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六花立花巫女日記  作者: あんころもち
2日目、彼女の温もりと共になのです
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私と彼女の魔法②



『それじゃあ、確認していくよ』


 私が魔法を自由自在に扱うための、確認作業。イメージするための。これが必要だということです。


『世界はテレビだ、魔法を映してくれる、ね。マナは電力。無限のように感じるこの世界のマナだけど、電力と一緒でしっかりと限界はある。今は供給のほうが上回っているけれど、遠い未来では足りなくなってしまうかもね』


 頭の中で、テレビを作り出します。そして電力を流していくような、簡単な絵を描いていくのです。


『人間はリモコン。魔法を世界に発現させるための電源さ。魔力を発することで電源を入れる。”言葉”と”想い”でチャンネルを変えるように、自分の想うような現象を世界に発信する。世界はその想いを受け魔法を発現させる。リモコンだからね。電池がなくなると使えなくなる。それはつまり、死ぬってことさ。でも電池は電池でも充電池だよ。寝たり食べたりで回復する』


 死……多用は出来ないけど、しっかり休めばそう簡単には死なないそうです。


 言葉と想いで、映像を映し出すのですね。映像は映像でも、リアル。例えば炎が移れば、熱も感じるし、物は燃える……。


『マナの供給は自然がしてくれる。森、海、動物、そして人間も』


 使う側の人間も……?


『そうだね、森や海は生み出してくれる。酸素のようにね。動物や人間はだね。今この瞬間も生命力を発しているんだよ。魔法を使わなくてもね』


 今も、ですか。


『そう、自然と発している生命力、それも供給源さ。エコだね』


 くくくっと悪戯っこのように笑う神さま。


 自分で使った分のマナは、自分が自然に発しているマナで供給出来るそうです。現状、需要よりも供給の方が上回っているそう。


『まぁ、そのせいで問題が起きちゃったんだけどね』

「……問題、ですか?」

『と、まぁ分かってくれたかな』


 とりあえず、イメージは出来ました。どういった流れで魔力が魔法へとなるのか。マナはどう消費されるのか。マナはどう供給されるのか。


『じゃあ、実際に使ってみようか。やりながらのほうが、これからの説明はしやすい。アルレスィアお手本を見せてやっておくれ。()()()()()()軽いものなら出来るだろう?』


 杖は、集落を守るための盾の基点なのか、地面に突き刺さったままです。そういえば、昨夜は杖がないのに魔法が使えていました。


「―――。はい。アルツィアさま」


 アリスさんが荘厳な雰囲気を纏います。そして、瞳とローブを銀色に輝かせます。


(――きれい)


 アリスさんの頬が少し赤く染まります。


「―――っ。私に盾を(【シルテ】・イグナス)……!」


 アリスさんの前に掲げられた手から銀色の盾が現れます。


『じゃあリツカ、攻撃し』

「嫌です」

『……』


 つい反射的に言ってしまいました。


『まぁ、分かってたよ。効果は昨夜見た通りだ。”拒絶”だよ』


 怒られるかと思いましたが、どうやら神さまには私が断ることはわかっていたようです。


 じゃあ言わないで欲しいと思ってしまうのでした。


『アルレスィア、もう大丈夫だよ。ありがと』

「いえ、構いません」


 盾が消えていき、アリスさんの顔が先ほどより赤くなっていました。本当に大丈夫でしょうか……。


『魔法には個人個人で得意分野があってね。アルレスィアの場合、”拒絶””癒し””光”だ』


 三つもあるんですね。癒し、という言葉で今までのことがわかります。オルテさんは、アルレスィアさんに治してもらったようですね。多分私も――。


『これは余談だけどね、得意魔法三つは破格だ。他には居ないよ。多くて二つ』


 アリスさんってもしかしなくても、最強?


『その分制御が難しいからね、杖がないと簡単なものしかできない。えっと、杖なしだと、(【シルテ】)治癒(【ヒルテ】)くらいだったかな』

「はい……」


 アリスさんが神さまの言葉に、唇を噛み締めうめく様に答えました。無力さに、苛まれているようです……。


「私にもっと……力があればっ! あの時、リッカさまに無茶なんてっ」


 そんな弱弱しく震えるアリスさんを、私は抱きしめます。


 言葉は、いりません。これで伝わってくれるはずです。私は無事だって、もう一人ではないんだと。


「……」


 アリスさんから優しく抱き返されます。暖かい。


 神さまがニコニコとその光景を見ていますが、私たちは抱きしめあうのをやめないのでした。



『得意分野だけの魔法しか使えないってわけじゃないんだ。一応全部使えるよ。威力や規模に大きな差が出るけどね』


 何事もなかったかのように神さまが続けます。指摘されたら顔から火が出ていたでしょうから、ありがたいです。


『そうだね。例えば、火を扱うのが得意な人間と得意ではない人間がいるとしよう。得意な人間はそれこそ、森一つを覆いつくせるほどの力を出せることもある。でも不得意な人間はだね。それこそ火花を起こせる程度だよ』


 そんなにも差が……。


『でも使えることに変わりはない。生活において火花を起こせるだけで全然違うだろう?』


 そうですね、常にマッチをもってるようなものですし。ガス等の燃料もなく火が起こせる。向こうの世界の燃料問題、一気に解決します。


『アルレスィアの”盾”と”治癒”も使える人は結構いるよ』


 護衛とか、医者とかはもってそうですね。でもアリスさんのは確か、”拒絶”? でしたよね。


『”拒絶”というのは居ないね、今のところは。今後でるかも分からないけど、”拒絶”で分かっているのは、”盾”を含む拒絶の力を十二分に使えるってことか、汎用性は最高峰だよ』


 アリスさんの”拒絶”は唯一のもの、”盾”は居るけど、”拒絶”とまで言えるのは居ないということのようです。


『でも、”光”だけは別だ。”巫女”しか使うことができない』


 アリスさんの得意魔法の中にあった、”光”ですね。やはり特別みたいです。


『”光”は私が直々に設定した魔法だ。”巫女”という装置を作ったときにね。特別な力を持っていたほうが、信じるだろう? 私の使いだって』


 たしかに、神さまの使徒を語る人は多いでしょうけど、明らかに特別なものがあれば別ですね。


『わかるね、リツカ。”巫女”しか使えないんだ』

「……つまり」

『そう、きみも使えるよ』



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