私と彼女の魔法③
『”光”は悪意への特効だ。悪意に対して絶対的な優位をもてる』
悪意、それは世界の脅威……ですよね。
『悪意を持たない人間はいない。人間の悪意にもダメージは与えられる。痛みすらなくね。だから、”殺すことはできない”』
つまり、アリスさんには攻撃能力がほとんどないってことですか。
だから守護者がいるんですね。悪意への攻撃は出来ても、人への攻撃手段のないアリスさんを守るために。
『そういうことさ。まぁ、一つだけ最強の”拒絶”があるけれど、あとでアルレスィアと話しておくれ。余談だけどね。守護者はアルレスィアが”巫女”になってから人を殺したことはないよ。アルレスィアが止めていたからね』
でも、昨夜のことがあれば……。
『疑問もご尤も。でもまずはリツカの魔法から説明しようか。リツカは”理解”しなければならない。自分の魔法の得意分野を』
私の、得意……?
『そう、”光”はもちろん。残り二つをね』
「私も、三つあるんですか?」
『ああ、あるよ。アルレスィアと一緒だからね。本当はもう一人三つ持ちがいるけど、今はいいよ。三つかどうかも怪しいからまだ調べてる途中だから」
それにしても、同じ”巫女”だから? かな。三つは特別という話です。”光”が入る”巫女”は本来、得意な魔法が一つだけのようです。
なのに私達は、二つ持って生まれた、と。
『”光”と――”強化””抱擁”だ』
強化、は……イメージできます。あの時の圧倒的な身体能力の向上は、そういうことでしょう。でも抱擁……?
『”抱擁”包み込む力だよ』
包み込む力、ですか。
『包み込むんだ、これだけ分かっていれば応用できるだろうね』
ふむ。使い方までは教えてくれないようです。
『教えられないというか、私にも詳しくわからない』
「ふぇ?」
「んんっ」
思わず変な声が出てしまいました。アリスさんが口を押さえて下を向いています。
『リツカの魔法はこの世界にはないよ』
どういうことでしょう。アリスさんも思案顔です。ちょっとニヤけてしまっているのは、私が変な声を出したのを引き摺っているのかもしれません。
『本来魔法は、世界へ発現する力だ。治癒も、自分には使えない』
自分、には……でも私――。
『自分自身の”強化”なんかないよ。この世界には』
他人を強化するのはあるらしいです。でも、自分強化はない……。私はどうやら、この世界でも異質中の異質みたいです。
『私にも、それだけは分からないね。ちょっと困ってるけど』
神さまが苦笑いをしながら、それでも問題ないと言いました。問題ない、のでしょうか……。
『自分自身のことだから、イメージしやすいし。すぐ使えるようになるはずさ』
何か問題があるなら困りますけど、ないなら……いいですね。気にしても仕方ありません。出来るか出来ないかの二択です。
『ちょっと、アルレスィア。大丈夫だよ、何も問題はないって』
アリスさんと神さまが何か口論になってます。止めたほうがいいんでしょうか。
『さて、早速使ってみてくれ』
「……ソウは言われても、どうやってです?」
『ん?”言葉”を発して、想うだけさ』
「その”言葉”がわからないんですけど……」
『ふむ。あの時は焼ききれた勢いでそのまま発動だったからね。無理もないか』
昨日は勝手に発動したんです。自分の意思はありませんでした。
『それじゃあ、イメージしなさい。きみが魔法を発揮したい場面を。どうして魔法が必要なのかを』
私が魔法を使いたい場面、使いたい理由。
アリスさんを失いたくない。
アリスさんを守りたい。
アリスさんと一緒に―――生きたい。
「―――私に……強さを……っ!」