転移51日目 記入日 A,C, 27/04/15
一つずつ、整理しなければいけません。
今日はウルで、クロジンデさんの説得を行いました。結論から言えば、成功です。ウルも被害は無く、クロジンデさんも前向きに生きてくれる事になりました。
そこでドラゴンと戦い、魔王と邂逅を果たし……魔力の消耗は激しいものでしたけど、問題はありません。むしろ収穫の方が、多かったんです。ドラゴンの正体は大虐殺の被害者達です。私達の覚悟を確かめるために、挑んできたのです。二度と同じ悲劇を繰り返さぬようにと、願ったのです。
成し遂げられるか分からない問題ですけど、出来る限りの努力をする事を……改めてここに誓います。
そう、自信を持って書けたら良かったのに、と思うのです。不条理な死が、目の前で突然行われました。
儀式です。神さまへ捧げるのだと言っていました。
白骨化したという森で起きました。白骨化は、とある薬品によるものです。水、土、果実が汚染されていたのです。それを体内に入れた人の体は草花、木と同様に白くなっていました。最期には、錆のようになっていたのです。
これは、初期段階でも治せるかは……彼女でも自信がないという、難病です。正確な診察をしなければいけないのに、させては貰えませんでした。それどころか、儀式を最期まで、止める事が出来なかったのです。
私は生贄となった女性を、見殺しにしました。正確には見殺しというのは間違いなのかもしれません。何しろ女性は末期で、どんなに手を尽くそうとも助けれる事は、出来なかったのですから。
だからといって、何もしなかった事の言い訳にはなりません。私は足踏みしたのです。あの場で何かをしても何も変わらないという事で、手を出す事をしなかった。
私達があの村で出来た事は、女性の最期の言葉を聞く事だけでした。そして村の方達に追われるがままに、村を後にしました。
病の特性は、熱により進行が早まるという事です。儀式により炎を囲んでいました。病により発熱する体を冷やす事も、神への信仰心により、決まった時間にしか水を飲まないという掟により出来ません。
治療した後、水場を新たに作り、食事も森由来の物以外にしなければいけません。でも、あの人たちの心を変える事が私には出来ませんでした。
元々”巫女”を嫌っていた人達ですけど、私の説得が間違いだったのでしょう。神さまが侮辱されているような気がして、感情的になってしまいました。神さまが望んでいるといわんばかりに、神さまの為だというあの人達が、私は許せなかったのです。
事態は一切変わっていません。私達が介入する前と後、あの村には一切影響がありませんでした。……変えられ、ませんでした。皆を巻き込んでしまいました。
中途半端な正義感が一番厄介な、私の悪い癖なのでしょうか。それでも救える命があるならと、抜け道を見つけては首を突っ込んでいました。でも、私は何もしない方が良いのでしょうか。
彼女に……皆に、負担を強いているだけなのではないでしょうか。
それでも、やらなければいけないのです……。
船に戻り今日の活動を終える前に、もう一度森の水源に行ってみました。そこで詳しく成分を見てみると、薬物が浮いているのではなく、湧き出ている事が分かりました。元を断たねば、この水を取り替えても意味がないという事です。
まだ明日やらなければいけない事があります。魔法嫌いのままのケルセルガルドの人達に、病の事を伝えなくてはいけません。元も、断ちます。それしか私が、私で居る道はありません。
彼女達にかけてしまった負担は、私が解消します。救える命を救う行動を……します。