二人の王国生活
最初は緊張気味にナイフフォークを使っていました。けれど、初めて見る料理や食材に舌鼓を打つうちに、テーブルマナーに気をつけていた事すら忘れ食べていました。
アリスさんは笑顔で私を見てますし、陛下も渋い顔になっていないので、大丈夫です。たぶん。
「こんなにもおいしそうに食べていただき、料理人たちも喜ぶでしょう」
嫌味、ではないと思います。でも恥ずかしくなるのは仕方ありませんよね。
「ふふふ、リッカさま。こちらもおいしいですよ?」
すっかり、アリスさんの中では腹ペコキャラになってしまった私なのでした。確かにおいしい料理でしたが、アリスさんのスープが一番でしたね。何が違うんでしょう。愛情? 自分で思って、顔を更に染めてしまいました。
食後、王宮の見学をさせていただきました。でも……まさかここまで何もないとは。生活に必要なもの以外はほとんど処分されており、王宮というよりは……市役所、ですね。部屋ではどこもお役所仕事をしているように見えます。
「見学を勧めはしましたが、本当に何もないのです。申し訳ございません」
陛下が申し訳なさそうにしています。
「いえ、こういった石造りの建物を見るのは初めてなので、それだけでも楽しいです」
にこやかに私は言います。私もアリスさんも、自分たちの居た町、集落以外を知らないのですから。
「そう言っていただけて、助かります」
陛下自ら案内を買って出るとは、思いませんでしたけど。
「即位直後は沢山あったのですか?」
アリスさんが質問します。先王は暴君で、多くの国民を苦しめたといいますし、やはり無駄に豪華だったのでしょうか。
「はい、至る所に高価な彫刻や絵画が飾っており、雑多な様相を極めておりました」
簡単に想像できますね。よくみれば、壁や廊下にはその時の痕跡が残されています。
「それら全てを、売ったのですか?」
国の財政はボロボロであったでしょう。それらを立て直すための資金にしたのでは、というのがアリスさんの考えです。
「いえ、どれも価値は本物であり、貴重なものばかりでしたので」
そういって陛下が街を一望できるテラスへ案内してくれました。
「あちらの美術館に展示しております。無料開放しておりますので、お暇があればどうぞご覧になってください」
売ってはないのですね。お金には困ってなかったのでしょうか。
「先王が無駄に税を課し、資金は多くありました。それらと、現在の税で財政は十分整っております。もし困った場合に、あれらを売ろうと思っているのです」
私もアリスさんも納得します。
「この国も豊かになってきております。このような時に魔王が出現するとは……」
陛下が沈痛な面持ちでつぶやきます。
「どうか、民を救ってください」
陛下が頭を下げます。
「はい、お任せください。そのための私たちです」
アリスさんも私も、気持ちは一緒です。
陛下に別れを告げ、門を潜り街へ行きます。
「先に宿をとりましょう。場所はお聞きしてますので」
「うん。わかったよ。その後、食品みにいこ?」
約束していましたからね。
「はい、リッカさま」
アリスさんの笑顔が見れるだけで、約束したかいがあるというものです。
「リッカさまも見たいものがあるのではないですか? 街を歩いている時、目が留まっていましたけど……」
そして、アリスさんには私のことがバレバレです。
「武器屋を、見てたんだ。刀をどうにかして調達したくて」
刀と”強化”の魔法、”精錬”。そして……一つの可能性。これがあれば、もっと戦闘が有利になるはずです。
「――はい、では後ほど参りましょう」
アリスさんが少し緊張に顔をこわばらせますが、すぐに笑顔になって応えてくれます。
「うん、ありがと」
目的は物騒ですけれど、アリスさんとの買い物に胸が高鳴るのを、押さえきれませんでした。
私たちの王国生活が、ちょっとだけスタートします。




