転移49日目 記入日 A,C, 27/04/14
今日は……いえ、昨日は、ですね。今は朝です。朝の修行は免除となりましたので、彼女にお願いして何時もの体勢で日記を書く時間を貰っています。
さて、何から書くべきか……。
とりあえず、自分の調子から、ですね。
結論から書くと、ピンピンしてます。腕の腱を思いっきり斬ったのですけど、しっかり動いてます。後遺症もありません。彼女の、お陰です。
その事で、日記を書く前に怒られてしまいました。自傷行為です。こんな事、彼女の逆鱗に触れても仕方ありません。顔を赤くして、私の目を見てくれませんでした。本当に、怒らせてしまったのです。どうにかして謝ろうと彼女の正面に立ったり、後ろから抱き締めたり、前から抱き締めたり、ベッドに押し倒してみたりしました。どれも不発で、一言も発してくれなくなりました。
ちょっとだけ、本当にちょっとだけ泣きそうになりました。というより泣いたかもしれません。彼女が私の目を拭って、怒りは収まっていて、別の意味で少し、私の顔を見るのが恥ずかしい、との事でした。どうやら、私の考えすぎだったみたい、です。
良かったと思うと同時に、脳裏に過ぎったある光景に私も赤くなりました。夢、だったのだと思います。彼女が私のおでこに、キ……キ……接……っ! ううっ……。まどろみの中で彼女に何か口走りそうになった事も、夢ですよ、ね? もし本当だったとしたら、残念です。ちゃんと目を見て……意識があるときに……したかっ……出来る、でしょうか。日記を書く姿すら見せられない私に……。
い、今は、そういった事にかまけている場合では……ないのです。
そうです。私が自傷行為を行うきっかけである、ゴホルフ……魔王の幹部との戦いです。
もう、時間はかけていられません。
魔王は私たちを完全に敵と見なし、用意周到な作戦でもって襲ってきました。はっきり言って、これ以上時間をかけると、また策に嵌りそうで焦っています。
私は確かに、【アン・ギルィ・トァ・マシュ】を手に入れました。”強化”も”抱擁”も、進化しました。”光”だけは変わってませんけど……。とにかく、強くなれました。
ライゼさんだって、帰って来ました。まだ会えてませんけど、命に別状はないそうです。
約束も果たせました。後は残りの幹部に気をつけながら……魔王を倒すだけ。そのはずです。まだやるべき事はあれど、それだけなのです。
なのになんでこんなに、私は……。
一歩を踏み出せた。色々な意味でそう思います。でも……油断も喜びもしません。魔王を倒すまで、気を抜けないのです。