
「よかった、風邪ひいたら明日のトレーニングにも支障出るっしょ」
「うん。ほんとありがとう」
「いいよ、でもあれだぜ、エルミラちゃんとは話し合ったほうがいいよ。余計なお世話だと思うけど」
「うん、そうする... 」
「なんで勇者くんはエルミラちゃんと旅してるの?」
「エルミラもオーディションで選ばれて... 」
「ふざけんなよ、魔王なめてんのか。燃やすわキャンピングカー」
「ははは。長く一緒にいるとさ、なんか、こう、いつのまにか彼女ばかり見てる自分に気づいてね」
「いやお前笑ってるけど、今、俺魔力練ってるからな。覚悟しろよ」
「ははは。エルミラってさ、ああ見えてすごく家庭的でね、優しいところあるんだ。俺が先週風邪ひいた時もさ... 」
「お前、先週風邪ひいてんのかよ!貧弱もんが! お前ずっとヘラヘラ笑ってるけど、マジで撃つからな激烈光弾。今思いついたわ。これ激烈光弾っていう必殺技にしよ。必ず、殺すと書いて必殺技だからな。覚悟しろよ」
「ははは。エルミラとはさ、最近ケンカが多くてね。僕はレベル4なので、一方的にボコボコにされるけど。そのあと、仲直りで回復魔法施してくれるんだ。優しいよなぁ、彼女」
「身内でそういうことしてっからレベル上がらねえんだよクズ! ヘラヘラすんな! はい、もうさっきまでのUNOの思い出ごと、ここら一帯を消滅させます。さようなら勇者ご一行様!」
「ははは。そんなことよりさ、明日の... 」
「そのはははっていうのやめない!? ほんとにイライラするんですけど!?」
「悪かったよ、じゃあさ、お詫びの印にこの伝説の武器あげるよ」
「は? お前武器無くなるじゃん」
「いいんだよ、これレベル制限かかってて、僕は持つことすらままならないんだ」
「だからって、なんで俺に渡すんだよ。がんばってレベル上げろよ」
「いや、僕はもう勇者引退することにした」
「どういうつもり!?」
「僕、気づいたんだ。魔王に言われてさ、さっき言ってくれたろ? たったひとりの女が守れずに、世界が救えるかってね」
「間違いなく言ってねぇよ」
「なんか、剣を置いたらすっきりしちゃった。見てくれ、この満天の星空を。僕とエルミラの未来を祝福してくれているようだ」
「バカなんだなコイツは。とりあえずためた魔力を放散させないと。弾けて混ざれッ!」
「うわぁー、流れ星だ! きれいだなぁー!見ろよ魔王! 願い事しなきゃ、エルミラが僕を幸せにしますように... 」
「おいクズ! 茶番終わったら寝ろよ! 俺は天空の城で寝るからな!じゃあな!」
じゃあな、と言うが早いか、俺は天空の城へ空間転移していた。もうなんでもありだな、これは。
しかし、そこは天空の城、もちろん城の主は古代に滅んだオーバーテクノロジーラピュータの民ではなく、神々である。マジの神。海南の神ではなく、ほんまもんのGODである。
いよいよ話は最終章に差し掛かってきたから、一旦お手洗いに行ってきていいよ。待ってるからさ。あ、コーラ僕にもください。
このお話をいただいたのは昨日です。いただいた、というよりも勝手に思いついて、勝手に書き上げたというほうが正しい。なんか、編集後記風にしたくて、こんな書き出しにしてしまいました。仕組みわかってないので、わからないから許されるとかでもないですが、愚かな僕の自由な妄想で、少しでも笑ってくれたら僕は嬉しい。そうです。笑ってほしいんです。