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六花立花巫女日記  作者: あんころもち
6日目、私は弱かったのです
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二人のギルド生活⑤



 戦闘が終了し、治療を受けている間に医者がきました、きっと、衛兵が呼んでくれたのでしょう。


 説教というなの心配を受けましたけれど、ばっちり皆に見られていました。私はこの世界にきてからカッコよく決められたことがないのではないでしょうか。


 医者より先にアリスさんが私をすぐに治療を開始してくれていたので、医者の方たちには申し訳ないことをしましたけれど、アリスさん以外がやっていたら傷が残っていたかもしれません。

 

 今は、牧場の監視に残っています。ギルド本部の人が来るのを待っているのです。それにまた、マリスタザリアが発生するかもしれないのですから。


「アリスさん、あのマリスタザリア……」


 最大の問題が残っています。


「あの殺意の塊みたいな魔法は、マリスタザリアがやったのですか……?」


 アリスさんの疑問ももっともでしょう。動物が人の言葉を発し、想いを込め、魔法を放ってきたのですから。


「あんなこと、あるの?」


 私は、思い出します。完全に、油断していました。撃ってくるなんて、思わなかった。


 体が震えないように必死に抑えます。


「最初は、聞き間違いだと思ったの。でも……はっきりと言葉を発した………私への、殺意だけで……魔法を発動した」


「マリスタザリアほど……強力な魔法を発現できるのはいないでしょう」


 アリスさんが、私の手を握ってくれます。


「魔法は強い想いで発動します。強ければ強いほど、より強力な魔法を……混じりけのない殺意によって放たれる魔法の威力は……私たちが体験したとおりです」


 アリスさんが目を伏せます。盾に水を付与しなければ押し負けていた。と、――っ


 それはつまり、アリスさんが危険だったということです。私を守るために、また……。


「これから先、もし魔法を使うマリスタザリアが出るようになれば、犠牲者は増えるでしょう」


 私たちが、やるしかありません。


 光の魔法は有効でした。悪意に汚染されたばかりの人の浄化はできました。一時的な効果とはいえ、光で動物型マリスタザリアを浄化できました。


 私たちが……。私、が……っ。


「すぅー…………はぁー…………」


 私は、深呼吸をします。そして、いつもの顔に戻ります。


「今回も、危なかった。アリスさんが居なかったら、私死んでた」


 本当に、危なかったのです。アリスさんが、私を守ってくれなければ、死んでいました。


「私は、無自覚に……自分の力を過信してしまっていた」


 これが、一番の失態。私は、アリスさんを守ると言っておきながら、危険に晒したのです。


「私は、まだ全然弱い」


 一人では、勝てなかった。これでは、守れません。アリスさんをまた危険に晒してしまう。


「アリスさん」

「はい、リッカさま」


 だから――。


「抱かせて?」

「はい。リッカさ……え?」


 返事を待たずに、アリスさんを抱きしめます。


「り、りりりリッカさま?」


 アリスさんが困惑していますが、今は離せません。


「アリスさん、暖かい。この温もりを、守りたいの」


 強く自覚するために、私が二度と驕りで目を曇らせないために。アリスさんを、私に刻み込むように。


「アリスさんを、守りたい」


 自分に言い聞かせるようにして。


「……」


 いつしか、アリスさんも抱き返してくれていました。私は、気づいていませんでした。また、私は……涙を流していたことに……。アリスさんは、気づいて、いたのでしょうか。



 抱きしめ合いから、寄り添う程度になった頃、人が近づいてきました。


「大変お待たせしました。ギルド本部より遣わされたものです」


 その声を聞いて、ゆっくり、アリスさんから離れます。


「はい、こちらです」

「マリスタザリア討伐の連絡を受け、参りました」


 私が応対します。アリスさんは、今はちょっと、動けないようです。死体の確認、牧場の人への聞き込みで討伐認定を受けます。


「確認いたしました。お二人の評価を上へ伝えます。明日には選任冒険者認定書が発行されると思いますので、明日の正午にギルド本部までご足労願います」


 どうやら、もう決まったようです。


「はい、ありがとうございました」


 アリスさんが、まだ頬を少し染めたままですが復活しました。


「ごめんね、アリスさん無理やり……」


 自分の勝手な誓いのためにアリスさんを抱きしめてしまいました。怒られても仕方、ありません……。


「い、いえ。リッカさまにならいくらでもっ」


 それは、かなり際どい発言ですが、そんなアリスさんが可愛いのです。


「ありがとう、アリスさん。私もアリスさんにならいくらでもいいよ?」


 そう言って笑顔で手を広げ受け入れの態勢をとります。


「い、いまは……」


 アリスさんの頬がまた、最高潮に赤くなります。


「で、では私は、ここで」


 そういえば、ギルドの方がいました。アリスさんの事となると視野が狭くなる傾向があります、これは気をつけないといけません。


「ご、ごめんなさい。ありがとうございました」


 私は急いで一礼して、お見送りしました。



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