二人のバイト生活③
アリスさんから聞いたけど、今日浄化に参加してくれた人数は――王都市民約十一万人中二万四百六十七人だそうです。
(そんなに浄化したかな)
私は、一人ずつ。アリスさんは複数人だったとしても……その半分も行っていない気がします。アリスさんはギルドから聞いたと言っていたから、計測して貰った数なのでしょう。
多分、並んでくれた人がそれだけ居たのだと思います。そして実際に参加してくれた人数はもっと少ないはずです。私の浄化を見て……帰った人も居るでしょうから。
(何にしても……)
これが全てというわけではないでしょうけど、王都の人口を考えると『感染者』の数が少ないですね。この世界の人は負の感情のコントロール?が上手なのでしょうか。元の世界だと、全員『感染者』になっていそうですよね。
明日もこれくらいの人数になるのでしょうか。まぁ、私が浄化した人たちは……ちょっと恨めしそうに私を見てましたけど。許して欲しいです。明日は、アリスさんだけでいけるかもしれませんから。
私はまた、給仕です。今日は支配人さんの顔がつやつやでした。儲けは良さそう。今後もよろしくお願いしますと、言ってましたね。
(『感染者』相手に、総当たりっていうのは……)
今回は、並んでくれた人数よりも少なかったようですけど……それだけの人が興味を持ってくれているのです。何れ、本当に何万人も来るかもしれません。別の方法も、考えていかないとですね。
そんなことをぼーっと考えてます。
アリスさんがシャワー浴びて着替えて出てくるのを待ってる感じです。
初めてのバイト、きつかったですね。人生初って、どうしてこんなに疲れるのでしょう。
「リッカさま、おまたせしました」
アリスさんが上がってきました。いつも、この瞬間は落ち着きません。髪がしっとりとしていて、肌は少し紅潮し、甘い香りが漂うのです。
「んーん、大丈夫だよ」
私は平静を装うことに全力を出すのでした。
この時に行う魔力コントロール訓練が一番効果的です。……それに逃げてるだけですけどね。別に集中してないと悶えそうになるのです。
唐突ですけど、お花屋いきたいですね。森を……感じたい。
そういえば、アリスさんと触れ合ってると、森を感じます。”神林”もだけど、”神の森”に居た時を、思い出すのです。
(なんでだろう)
”神林”は分かります、アリスさんはずっとそこにいたんですから。でも、”神の森”まで感じるのは、どうして? んー?
「リッカさま?」
どうやら顔に出てたようです。
「んーとね、おかしいと思うけど……。アリスさんと一緒に居ると……”神の森”を感じるの」
むしろ、”神の森”以上に”神の森”。何思ってるんだろう私。凄く馬鹿っぽいです。
「リッカさまは本当に森が好きなのですね」
アリスさんがクスクスと微笑みます。
「そうだね。森大好きなんだ。初めて”神の森”に入ったときからずっと」
この話するの、初めてでしたね。なんか恥ずかしくって。
「私も、”神林”に入ったときは高揚しました」
「アリスさんも?」
アリスさんも昔を思い出してるようです。私は少し嬉しくなって、声が弾んでしまいます。
「はい。居場所を見つけたような……包まれるような。そんな感じでした」
(え――)
「私も、そんな感じだった」
ここまで一緒になるものなんだ。
同じ巫女で、同じように初めて森に入った時に高揚して、同じ気持ちになって。
「一緒。ですね」
アリスさんが嬉しそうに言います。
その姿に私は疑問を棚上げにしました。
「うん、一緒。だね」
アリスさんと戯れることを選びたかったからです。
じりりりっと音が震えます。何でしょう?
「はい、アルレスィアです」
アリスさんが突然話し出しました。でもその姿は、魔法を使用している証である、銀色の煌きに包まれています。
(これが、”伝言”魔法かな?)
初めて見ますけど、スマホでの通話みたいですね。
「……わかりました。すぐに参ります」
アリスさんの顔が強張りました。これは、準備したほうがよさそうです。
「リッカさま……。もう気づいていらっしゃるかと思いますけれど……出ました。マリスタザリアです。場所は王都から数キロ離れた場所にある小さな町です」
やはり、といったところですか……っ。
「いこう、アリスさん。こうしてる間に犠牲者が出ちゃう」
「――。はい、リッカさま」
私は、準備を済ませ入り口へ向かいます。アリスさんが少し、私を心配するような声音で返事をし、ついてきてくれました。
今日はまだ、終われそうにないですね。
評価をまたいただきました!
感謝です!
これを励みにし、精進いたします!




