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六花立花巫女日記  作者: あんころもち
8日目、剣士としての誇りなのです?
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二人のバイト生活

A,C, 27/03/03



 アリスさん寝顔チャレンジ、失敗。


 もう、寝ずの番をするしか……。そんなことを考えてしまいますけど、アリスさんに……「さぁ、寝ましょう」とベッドに入りながら言われると、逆らえません。すぐにアリスさんの隣にスッと入ってしまいます。


 そして気づいたらいつもの時間に起きているのです。


 ……走ろう。走って疲れて良く眠って、少しでも早く起きられる努力をするんです!


 今日はあの着流し男は居ないようです。ちゃんと忠告を聞いてくれたようですね。


 今日の予定は、まずギルドで依頼の確認。依頼があれば、解決へ。なければカフェバイト初日です。


 しっかりと、私の反省点を考えます。


 アリスさんのことが関わると、どうしても加減が出来ません。でもこれは、正直どうしようもないかもしれないです。私の行動理念の全てなのですから。


 ここを曲げると、私が私でなくなってしまう。私の全てを捧げてもいい、これは本心です。


 だから、私がやるべきは……全力を振り切っても、無意識下で魔力をコントロール出来るように日常で意識すること。


 魔力を発することなく体内をめぐらせ、コントロールの訓練はずっとしています。


 この訓練のお陰か、自分の魔法に対しての魔力消費量は減っています。この訓練は大成功でしょう。


 このまま油断せず、慢心せずやっていきます。


「おかえりなさいませ、リッカさま」


 アリスさんがお出迎えしてくれます。


「ただいま、アリスさん」


 この幸せを守るために、まだやれることは残っています。



 朝食を食べ、ギルドへ向かっています。それにしても、王都の朝の賑わいは圧巻ですね。これが都会の通勤ラッシュ……。


「依頼はあるでしょうか」


 アリスさんが少し不安そうです。


「どうだろう。ないのが、一番だよね。犠牲者が出るかもしれないんだから」


 依頼があるということは、犠牲者が出ている可能性があるってことでもあります。


 いつでも、生まれたてのマリスタザリアに会えるとは限りません。


 私とアリスさんの悪意探知範囲は、せいぜい四百から五百メートルです。しかもこれは、集中しての距離。戦闘中は目の前に集中するので、ずっと下がります。


 そして……離れれば離れる程、違和感程度の感知になってしまいます。信憑性が下がるのです。


 だから、正確にわかるのはせいぜい二百メートルです。私たちに出来ることはあまりにも少ないです。


 だから――。


「やれることを、全力でやろう?」


 アリスさんに微笑みかけます。


「はい、リッカさま」


 微笑み返してくれる、アリスさん。これが私の、力になってくれます。



 ギルド本部にはすでにアンネさんが待っていました。


「アルレスィア様、リツカ様、おはようございます。お待ちしておりました」


 何か直接言わなければならない用事のようです。


「おはようございます。どうなされました?」

「はい、お二人からお聞きしていた。人間憑依型のマリスタザリアの件です」


 対応策を考えてもらっていましたけど、出来たようです。


「『感染者』と一時的にお呼びします。お二人でも分からないとなると、対応が後手になるのは避けられません。ですから、お二人には診察していただきたいのです」


 つまり、医者のように『感染者』疑惑のある方を診て、浄化する。ということですね。


「診察は構いませんが、どちらでいたしましょう。病院ですか?」


 アリスさんから当然の質問が出ます。


「お二方が宿のほうで給仕を手伝うとお聞きしています」


 いつのまに、知られたのでしょう。


「そちらの一角にスペースを設けさせていただけるよう話しをつけました」


 何の気なしに言いますが、仕事速いですね。


 給仕の話も昨日決まったばかりなのに……いつの間に陛下の耳にはいったのか。


「新たに御触れを掲示しました。最近急に怒り易くなった人を始め、急変した方はお二人の住む宿へ診察に行くように、と。最初は忙しいでしょうが、お願いできますでしょうか。報酬は用意しております」


 人間憑依型、『感染者』は、手遅れになれば……殺さなければいけません。そうなる前に浄化出来る可能性があるのです。


「はい、断る理由がありません。ぜひお願いします」


 アリスさんも同じ気持ちです。


「ありがとうございます。本日のマリスタザリア依頼はひとつですが、もう一人信頼できる選任がおりますので、そちらにお願いしようと思っております」


 出来るだけ私達が対応したいですけど、『感染者』も蔑ろに出来ません。


 私たちはこちらを優先させましょう。


「わかりました。ではすぐに宿に戻り準備いたします」


 二人で一礼をして、その場をあとにします。



 戦闘はないと思いますけど、怒りやすくなっていたり、凶暴性が増しているはずです。


「アリスさん、私が対応するね」


 掌底打ちなら、問題ありません。少し痛いだけに抑えますから、我慢してもらいましょう。


「しかし……分かりました。お願いします、ね?」


 アリスさんが察してくれました。


「うん。任せて」


 アリスさんに危険なことはさせられません。


 なにより、アリスさんの槍なら痛みはありませんけど、なかなかにショッキングな映像になってしまいます。


 すでに御触れをみたのか、行列が出来ていました。冷やかしの人も、いくらか見えますけれど。不安で仕方ないといった表情の方の方が多いです。急いで準備しましょう。


「おかえりなさいませ、アルレスィア様、ロクハナ様」


 支配人さん直々のお出迎え。もう慣れてしまいましたけど……そこまで特別扱いという訳では……。


「ただいま戻りました、お話は聞いているかと思いますが、お願いします」

「ええ、もちろんでございます。さぁこちらをどうぞ」


 アリスさんが急ぐように準備を開始します。そんな私達に支配人さんは、給仕用の制服を渡しました。



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