第12話 ≪下の名前で呼び合う(続き)≫
青太は気力を消耗していた。
昨晩のさつきの電話から、なずなとの現在に至るまで、恐怖しては照れて、恐怖しては照れて......。
それの繰り返しで、精神の歯車がおかしくなってしまうんじゃないかと心配になってくる。
青太はこのハンバーガーショップを出て、とりあえず家でひとりゲームをやりたかった。
ゲームをやりながらのんびりアニマルランドの世界に没頭し、イチヂク作りに励みたかった。
話の軌道修正をはかるため、青太は文化祭の1年D組の出し物として決定した『お化け屋敷』の話題に戻すことにした。
「な、なずなは、テーマにしたい映画あるの?」
青太がそう言うと、なずなはニコと笑う。
「よくぞ聞いてくれました。ちょっとマイナーなんだけど、『人体ショービジネス』って映画知ってる?」
「ああ~」
と青太は曖昧な反応をした。
しかし、なずなは勝手な解釈でうんうん満足げにうなずく。
「やっぱ知ってるよねぇ」
「…あ、うん」
「まさにあれをやりたいの。お化け屋敷だけど、展示されてる生首とか手足とかは全部、殺人鬼が調達してきた本物の人体だったっていうアレ!」
「お化け屋敷映画といえばこれだよね」
と青太は心苦しかったが話を合わせた。
「そうだ、心霊スポット行かないなら、映画行かない? それこそ、ホラー映画観ようよ!」
「え、いや、あの……」
「あ、もしかして青太って映画は一人で観たい派?」
「いやそんなことはないんだけど」
「まあそうだよね。いくら何でもわたし強引すぎるよね。ごめん」
悲しそうな顔になったなずな。
こんなに喜怒哀楽を表現する子だったのかと青太は感じる。
その悲しげな表情に青太は申し訳ない気持ちになった。
「そ、そんな強引とかそんなことは思ってないけど、そうだね。映画は一人で観たいかな」
青太はこれを言っておくことで、ホラー映画に誘われることを阻止した。
「じゃ、じゃあよかったら何かDVDとか貸そうか? 結構レアな映画あるよ」
DVD。朝のさつきから渡された例のDVDを思い出す。ホラー映画だと嘘をつかれてケースを開けてみたら、卑猥なDVDが入っていた。
思えばあれがきっかけでこんなことになったのだ。
「よかったら、わたしの部屋見に来る?」
「え???」
「ある意味、心霊スポットよりわたしの部屋の方がホラー指数高いよ」
「な、なずなの部屋にぼくが?」
なずなは青太と視線を合わせながら、目をぱちぱちさせる。
「えーと…………」
青太は返答に困った。
すると、なずなはだんだんと頬を赤らめていき、視線を散漫とさせる。
「そ、そうだ。青太。実はさ、見せたいものあるんだよね」
「え?」
なずなはもじもじと恥ずかしそうに口をとがらせたり、チラチラ青太を見たりする。
「……ど、どうしたの?」
「ゾンビ見る?」
「え?」
ゾゾゾゾゾンビ!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?
どゆことっ!?!?!?!?!?




