お隣の旦那がどう見てもウサギにしか見えないんだが・・・
「おはようございます」
背広を着たウサギにそう挨拶されたと思ってくれ
叫び声を上げなかった自分を褒めてやりたい
いえね先日、仕事の関係でこのマンションに引っ越してきたんだよ
もちろん会社が社宅として借り上げている部屋だ
うちの会社は転勤が多いからな
引越した当日の夜、隣に手土産を持って挨拶に行った
最初は奥さんと娘さんが出てきたな
娘さんは小学1年生でうちの娘と同じ学年だった
「あなた~、お隣の方がご挨拶に来ましたよ~」
奥さんが部屋の奥に向かって声を掛けると旦那が出てきた
・・・Tシャツとズボンを着たウサギだった
「どうも有鷺です、こんな格好ですみません」
出てきた旦那さんは部屋着のラフな格好であることを謝ってきたが碌に聞いていなかった
この人、自分の事を『ウサギ』って言っているよ!
心の中でそう突っ込んだオレは悪くない
・・・ただ名字の読み方が『ウサギ』だっただけなんだがな
そんな訳でファーストコンタクトは混乱のまま終わった
なお妻と娘は
「(アイドルの)カムタクに似たイケメンね(だよね)」
と言っていたので隣の旦那がウサギに見えるのはどうやらオレだけらしい
次の日、出勤しようと家を出るとお隣の旦那と出会った
それが冒頭のシーンだ
マジで心臓に悪い
隣の旦那と一緒のエレベーターに乗り一階のエントランスに行くと小学生達が有鷺さんの脚に抱きついてきて言った
「「わ~、モフモフだ~」」
・・・どうやら他にも『ウサギ』に見える人がいるらしい
「え、マジ?最近運動不足で太ったからな~」
有鷺さんは困った顔をしていた
・・・真っ白なふかふかの毛で全身覆われているからだと言いたい
空気読んで言わないけどな
そんな精神的にダメージを負う毎朝を過ごしていると娘の父兄参観の日が来た
もちろんお隣だから有鷺さんと一緒に小学校に行った
教室に入ると担任の先生が有鷺さんを見てギョッとしていた
どうやら先生もウサギに見えるようだ
御愁傷様
思わず同情した
そんな私に気が付いた先生が
『あなたもウサギに見えるの?』
と目で訴えてきた
『ええもちろんです』
そういう意味で先生の目を見返した
そうしたら先生がホッとした顔をした
そりゃそうだ父兄がウサギに見えたら普通自分の頭がおかしくなったって思うわな
授業が始まってしばらくすると有鷺さんの娘さんの作文の発表の番になった
「私のお父さんのお仕事はプログラマーです。画面の見すぎで目が赤くなると困っています。」
・・・発表を聞いて思った
ウサギの目は最初っから赤いんだよ!
「お父さんはたまにハンバーグを作ってくれます」
・・・牛や豚は同じ森の仲間
共食いならぬ友達食いじゃね
「お父さんは意外にぶきっちょでキーボードの押し間違いが結構あって、間違うたびにあちゃ~って言っています」
・・・ウサギの手はキーボードを打つのには適さないからい押し間違いは当然だと思う
娘からの暴露話に有鷺さんは両手で目を押さえています
・・・ちょっと可愛いかもと思ったのは秘密です