私の守るもの②
「そういえば、アリスさん」
私の疑問は尽きてませんでした。とういうより疑問じゃないことのほうが多いような気さえします。
「どうなさいました? リッカさま」
「私たちの、ローブ。魔法を使うたびに光ってまし……た、けど。どういう原理なの?」
敬語の癖が抜けませんね。もう少し待って欲しいです。
「はい、このローブもアルツィアさまからの贈り物なんですよ」
にこやかに、ローブのスカート部をつまみ上げ答えます。その姿にどきりとしてしまいますが、表情に出ないように気をつけます。
ただのローブの紹介が、ファッションショーに早変わりです。
私がやってもきっと、子供っぽい仕草のはず。でもアリスさんがやると……こんなに、心臓が高鳴ります。
「ここでも神さまの……。じゃあ、”巫女”だけなんだね」
神さまは”巫女”にしか干渉できません。しかも神さまが見える、歴代でもアリスさんと私だけしか、この服と核樹産の杖と木刀を受け取ることが出来ないのです。
「そうなります。そして、杖やリッカさまの木の剣、木刀、でしたね。それらと一緒ですね。私たちの魔力制御の補助になります」
なるほど、このローブも……私達の補助……。って、もしかして。
「つまり、このローブも”神林”の!?」
私は改めて服を摘み、目を凝らし、体全身で確かめます。
(仄かにだけど、森を感じる……? でも木刀ほどじゃ)
「いえ、このローブは紋様部分にアルツィアさまの髪を溶かして織り込んでるのです」
アリスさんが私の変貌に眉根を寄せ困ったように笑います。しまった、変態に見えてしまったかもしれません。……森フェチだってバレてませんよね? 恥ずかしい……。
「そ、そうなんだ。神さまの」
ばつが悪いので話題をかえます。
「それにしても、こんなに補助受けていいのかなぁ? いくらなんでも、手厚く保護されすぎなような?」
杖、木刀、ローブ。明らかに優遇されすぎです。
「私たちは……本来なら、二つの得意魔法しかないはずなのです。それが、”巫女”として三つ目が追加されました」
そういえば、魔法は多くても二つしか得意分野が出ないんでしたね。
「三つは、本当に制御きかないんです。昨夜、リッカさまが媒介もなしに魔法を行使したとき、私は本当に……っ」
アリスさんは……私の胸に飛び込み、必死に耐えています。私は早く、力に慣れる必要があると、感じました。
「でも、ローブか武器のどっちかでも充分な気がするんだけど……?」
制御装置、そんなに必要なのでしょうか。アリスさんにとっては、杖の方が重要みたいですけれど……。
「杖や木刀は指向性ですね。あの方向へ魔法を打つ。という想いを乗せやすいようにです。ローブは魔力を体で正しく感じられるようにです。この紋様に合わせて、体に魔力が流れるイメージをしやすいようになっています」
どうやら、私が思っている以上に重要みたいです。
「これがないと、私たちは大魔法を行使することが困難なほど、制御が難しいんです」
二つで別の役割があるんですね。出力と回路? みたいな物でしょうか。アリスさんにとっては、出力が難しいらしいのです。
「そっか、二つとも必要なんだね。ありがとう、アリスさん」
「いえ、お役に立ててうれしいです」
お互い、クスクスとと笑いあいました。
『媒介の説明足りてなかったから来たけど、いらなかったかい?』
神さまが遅れてやってきましたけれど、それはもう聞きました。
「武器が魔力に指向性をもたせるため、ローブが正しく感じられるようにですよね。アリスさんに教えてもらいました」
『ああ、よかった。必要なものだって分かってくれればそれでいいよ。それがないと、大怪我しちゃうから』
私の顔が引き攣るような事を言ってきます。制御どうこうという話と、アリスさんの反応で、そうなのだろうとは思っていましたけれど……。
『訓練次第で制御は出来るようになるだろうけど、二人ともまだ若いからね。気をつけておくれよ。私の都合で起きちゃった不都合だからね。これくらいの支援は必要さ』
本来なら生まれたままの、二つなら起きない不都合。それが三つに無理やりなっているのです。”光”を入れられたから、です。それが不都合とは言いません。必要な事なのでしょう?
『まぁ、私が出来るのはこれくらいだよ。今はね。これから二人には過酷な試練を私の代わりにやってもらうんだ。”巫女”への干渉、その範囲内ならやるさ』
神さまなりの親心、ですね。これがなければ私達は、何十年と修行しなければいけなかったのです。それを思えば、最高のプレゼントです。
『これで今言えることは全部だ。あとは二人でゆっくり考えておくれ』
そういってまた、消えるように居なくなってしまいました。忙しいようで、急いでいるように感じました。
「――では、リッカさま。戻りましょう。もう昼食のお時間ですので」
もう日が昇りきっています。お腹がならないように細心の注意を払います。
「アリスさんのスープまた飲みたいなぁ」
でも、そんな事を考えたものだから……ぐぅーとお腹が鳴ってしまいます。
「まだありますから、暖めなおしますね」
「あう……」
アリスさんが私の頬を撫で、慈愛の瞳で見ました。
私に、腹ペコキャラがついてしまいそうです……。でもアリスさんの手料理ならば……腹ペコキャラになれそうなのですから、間違いではないのでしょう。
次々に現れる疑問。
もっとうまく話しを進めることができるように勉強勉強。