第9話 ≪ランチでホラーハウス作戦会議≫
授業終わりの休憩時間が点々と終わっていく。
朝になずなとやったジャンケン以降、青太は2限目、3限目、4限目と負け続けた。
そもそも朝のジャンケンだって青太が勝ったとは言いがたいが……。
そして4限目の授業が終わり、
予定どおり青太は黒板の前まで行って黒板消しで黒板を消す。
クラスは昼休みモード全開で、みな机を合わせるなり、食堂へ行ったりするなりで、一瞬で賑やかな空気となった。
なずなはグループとなっている女子たちで席を合わせて食べるのが常だったが、今日ばかりは違って、黒板消しを終えた青太を待つようにして声をかけた。
「ねえ、やすだっちょ」
「え……、速水さんもぼくのこと、やすだっちょって呼ぶの……?」
「ま、だね。やっぱ、同志はニックネームで呼び合わないと」
「ど、同志……」
「やすだっちょはお昼どうするの?」
「ぼ、ぼくは食堂でパン買って食べるけど」
「どこで食べるの?」
「いや、まあ、適当にどこかで……」
実のところ、青太はいつも食堂でパンを購入し、自販機でミルクティーを買って、中庭やグランドの端なんかを歩きながら食事をとる。
「今日、わたしも一緒していい?」
「え、いや、あの……うーんまあでも、えーと」
「はぁ!? ハハハなにどっち?」
「いや、いいけど」
すると、そこにサダナオもやってきた。
「作戦会議するんでしょぉ~?」
「お、サダナオいいね。そうだよ。ホラーハウス作戦会議だ!」
「…………」
食堂に行って青太はパンを買い、サダナオはチキンカツとビスケットアイスを買った。なずなは弁当を持参していた。
食堂は人でいっぱいだったので、捜し歩いた挙句、非常階段の踊り場のコンクリートの上で食べることにした。
なずなは地べたを気にせず座って、弁当を片手に持って、もぐもぐ食べている。
青太はウインナーソーセージが入った揚げパンをほおばる。
「あ~、うんめぇ~」
と、サダナオは棒状になっているチキンカツとビスケットアイスを交互に口に運んでいた。
「しょっぱさと甘みの究極のコラボじゃ~」
食事を終えたあとは、その場で三人は作戦会議に入る。
「アンケートは、終わりのホームルームでやろうと思う。今出てる案としては、お化け屋敷とたこ焼きでしょ」
「あとぉ、メイド喫茶ぁ~」
「そうだね。それと、やすだっちょが言ってた読書感想文の貼り出しね」
「い、いやそれは、いいよ。却下で!」
「ううん。これでいいの。不正を紛れさせないといけないんだから」
と、なずなはニヤと笑った。
「……え? 不正?」
「うん。当たり前じゃん。背に腹は代えられないでしょ。不正して、お化け屋敷を勝ち取るよ」
なずなはまるでこれこそが正論といった調子で、物おじせずはっきりとそう言った。
そんな様子にサダナオはケラケラ声を上げて笑う。
「あははぁ~、やっぱりなずなちゃんっておもろぉ~」
「わたしが何が何でもお化け屋敷をやりたい。その点、運動部の彼ら彼女らは適当な気持ち・半端な思いで『たこ焼き』と言ってるでしょ?」
するとなずなは右手こぶしで自身の左側の胸を叩いた。
ぽよんぽよんと胸が揺れたのを青太は思いっきり見てしまい慌てて目線をそらした。
「ようは、ここ。彼ら彼女らとは、心の熱が違うのだよ!」
「で、具体的にぃ、どんな感じで不正をやんの~?」
なずなはグフフと悪い笑顔をして、青太とサダナオを手招きする。
サダナオはすぐに寄ったが、青太は恥ずかして近づくことができないでいると、なずなは青太の肩に腕をまわして引き寄せた。
ぐっと三人の距離が鼻差ほどの距離となる。
青太は緊張した。女子二人の体温を感じられるほどに近い距離だった。
そしてなずなはこそこそと作戦を話した。
なずなの吐息が青太の頬に当たる。