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六花立花巫女日記  作者: あんころもち
30日目、旅の始まり始まりなのです
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転移30日目 記入日 A,C, 27/03/25


 今日、王国を旅立ちました。

 支配人さん、牧場の方々、市場の皆さん。ラヘルさん、クランナちゃん、リタさん、ロミーさん。でるくさん、防衛班の皆さん。コルメンスさん、エルさん……アンネさん。

 エリスさん、ゲルハルトさん。

 皆に見送られて、旅立ちました。


 朝の広場で、軽いストレッチでもと、踊ってみました。

 彼女に歌を聞かせるという約束を、この街に居る間に守りたかったのです。

 ワルツに合うように、『美しく青きドナウ』をドイツ語で歌いました。

 歌でだけ、外国の言葉を知っています。翻訳も一応出来ます。文法は良く分かっていません。だから、日常会話は出来ません。

 そんなんだから、この国の言葉を……まともに話せないのかもしれませんね。

 

 ダンスを見られ、歌を聴かれました。

 見られて困るものではありませんけれど、少しだけ恥ずかしかったです。

 見られた所為で、シーアさんやエルさん、エリスさんにイジられてしまいました。

 エルさんは、私の歌に興味があるようでした。ダンスもそうですけど、向こうの世界の文化に興味があるんでしたね。

 神誕祭初日の昼食会でも、向こうの世界に興味を持っていました。

 旅が終わったら、じっくり話してあげたいと思っています。

 歌を、音楽隊の演奏に合わせて歌うという約束も、してしまいましたし。


 アンネさんとの件は、まだ終わってないので、深くは語りません。

 ただ、連れ帰るのだけは決まっています。

 

 ゲルハルトさんから再び、集落の剣を授かりました。

 最初は、彼女を守るための剣として授かり、返すのは全てが終わった後という話でした。

 

 でも今は、違います。

 私自身の手で、返しに行くのです。

 彼女だけでなく、私自身も、守るための剣。

 約束は果たします。


 出発し、最初についた街ブレマ。

 旅人の情報交換、物資調達などを主な生業とした街です。

 浄化した人の中に、ヘンタイさんが居ました。

 私の皮が、欲しいと言っていました。

 意味が分かりませんし、気持ち悪かったです。

 それに――っ。


 彼女が、私を守るように放った”拒絶の世界”。

 体に纏わりつくようなあの人の視線。粘ついた視線。私を吟味するような視線。

 全てを吹き飛ばすような”光”が、私を優しく包んでくれました。

 色々な人が居るんだなぁと、素朴な感想で済んだのは、”彼女の光”のお陰です。

 私を守る”箱”と”光”。彼女が編み出した、私への想いで出来た魔法。

 彼女の想いを強く感じます。


 事件はそれだけで終わらず、先の戦争の爪痕とも言うべきものがありました。

 私達を縛り付けるために、シーアさんを誘拐し、人質にしたのです。

 何事もなく終わって、良かったです。


 早く見つけられたのは、元締めさんを見つけたからです。

 元締めさんを監禁しようとした人たちを締上げ、少し痛い目を見てもらいました。

 怪我はありません。でも、ちょっとしたトラウマにはなったかもしれません。

 いくらマリスタザリアへの恐怖心を持っていたからといって、拉致監禁なんてやってはいけません。


 今後も、シーアさんの身の安全を確保しなければいけませんね。

 兄弟子さん、もとい、レイメイさんにはしっかりと伝えなければいけません。

 シーアさんは主力です。

 戦闘を優位に進めるための、絶対戦力。


 それ以上に、シーアさんは彼女と私にとっても妹の様な存在。共に旅を、無事に終えるのです。


 まだ旅は始まったばかり。

 これからも困難が待ち受けているでしょうけれど、突き進むだけです。


 まずはレイメイさんの修行ですね。

 まだまだ、詰めが甘いです。

 基礎体力作りからした方が良いでしょうか。

 


 早くお風呂に入りたいです。

 お風呂前に日記を書こうとしたのは失敗でした。密着した彼女に、匂いを嗅がれてしまいます。

 余り汗はかいていませんけど、大丈夫でしょうか……。

 明日からは、お風呂の後に書きます。

 

 でも、鼻腔をくすぐる彼女の香りは、確かに……危険な香りです。

 何故か頭がくらくらと。

 気分が高揚して……。

 ああああぁぁ……。これでは私がヘンタイさんみたいですっ!


 お風呂の前に甲板で素振りでもしましょう。

 彼女の手を掴んで外に出る準備を始めます!



ブクマありがとうございます!

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