転移39日目 記入日 A,C, 27/04/03
今日から、レイメイさんの修行を変更しました。私の攻撃をただただ避けるだけです。今までは、反撃を許していました。反撃に転じることで、私の攻撃に隙間を作る事が出来ていたのです。それを封じました。
言ってしまえば、レイメイさんとの初任務後に起きた喧嘩。そこで私がした事をしてもらいました。反撃を禁じましたけど、私の攻撃を避けるために全てを尽くすのは良しとします。例えば、フェイントとか。
それに気付くまでに、どれ程の時間をかける事になるかは……定かではありません。
それと、彼女に暴言を吐いたレイメイさんには明日、地獄を味わってもらいます。口の軽さが人生において、どれ程の悲劇を生むのか知ってもらいましょう。
今日の日程としましては、岩山を超えブフぉルムまで行く、です。ブフぉルムで船を整備して、明日出発。予定は未定、その言葉はいつでも実感出来ます。
岩山で出会ったマリスタザリア第一号。シーアさんの判断により轢き逃げと言う事になりました。しかし、相手のマリスタザリアは一枚上手でした。体術による回避。そして反撃。船の船首に大きな穴が開けられてしまいました。
この思わぬ反撃は、船首破損という結果だけではなく、一つの事件に繋がりました。先日発覚した神隠し。その被害者へ。
見つけたのは轢いたマリスタザリアの傍です。これで一気に解決とならないのが、私達の旅です。子供達は、魔力と魂を……抜かれていました。
人の死。それは、どういうのを言うのでしょうか。
心臓を一突きにする。
首を落とす。
血を一定量抜く。
脳を破壊する。
そのどれにも当てはまらない、魂の喪失。これは、死と言えるのでしょうか。心臓は動いています。呼吸もしていて、脳も働いています。目に光はありませんでしたけど、瞳孔の収縮が少しだけ見られました。
まるで人形のようになった子達でしたけど、確かに……生きていました。
ならば私達は助けるために動くだけです。親御さん達とも、約束しました。どうすれば助けられるのか分からないのに、私の口はすらすらと言葉を紡ぎました。私はいつからこんなにも……。
ブフぉルムに向かう途中、ある町を見つけました。
プレマフぇで出会ったフロンさんの故郷。ポトロフ。今はもう、地図にない町。マリスタザリアに壊された痕が、生々しく残っていました。
その町には、エッボの部下と思われる人たちが残した痕跡がありました。王国西にある、大きな建設業者との関わりを示す報告書と足跡や吸殻です。
それ以外の情報。神隠しに通じる物はありませんでした。エッボが西に進出しようとしていた事は、エッボの城から見つかっています。新情報は本当に、何もありませんでした。
それでも、知ることが出来たのは良かったかもしれません。マリスタザリアによって滅ぼされた町があるという事です。
これから先も、あるでしょう。覚悟する時間をいただけた事に、感謝します。
ブフぉルムでは、神隠しの被害者の方と話す事が出来ました。岩山で見つけた子の中に、その人のお子さんが居たのは、僥倖でした。まだ助かったと言えるかは怪しいですけど、少しでも救いになってくれていたら良いと、思っています。
整備から修理となった訳ですけど、明日の夕刻までかかるそうです。その事に文句なんてありません。むしろ、休息と思っています。シーアさんも酷く疲労しています。彼女もどこかで、疲れているはず。レイメイさんは……良く分かりません。疲れているようには見えませんね。
何にしても明日、マリスタザリアが出なければ一日中休息としましょう。
彼女やシーアさん、レイメイさんに手料理を振舞う機会に恵まれました。鰤の照焼き、椎茸人参レンコンのお煮しめ、ほうれん草のおひたし、鯛のお吸い物です。和食の一膳です。
彼女もシーアさんも、レイメイさんでさえも褒めてくれました。彼女の幸せそうな顔が、私の心を満たします。料理を振舞って、こんなに高揚したのは久しぶりです。彼女に酒蒸しを振舞って以来です。
向こうの世界で、父に振舞った時はこんな気持ちにはなりませんでした。彼女が特別なんだと、改めて想います。
彼女の為なら、何度でも作って上げたいと想っています。でも、私も彼女の料理は毎日でも食べたいのです。彼女が疲れた時。その時が、私が動く時です。
私が作るときは、シーアさんが外に食べに行く事になるので……その辺りをちゃんとしないと、代わりにはなれそうにないですね。彼女の手際の良さには、驚かされます。私と同じくらいのスピードで、シーアさんのお腹を満たすほどの物を作るのですから。
彼女の身も心も満たせるのは、いつになるでしょう。旅を終えて、彼女と共に……。って、気が早いですね。
今日のお願い。
今日彼女からお願いされたのは、私の髪を整える。です。色々な髪型を試していました。お団子、ハーフアップ、三つ編、シニヨン。今日は、彼女が一番お気に入りだったハーフアップで過ごしました。
彼女も、同じ髪型で過ごしてくれました。明日も、お揃いが良いなぁと想うのです。
明日も、ハーフアップを作ってくれるのでしょうか。それとも、別? わくわくが止まらない程に楽しみです。
明日分のお願いもどうなるのでしょう。休息しているのですから、それ関係? こうやって想像する時間さえも、愛おしいです。
少し早いですけど、寝ましょう。今日はちょっとだけ、深く眠っても良さそうですから。