第162話 ▶質vs.量
「そうか……トロアがゼキルアーツを」
薄暗い建物の中で、俺たちは情報共有を行っていた。
拓郎は短く息を吐く。
「厄介なことなったね。『生力変換』で他の鬼を自身のパワーアップに繋げるとは」
「ウム。本気でワガハイたちを抹殺するつもりであーるるな」
「で、でも。本土で暴れ回ってた鬼は全部あいつが食ったんだよね? これって、チャンスなんじゃ」
備然が頷く。
「京太郎の言う通りだ。極端な話、跋扈していた鬼どもがいま一箇所に集中している。鬼を根絶やしにする絶好の機会……なんとしてでもトロアを討ち取るぞ」
やつが息巻いたその時だった。見張りをしていた天地が、血相を変えて叫ぶ。
「に、逃げろおおおおおおっ!」
絶叫と同時に響く轟音。向かって左半分の建物が、特急列車でも通過したように消し飛ぶ。トロアが放ったエネルギー光線だ。
幸い全員無事だったが、あんなものに当たったら本当に灰も残らないだろう。
「逃げ……っ」
警告が広がるより先に、第二波、第三波と即死ビームが飛び交う。そんなポンポン撃っていい規模の技じゃないだろ。ふざけんな。
ともかく、まずは建物からの脱出だ。ストリートに出ると、プランKの時よりさらに筋肉の引き締まったトロアがお出迎えをしてくれた。
「お早い到着じゃねえか」
「持っている力は、他者に見せびらかしたいものだろう」
「気持ちはわかる。だが、お前の天下は三日として持たねえぞ」
「ずいぶんとまあ強気だな。雑魚を集めることがお前の作戦か? 私も舐められたものだ。愚か者をどれだけ寄せ集めたところで、圧倒的な力の前では無力であることを教えてやろう」
余裕をかますトロア。その時、すでにやつの頭上を狙う影がいくつもあった。通りに連なる建物をよじ登り、その屋根から機をうかがう同胞たちだ。
「僕に続けっ、『ロビンフッドの悠弓』!」
「「「おおおおおっ!!」」」
高所から放たれる光の弓、炎に雷と攻撃に特化したからくりたちがトロアを襲う。情報共有は済んでいるため、狙うは当然やつの角だ。一点集中。集中砲火だ。一つでもいいから当たってくれよ。
トロアの頭部が勢いよく爆ぜた。
効いたかどうかを確認する間もなく、何重にも火力を上塗りする。高所のやつらは各々の遠距離武器で、地上の俺たちは全員に支給されている『波動グローブ』で攻撃を打ち込み続ける。もはや誰も喋らない。汗を拭うことさえ惜しみ、黙々と敵の急所を穿つ。
あれから何分経っただろうか。体感時間では一時間以上ノンストップで撃った感覚だが、現実だとせいぜい五分程度だろう。破裂音はようやく静まり、視界もうっすらと晴れてくる。
仁王立ちする黒い影。やはり、この程度では倒れないか。それにしてもえらく頭が尖がっているような……。
「ふむ、強度は申し分ないな」
尖っているどころじゃない。トロアは甲冑を纏っていたのだ。上半身裸の上からエネルギーを全身にコーティングしたような、薄紅色の衣。
頭部はがっちりと守られており、あれだけの攻撃を受けてもピンピンしている。
「わかったか? 量とはこのようにして『使う』のだ」
正直、参った。ここまで手応えなしだとさすがに心が折れそうになる。
鬼ヶ島に来て何度目の諦観だろうか。
「さて、どうしたものかね」
寝落ちしてたので更新遅れました。
今さらってかんじですけどね。




