二人のギルド生活⑨
何か夢を見ていた気がします。まだ私が、何も知らなかったころの――。
「ん……うん……」
目を開けると、アリスさんと目があいました。
「おはようございます。リッカさま」
どうやら、シャワーから戻ったあと、寝てしまっていたようです。
「おはよう、アリスさん」
私は起き上がります。もう体から痛みはありません。
「アリスさんが、治療してくれたの?」
こんなに綺麗に痛みがなくなっているのです。治療されたのかと思い聞きます。
「はい、少しだけですけど……。楽になりましたか?」
アリスさんが照れたように笑い応えてくれました。
「うん。綺麗に疲れとれてるよ」
私も微笑み返します。
「リッカさま、また夢を見ていたのですか?」
「そうみたい、昔の夢だったような?」
アリスさんから指摘されま――って、夢を見ていたのがバレている……。
「……なんか、寝言言っちゃってた?」
前もこんなことありましたね……。
「いえ、寝言はありませんでしたけど。前の時の幸せそうな寝顔と、少し違う幸せそうな顔をしていたもので」
ふふふ、とアリスさんが楽しそうに笑顔になります。
「そんなに顔に出てた?」
と顔を抑え、はっとします。
「……。前の時もそんなに幸せそうにしてたの?」
前の時、なんの夢だったかは覚えていませんが、そんな顔をしていたと……。
アリスさんを見ると、やっぱり慈しむような笑顔をしていて。
「さぁ……秘密、です」
少し跳ねるように言葉を紡ぐのでした。
「私も絶対アリスさんの寝顔、観察するから……」
私は少し膨れてアリスさんに宣言します。
「楽しみにしていますね?」
アリスさんは余裕を崩すことなく笑顔で応えました。
「むぅー……」
そうは言ったものの、アリスさんは私より先に起きてるようです。
私と違って昼寝なんてしそうにないし……もっと早く起きるしかありませんね。
「ふふ……」
アリスさんの笑顔が更にまします。
「? どうしたの? アリスさん」
気になって聞いて見ます。アリスさんは口に手をあて、くすくすと笑ったままなのです。
「いえ、そんなに、私の寝顔を見るために真面目に計画を立てているので……つい」
「だってぇ、私だけ見られてるなんてズルいよぉ……」
アリスさんの、笑いを堪えた表情に、私は頬を更に膨らませました。
「ごめんなさい。リッカさま」
アリスさんは笑顔で、私の膨れた頬を指で押します。
「ぅ――。もう」
私は思わず笑ってしまいます。
「さぁ、リッカさま。今日の晩御飯を買いにいきましょう?」
アリスさんが微笑みながら立ち上がりました。
「うん、今日は何にしようか」
私も起き上がります。
「そうですね……。なんにしましょう?」
アリスさんが思案しながら私に尋ねます。
「市場で見ながら考えよっか」
「はいっ」
二人で微笑みあいながら、市場へ向かいます。