二人のギルド生活④
”拒絶の光”。悪意への絶対の力かと思われますが、一部を剥離、浄化できても……すぐにマリスタザリア体に戻ります。
悪意が根付いてしまった相手には、隙をつくるくらいの魔法。アタッカーがほかに居る場合に、効果を発揮する援護魔法らしいです。
アリスさんは、一つだけ敵を倒せる攻撃魔法を持っています。でもこれは、一日に一回でも使えば、魔力をほぼ使い切ると聞いています。
できるだけ私が戦い、アリスさんが防御、回復。これが、理想なのですが、現実はうまくいきません。
「いいですか、リッカさま。無茶を、しないでください……。もっとやり方があったのではないですか……? 到着後剣を持ち替え、私に夢中だった敵を後ろから斬ったりですね。あんな目の前に出てくる必要はなかったのではないですか?」
ただいま私はアリスさんからの説教? 心配されてます……。
「……アリスさんが盾張ってたけど、アリスさんが殴られて、苦しんでるのみて……我慢、できなかった」
私は、少し落ち込みつつも言い訳します。
「目の前に出て行けば、アリスさんから私にターゲット変わるだろうから……飛び出しちゃった」
私はアリスさんがあの時襲われてるのを見て、きれちゃったんです。それはもう、かんぜんに。
「~~~っ。コホンっ……ですけど、それでリッカさまが傷ついては意味がありません」
そう言って、私の怪我があった場所を撫でながらアリスさんは、自分が傷ついたように顔を歪め……呟きました。
「……ごめん」
そんなアリスさんを見て、言い訳していた自分が恥ずかしくなって……謝りました。
「私の治療がもっと、便利なら……」
アリスさんが自分を責めます。でもそれは、違うと断言できます。
私の顔の傷は、街の医者が見た限り、顔を歪めるほど深く切れていたようです。あの出血でしたから、もしかしたらとは思っていましたけれど……。
そんな傷を、アリスさんは痕すら残さず治してみせました。それも……三分もかからず。
ただ、アリスさんに限らず、”治癒”魔法は集中し続けないといけない上に……治療中はほかのことが一切できません。何より、触れていないとダメなのです。
人に魔法をかけるというのは、それだけ難しいのです。
どれくらいかかる傷か、戦闘中はわかりませんでしたけど……一分以上はかかるだろうと思っていました。
それでは、敵に攻撃されます。
だからあの時の判断は、間違ってないとは思ってます。私が怪我を負い、アリスさんを心配させたこと以外は……。
「ごめん、アリスさん。私、アリスさんをこんなに心配させて……」
私を撫でていた手に、私の手を重ねます。慈しむように、アリスさんの手を撫でます。
「怪我、治してくれてありがとう。戦う以上傷ができるのは仕方ないけど……。その傷すら残ってないんだもん。アリスさんの回復魔法、すごいよ。それに……一応私も、女の子だしね」
顔に大きな傷残ってたら、流石に、落ち込んだかもしれませんね。
「一応、なんかじゃありませんよ……」
アリスさんが搾り出すように声を出します。
「一応、なんかではありません。リッカさまも女の子です。ですから……っ、傷は絶対残しません、よ?」
笑顔でしたが、それは少し無理をした笑顔でした。
その顔に疑問はあります。でも……。
「ありがとう、アリスさん」
私は笑顔で、応えるのでした。
「コホンっ……うやむやになるところでしたが」
どうやら、話を変えるのは無理だったようです。
「……私も、悪いところがありました。リッカさまも、反省点があります」
アリスさんが、少し恥ずかしそうにして
「ですから……、おあいこ。です」
はにかむような笑顔で、そういってくれるのでした。
「――。うん。おあいこ。だね?」