転移63日目 記入日 A,C, 27/04/27
雪、綺麗でしたね。雪兎達との再会も、嬉しいサプライズでした。しかも、樹氷というもう一段階上の光景があるとは。この世界は私の感性を刺激して止みません。
流れる雲は綿飴のように穢れなく、澄み渡る空はどこまでも高い。波立つ海は深く、透き通る。しんしんと降る雪は甘さすら感じられる程で、しとしとと降る雨は温かい。木々は笑い、草花は謡うのです。
自然が、踊る。私はそう表現するしかありません。流れ往く時を、踊るように滑らかに、澱みなく、です。
向こうの世界ではどうしても……滞る。一度滅びかけ、自然が終焉を迎えかけたからなのか……本来の力を持っていません。元に戻るには時間がかかるでしょう。少なくとも私が生きている間は、元の美しさを取り戻せません。
アレスルンジゅとの戦いで私は、欲を知りました。
彼女と過ごす時を、いつまでも、どこまでも、と。共に自然を楽しみ、流れる四季と時を見続けたい。愛したいのです。世界を……彼女を。
さて……明日で最後となります。もうこの日記が濡れる事はないと思っていました。そうする覚悟でした。この日記を書いている姿を、彼女に隠す必要はありません。
本当の私を彼女に晒せる。それは嬉しい事なのです。だって、ずっと隠してた。それが嫌だった。自分が許せなかった。
だから今……涙を流している私も、彼女に見てもらいたいと思っています。
これが私。私の本当。
私は……この世界に……。
ああ、書けません。自分を晒して良いといっても、これだけは、お互い口にも文字にも出せない。
せめて明日一杯……彼女を私へ。明日の日記は、楽しい事だけが書けるように願い……私達は眠るのです。