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▶桃神の郷  作者: 三坂いおり
93/186

第93話 ▶力量の差

 鬼の襲撃。

 初めこそ観客のあいだに動揺が走っていたが、トロアの宣戦布告によって闘志に火がついた。


「上等だ!」「俺たちがぶっ殺してやる」

「たった三人で何ができるってんだ?」


 血の気が多いのも至極当然。彼らはみな、鬼に強い憎しみを持って桃神郷へとやってきたのだ。いわば仇敵と対峙したようなもの。


「倒す」

 八十人弱の生徒たちが、殺意の炎をジリジリと燃やしていた。


 最前列の男が身を乗り出し、刀を抜いて斬りにかかる。トロアはそれを一瞥すると、スラリとした右腕を前に掲げた。その口元には邪悪な笑み。


「怒りに身を任せてとは、愚か者め」


 見せしめだった。

 トロアは手のひらからエネルギー弾を放出。男はAランクの仮設テントまで吹き飛ばされた。

 規格外の力量に、生徒たちは唖然とする。


「な、なんだよ今の」「からくり……?」「そんな馬鹿な」

「つか、羽生えてるし……飛んでるし……」「お、おい。これってヤベェんじゃねえのか?」


 動揺から怒り、そして恐怖へと感情が移り変わっていく。


「ちょうどいい。桃太郎、百人斬りだ。我こそはという愚か者はこのフィールドに降りてこい。私たち三人が相手をしよう」


 それを嘲笑うかのような戯言。蜂起していた者たちは、ここに来てようやく理解する。圧倒的な力の差に。


「う、うわあああああ!!」


 誰かが叫んだ。恐怖は伝播し、いとも簡単に混乱を巻き起こす。


「に、逃げろおおお!」「逃げるってどこに?!」「ここ山ん中だぞ!?」


 我先にと逃げようとする生徒たち。その様を見て、二つの勢力が動いた。


 まず、自慢の筋肉を躍動させるビドゥ。逃げ惑う彼らを目で追って、狩りでも楽しむかのように口角をあげた。


「追うか?」

「やめておけ。腑抜けに割く戦力など無い。それに、こうして振るいにかけることで効率よく事を運べるというものだ」

「トロア、アンタの話わかりにくいのよ。……つまるところ?」


「骨のある者だけが、この場に残る」


 ワハハ、とビドゥは快哉を叫んだ。

「最っ高じゃねえか。主翼(そいつら)を折っちまえば桃神郷は壊滅。俺たち鬼に歯向かう人間はいなくなるわけだ!」

「ははぁん、強いやつから潰していくのね」


 アンジュは納得したように二度頷いた。

「──まあ、アタシはダァトさえ回収できればそれでいいんだけどね!」



 時と場所を同じくして。

 秘密裏に行動する影が一つ。



「……よっしゃ、これやな」

 Aランク担当の京都人、団花歌である。花弁の髪留めを規則的に揺らすと、彼女は梱包された珠を見つけた。


 フィールドから少し離れた位置にある、桃栗祭本部。委員はこぞってフィールドの方を注視している。無防備な仮設テントの中に、それはあった。


「うちらの祭典に水差したんや。絶対ただでは帰さんで……!」


 ランク対抗戦の優勝賞品。

 弩級からくり、『ゲニウスの守護神』だった。

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