表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
六花立花巫女日記  作者: あんころもち
44日目、荒れるのです
624/934

転移44日目 記入日 A,C, 27/04/08



 オルデクで昨日の後処理をした後、犠牲となってしまった子達の為のお墓を作りました。遺された子達は、そのお墓の前で、一体何を想ったのか。私には分かりません。それでも、前に歩いてくれると信じています。


 シーアさんは、助けたクラウちゃんといつの間にかぐっと仲良くなっていました。ただ笑い合える友人は、シーアさんにとっては珍しいものであり、新鮮な気持ちに戸惑っているようでした。


 オルデクでの出会いは、私達にとっては良いものであり、再び旅を続ける私達の背中を押してくれました。皆さんが笑顔でいられるように、頑張ります。


 オルデクで、彼女お手製の服が出来上がりました。赤を基調に白のライン。露出と密着度を下げ、動きやすさを重視しつつもお洒落な感じです。この世界ではまだまだ派手な色ですけど、私はすごく気に入っています。これを着て、最期まで頑張ります。


 と、思っていたのですけど……まさか、初日に血をつけてしまうとは思いませんでした。

 次の町であるエアラゲ。そこで二つの国の重要人物と出会う事となりました。最初はカルラさんとエンリケさん。東の大国、オステ皇国の皇姫様と元皇子様です。カルラさんは本当に、本当に良い人でした。


 出会ったばかりの私達を逃がすために、もう一つの国の者の囮を買って出てしまうほどの優しさです。もちろん断りました。そんなカルラさんを犠牲に逃げるなんてありえません。


 何よりあの、連合の豪族は私の想いに手を出しました。今でも思い出すだけで腸が煮えくり返ります。


 決闘を行い勝利を飾ったものの、そこで起きた事は頭を抱えるには充分すぎました。


 狙撃銃の存在と、狙撃手の登場です。考えていた通り、私は初撃をたまたま避ける事で事なきをえました。

 もしかしたら私はあの時――死ん、で



 カルラさんはシーアさんと特に仲良くなりました。似た者同士、息の合ったコンビです。シーアさんも、クラウちゃんに次いでカルラさんとも友人になれて嬉しそうでした。弄る時以外ではしゃぐシーアさんは中々見られません。


 またいつか会いたいですね。私たちも気に入ってもらえたようで嬉しいです。妹であるカルメさん捜索を手伝う約束をしましたし、しっかりと遂行します。


 皇国にも、いつか行けるでしょうか。連合には少し、行きたくないって思ってしまいましたけど……。


 彼女からの今日のお願いは、カルラさん達との昼食会で、食べさせ合いっこをする事、でした。お願いを使ってでもして欲しいという彼女の我侭な一面は、私にとってはすごく新鮮に思えて、張り切っちゃいました。強引な彼女も、すごく良いです。引っ張っていってもらいたいって思ってしまいます。私は彼女の王子様であり、お姫様、です。



 エアラゲの次は、約束通りキールに行く事になりました。

 少しだけ後悔する事になりましたけど、しっかりと、見ました。この国がまだまだ発展途上であることの証明。管理が行き届いていないがために起きている悲劇。私達では解決する事が出来ない、風習に。


 目を閉じ、用事だけを済ませ出てきました。船に乗り、ご飯を食べ、彼女を膝に乗せ日記を書いている。そんな幸せな日常においても、胸にちくりと残っているのです。


 彼女との一時によって、じわじわと元に戻ってはいます。明日にはいつもの私になる事を約束出来ます。

 でも、脳裏にはあの村の家族が浮かび上がります。目の奥で笑っていない笑顔と、ぎこちない親子関係、空虚に響く笑い声。どこまでも寂しい町を見ながら、私達は次のエセフぁに向け船を動かしました。


 この旅は魔王討伐の旅。解決出来ない問題は、王都への報告だけに留めるしかありません。その報告も、魔王討伐後に纏めてする事になるでしょう。

 村の改善は、ずっとずっと先になるのです。


 この先も、解決出来ない問題には目を瞑るのでしょう。その覚悟はあったはずです。目の当たりにしても、揺らぎません。しっかりと実践できました。


 だから……だか、ら……私は頑張るしか、ないんです。


 彼女の傍にいると、そんなささくれが治っていく。彼女の言葉、彼女の視線、彼女の香り。私だけの傷ではありません。彼女と共に、今回も……乗り切ってみせます。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ