第26話 ▶ネガティブ少女、ディーラーを務める。
あらすじ:情報屋との『決闘』が始まる。
結局、フィールド云々の取り引きはせず、最寄りの『心』のフィールドで闘うことにした。これなら恨みっこなしだ。
「この建物か?」
「うむ、そのはずでござる。さっそく見てみましょうぞ」
外観こそさっきの雑学フィールドと同じだが、部屋の中は白と黒のチェック柄が広がっていた。だまし絵みたいであまり目にはよくないな。
部屋の中央には、テーブルと向かい合うように椅子が二脚置かれている。ワインレッドのテーブルクロスがいかにもカジノっぽく、少々胸が躍る。
「……で、ここの種目はトランプか」
盤上にあるのは新品のトランプケース。箱のくせに無駄に手触りがよく、側面にはMADE IN TOJINKYOなんて書いてある。粋なことしやがって。
「だがトランプといっても何すりゃいいんだよ。ババ抜きなら強いぜ、俺」
「まあまあ、説明はあちらの方にしてもらいましょう」
そう言ってゴシップは壁の方を指す。何気なくそちらに目をやると、さっきの部屋でも見たモニターがいつの間にか起動していた。
『……あ、あのぅ』
ちょっとビビったね。画面に映っていたのは髪の長い着物少女……風音だった。失礼覚悟で言わせてもらうが、シチュエーションも相まって呪いのDVDでも始まったのかと思ったよ。
藍色の着物に縮こまって、風音は申し訳なさそうに口を開く。
『よ、よろしいでしょうか。わたし、今回のディーラーを務めさせていただきます、風音と申します。……な、名前は覚えてもらわなくて結構ですので、さっそくゲームのルールについて説明させてもらいます』
ぼそぼそと言葉を紡ぐ風音。さっきから全然やつと目が合わないんだけど、俺なんか悪いことした?
『今回お二人にやっていただく『決闘』は、ダウト・ジョーカーというゲームです。まず、中を見ていただいてよろしいでしょうか』
俺はケースの封を切って中身を取り出す。
入っていたのは、トランプカードがたったの10枚。それだけだった。
「おい、全然枚数が足りねえじゃねえか。道理で軽いと思ったぞ」
『ひ、ひい。ごめんなさい。そういうゲームですので』
「どうどうですぞ、唯人氏。して、入っているのは1から4のカードが二組とジョーカー二組ですな?」
は、はい、と風音が頭を下げる。
『使用するカードは全部で10枚です。先ほど五四二さんがおっしゃった通り、内訳は1から4の数字と、ジョーカー。これらがそれぞれ二セット用意されています。互いのプレイヤーは計5枚のカードを持ち、ゲームスタートです』
初期手札は固定というわけか。1から4と、ジョーカー。
俺は耳を傾けながら、カードを二組にわけて配る。どうでもいいけどこれじゃ俺がディーラーじゃねえか。
10枚のカードをちょうど同じ内訳にふりわけ、モニターに視線を戻す。
『ゲームが始まったら、お互い手札から1枚ずつカードを裏返して提出します。場に出揃ったら、開示。カードの目が大きい方が勝ちとなります』
「簡易版ポーカーみたいなものですな」
数の大きさ勝負、といえば簡単そうなんだがな。
『使用したカードは勝敗関係なく横に除け、第二回戦スタートです。ここまでの勝負を繰り返し、手札が尽きたら……つまり、第五回戦を終えたらゲーム終了となり、勝ち点が多いプレイヤーの勝利となります』
要は、数の大きさ五本勝負ってことだな。1が最弱なのは言うまでもないが、逆に4辺りはほぼ必勝の切り札となる。
そして、意味深に存在するジョーカー。
風音は一旦言葉を区切り、続ける。
『このゲームにおける肝はジョーカーです。場に出せばどんな数字札が相手でも問答無用で打ち勝つ、まさに切り札です。しかし、ジョーカーとは道化師の一面も持つ厄介者。その姿を看破されたらたちまち力を失ってしまいます』
「看破……?」
「姿を見破るということですかな」
その通りです、風音は短く頷く。
『もし、相手がジョーカーを提出したと推測した場合、各プレイヤーは『ダウト』と宣言することができます。見事それが的中した場合、ジョーカーは消滅。その回は無条件で当てた方の勝利となります』
なるほど。見抜きさえすれば、必勝の最強札をぶっ潰すことができるのか。
「宣言に失敗したらどうなるんだ?」
『え、えっとですね。その場合は普段通りショーダウンとなります。ただし、宣言を行えるのは一度だけなので注意してください』
うーん。もし読みを外したら、その後は確実にジョーカーを通しちまうと。
当たればデカいが外すと無防備を晒すことになる。ハイリスクハイリターンだな。
『大まかな説明は以上になります。……げほっげほっ』
あまり喋り慣れていないのだろう、風音はゼェゼェと息切れしている。
『そ、それで……賭け代はいかがなさいますか』
ゴシップは眼鏡のブリッジを持ちあげる。
「小生が勝てば唯人氏の情報を得、唯人氏が勝てばキビダンゴ3枚とからくりの情報を得る……でしたな?」
「ああ、それで間違いない」
『承知致しました……。では、質問が無いようなら『決闘』を開始してください』
さて。スタートの許可も貰ったことだし、さっそくゲームを始めようじゃないか。
正直、心理戦なんて俺の専門外だがそれは向こうも同じ条件。文句ばかり言っていられない。
俺は椅子に腰を下ろし、ゴシップと対面。やつは手元のカードと睨めっこしている。
「いやはや。初戦といっても、どうしたものですかなあ」
カードは5枚。意表を突いて初手ジョーカーってのも面白そうだが、もしゴシップが様子見の1や2だった場合こちらは大損だ。できることなら、ジョーカーは4……最低でも3のような勝率が高いカードにぶつけたい。
だから、まずは様子を見る意味合いも兼ねて2を提出する。これで情報屋がジョーカーを出してきたら盛大に笑ってやろう。
ざわざわしそうな言い回しで、俺は不必要に小太りな男を煽る。
「いつまで悩んでんだよ、ゴシップ。俺はこの超強いカードで幸先よく勝たせてもらうぜ?」
「いやあ、難しいですな。そんな勝利宣言をされたらこちらも負けられませんぞ」
ふはは、と笑いながらやつも1枚のカードを提出。
……さあ、ショーダウンだ。
なんかそれっぽいゲームが登場しましたが、リアルタイムで適当に考えているので致命的な穴があるかもしれません。
もしかしたら既に似たようなものがあるかもしれません。




