A,C, 2■/1■/■■
私はあの日、あの場所で、貴女と出会った。貴女の赤い瞳は炎を宿し、その赤い髪は燃える魂を表現しているかのよう。
琴の様に奏でられる貴女の声。スピネルの様な優しい赤の瞳。同じ赤でも、情熱的な赤の髪。少し釣りあがった目は射抜くようで、見透かすようで、その目に見られる度に、私は悦んでしまった。
貴女は私を、私は貴女を。その愛は無償であり、無限。貴女から受ける無限の愛で、私の心は簡単に蕩けてしまう。
何故私はこんなにも貴女に惹かれるのか。
何故私はこんなにも、貴女を求めてしまうのか。
貴女が私の名前を呼ぶ。さん付けなのが少し悔しい。貴女の中に居る友人は、さん付けではない。
私は初めて、嫉妬をした。
貴女が向こうの知識を話してくれる。そこでもまた、友人が出てくる。
私は何度目か分からない嫉妬をした。
嫉妬をする度に、貴女が遠くに行くように感じた。でもそれはただ……自分の負い目を誤魔化していただけにすぎない。
リツカはその友人を、”友人”と言っています。私は、大切な人――いえ、愛する人となっていた。
私は初めて、優越感に浸った。
次々に現れる、自分の知らない自分の黒い心。でもそれを、彼女も感じているのを知った。
私はもう、自分の欲情を抑え切れなくなった。
でも、私は、貴女を守りきれなかった。
自分が浮かれていたのを、強く後悔した。そしてそれを、貴女も感じていた事に、私は絶望すら覚えた。
私は自分に、蓋をした。
貴女の弱さを聞く事が出来た。私から切り出す事で引き出してしまった事が、心残り。
でも私は、貴女から弱さを聞けて、嬉しかった。
やっと私は本当の意味で、隣にいける。支える事が出来る。
でも私はそこで再び、逸ってしまった。告白してしまったから。
私は自己満足の、後悔をした。その所為で貴女を、失いかけた。
私は、自分の未熟さを痛感した。だから森まで、気持ちをしまいこむ事にした。
旅を終えた。
全てを払拭出来る。全てを打ち明け、貴女と本当の愛を育む。その為に森に帰って来たのに……貴女と離れてしまった。
貴女が居なかった日々も鮮明に思い出せる。今でこそ思い出話に出来るけれど、あの時はただただ、貴女を欲した。
でも私達は本当の愛を、手に入れた。貴女が帰って来てくれた。
私の左薬指に輝く指輪。私が欲すれば、貴女は私を抱き締めてくれる。私を貴女が欲してくれたなら、私は貴女に全てを捧げる。
私は今日も、貴女に捧げたい。
「――――アリス?」
「はい。今行くわ」
「日記、書いてたの?」
裸で、シーツを羽織っただけのリッカ。扇情的です。なのに表情は幼く無邪気。リッカはいつも私を、狼にさせます。
「本を書こうと思っているの。それで、自分を整理しようと思って」
私はリッカに覆い被さり、キスをする。唇を重ね、舌を絡める。
「んっ……ほ、ん?」
「はい。貴女の、英雄譚」
「えー、恥ずかしい、よ」
足を絡めるように、リッカが二度目を求めてくる。私は再び、長く重ねました。
「貴女と私の日記を合わせ、ぼかして削って、絵本形式にしようと思っているの」
「んー……それ、なら」
今度はリッカから、くれます。私はリッカに押し倒され、全てを受け入れました。
「タイトル、どうするの?」
「それなのだけど……」
リッカの、赤い瞳を見詰めます。
「六花立花、巫女日記?」
「ふふ……英雄譚っぽく、ないね」
「そう、かしら?」
くすりと微笑み合い、私達は――深く、体を重ねました。
リッカと私の物語を語り合いながら、私達は再び旅の思い出に――これからの未来に、おちていくのでした。
ここで完結です。
修正完了 2019/06/21
アルレスィア外伝一部投稿+更新 2019/06/24~
これからもお付き合い頂ければ幸いです。
六花立花巫女日記。ブクマ評価、ありがとうございました!
予定通り、24日の午後に外伝を投稿します。
お手数ですが、小説情報から『六花立花巫女日記 外伝』へとよろしくお願いします。