表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
▶桃神の郷  作者: 三坂いおり
172/186

第172話 ▶最終決戦

 とうとうここまで追い詰めた。

 後はトロアをぶん殴るだけだ。



 真っ白な世界を攻撃し続けた結果、床が抜けて気づけばやつの外にいた。ゼキルアーツこそ見つからなかったが、全員で脱出できたのだから結果オーライである。


「さあ、トロア。歯ぁ食いしばれ。最終決戦と行こうじゃねえか」


「……なにが起きたのかはわからない。だが、貴様のせいで計画が台無しになったことは確かだ」


「計画だぁ? 安全地帯から好き勝手暴れ回るのが計画なのかよ。偉くなったもんだな」


「黙れ。こちらにはまだゼキルアーツがある。終わりだ、一方的になぶり殺してやる」


 上半身裸のトロアはゆっくり口を開くと、やつを包み込むように桃型の障壁が現れた。『生力変換』でゼキルアーツのエネルギーを結集させたのだ。


「これで、ダァト。貴様がどう足掻いても私には手を出せない。そして、その隙を狙って……」


 桃が二つに割れると、その隙間からなぜかミサイルが飛び出した。追尾式のそれを『戯岩刀』で振り落とす。


「ば、馬鹿な。からくりが発動している? グッ、先程の爆発でゼキルアーツの機能が失われたのか。……だが、残った無限エネルギーだけで充分余裕はある……っ」


 あ? なんだ。さっきまで発動できなかったような口ぶりである。


「まあ、いいや。篭りたきゃ一生そのバリアの中で過ごしやがれ。こっちは攻めて攻めて攻めまくるぞ。俺の気が済むまでなっ」


 地を蹴り、俺は桃型バリアに斬撃を繰り返す。手応えがない。だが、粘りあいならさっきの足場破壊で履修済みだ。根気強く何度も刀を振るう。


「無駄だというのがわからないのか。貴様も諦めが悪いな」


 トロアは怒りを含んだ声で反撃に出る。斬れば斬るだけこちらへのカウンターダメージも増えていく。赤い液体が舞いあがり、飛沫となって辺りに弾けた。


 知ったことか。ここで退けば今までのすべてが無駄になる。ようやくやってきたチャンスを逃してしまう。だから、絶対に退けねえんだよ。


 刀を握れ。迷いを断て。こんな暴君に好き勝手させていたら、人間も鬼も幸せにはなれない。


「……くどい。くどい、いい加減にしろ。律儀に応戦してやったが、私がなぜ貴様の相手などしなければならんのだ。興ざめだ」


 翼をはためかせ、トロアは上空へと飛行する。あの野郎、まさかこの期に及んで逃げ出そうってのか。冗談じゃない。トロアは端からまともに戦うつもりなんて無かったのだ。


「いい加減にしろ、だ? それは俺の台詞だよ。どこまでも狡猾で、独善的な王様よぉ。そろそろ天罰が下ってもいい頃合いなんじゃねえか?」


「フン、天罰だと。笑わせる。祈りを捧げるなど自らが弱者だと暴露するようなもの。真の強者は祈らない。祈らずして、己が力により、欲しいものを手に入れるからだ!」


「そうかい。だったら強者は俺だったな」


「……なんだと? おい、待て。その手に持っているものはなんだ。ダァト。早まるな、おい。ゼキルアーツが機能を失った今、そんなことをしたら」


 一変、凄まじい勢いでこちらに向かって飛来するトロア。むろん、目的は俺がポケットから取り出した切り札だ。語り手から預かったものの、ゼキルアーツの妨害があって使用を封じられていた、超弩級のからくり。


「やめろぉぉぉぉぉッ!」


「『王ノ主玉』、これで最後だ。トロアの馬鹿面にぶちかましてやろうぜ。……対人間決戦用兵器(ゼキルアーツ)を、木っ端微塵に、ボッコボコに、ぶち砕いてやれぇぇッ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ