最終話 ≪君はお色気ラブコメというけれど、僕にはエログロホラーにしか思えない!≫
放課後に女子の部屋へ出向くことになるとは……。
青太はそんな自分の行動に驚愕していた。
昨晩までは、ゾンビ映画に怖がり、さつきの電話に怖がり、ビビりっぱなしの人生だったが思わぬ方向転換がなされたのだ。
「お母さん出かけてるし、気にしないで上がって」
築数十年は建っていると思われるマンションだった。
玄関に入ると、ラベンダーの香りがして棚の上に芳香剤が置いてあった。
スニーカーを脱いだなずなは紺色の靴下でぺたぺたと廊下を歩いていく。
青太は「お、おじゃまします」と言ってなずなの後ろをついていった。
「何か、緊張するなぁ」となずなは笑う。
「ぼ、ぼくの方が緊張してるよ」
「わたしの部屋ここだよ」
と言ってなずなはドアを指さした。
「青太、開けてみて」
「え?」
青太は緊張した面持ちで、ドアノブに手を触れて、ひねった。
そしてドアを開くとそこには便器があった。
「ト、トイレじゃないか…………っ!」
「アハハハハ! 引っかかった~」
「や、やめてよ……」
「うそうそ、こっちだよ」
そう言ってなずなは部屋の扉を指さした。
青太はなずなに手をつかまれて部屋の中に入る。
部屋はホラーグッズがたくさんある。
壁にはホラー映画のポスター。
棚にはホラー関係のフィギュア。
「これがわたしの脳内を具現化した部屋なんだよ。これはわたしの脳内だ!」
青太は叫び声を上げそうになるのをこらえた。
これまではテレビ画面に映る怖い映像にビクビクするだけだったが、今回は3D!
立体なのだ!
「じゃあ、ちょっとさ、トイレの中で待っててよ」
「え?」
「OKって言うまでトイレにこもってて」
「え? 何で?」
しかし、なずなは口を割ろうとはせず、押し込むような形で青太をトイレにこもらせた。
トイレの中で青太は考える。
一体何なのだろうか。
そしてコンコンとノックの音がし、
「青太ぁ。もういいよ。わたしの部屋に入ってきて」
「う、うん」
青太がトイレを出ると、なずなはいない。
青太は何があるのかと心配になりながら、なずなの部屋の扉を開けた。
部屋は暗がりになっている。
どうやらカーテンを閉め切っているらしい。
「…………?」
と、その時だった。
「ヴォエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!!!」
出てきたのはゾンビだった。
が、しかし、そのゾンビは制服を着ている。
「な、なあああああああああああああ!」
と青太は絶叫した。
「アハッハハハハハ! やっぱ青太の反応って面白いなぁ!」
ゾンビはなずなだった。
ゾンビメイクをしているなずな。
「ね、これかわいいでしょ? ゾンビだよ。ちなみにこれ、コスプレなんだけど分かる?」
女子高生ゾンビというのは、昨晩にやっていた映画だった。
女子高生が糖質オフダイエットをやり過ぎた結果、ゾンビになり、痩せている女友達ばかりを食べようとする物語だった。
その女子高生ゾンビのコスプレということらしい。
青太は昨晩のゾンビ映画を思い出し、目の前のゾンビと重ね合わせてさらに絶叫した。
「ひゅおおおおおおおおおおおおお!」
と、その時だった。
なずなはシャツを脱いで、スカートをはずした。
下着姿になる。
「う…………!?」
なずなのふわふわした胸に自然と目がいってしまう。
大きな谷間があり、左胸のところにほくろが見えた。
「ほら、これ、あの映画のラストの女子高生ゾンビの状態だよっ。ねえ、青太、わたしと付き合ってもらえないかな? 一緒にホラーカップルになろうよ」
「え……いや、えええええええ!」
「ハハハ。ほら、これだってお色気って感じでいいでしょ?」
「いやいや、怖いって」
「何が怖いの? お色気ラブコメって感じでイチャイチャしていこうよ」
「僕にはエログロホラーにしか思えないって」
「ありがと」
「いや、褒め言葉じゃないから!」
青太ぁ~! となずなはその状態のまま、青太に抱き着いた。
胸の感触が直に当たり、心臓がバクバク鳴ってしまう。
ゾンビメイクの顔が近くにある。
「うああああああああ、なずなはお色気ラブコメって言うけど、僕にはエログロホラーにしか思えないんだだってば!」
そのまま青太はゾンビから無理やりキスをされる。
「………………………………ッッッッッ!!!!!!!」
(おわり)
【出会い編】が終わりました。読んでいただいた方、ほんとにありがとうございます。
ぜひ、≪★★★★★≫の評価していただけるととても嬉しいです!!
次回からは【本編】(なずなと青太が付き合ってからの日々)を紹介していきます。
楽しんでいただけると幸いです。




