私と彼女の世界②
「っ――!」
重苦しくも、優しさに満ち溢れた圧が私を包みました。アリスさんは集中して……杖を横にして前に構えています。
「私の領域を守る強き盾よ……!」
そして呪文のようなものを唱え、杖を縦にし、地面へ勢いよく突き立てました。
すると……銀色の壁のようなものが、アリスさんの杖を中心にして広がっていきます。その範囲は広く、集落全域を覆います。いかなる脅威からも守るための盾のように。
「アルレスィア様……」
見張りの方が驚愕と共に、労わるように声をかけました。
「これで、しばらくは大丈夫でしょう。それでは、少し席を外してください。お願いします」
アリスさんは汗を少し額に浮かばせ、見張りの方に改めてお願いをしました。
「―――。わかり、ました。では……」
見張りの方たちが、一礼して高台からおりていきます。その背には、無力感が滲んでいました。
『無茶をしすぎだよ、アルレスィア』
今まで無言で、やりとりを見ていた女性が、やっと声を出します。
「これは、私の怠慢でおきたことへの贖罪。浮かれ、事態を軽くみていたことへの罰です」
アリスさんが弱弱しく懺悔します。その姿を見たくなくて、私は声をかけようとします。でも……。
『真面目すぎだよ、アルレスィア。それに、原因を突き詰めていけば、私のせいだよ。謝ることはできないけどね』
尊大に、しかし慈愛に満ちた表情と声音によって、私は声をかけるタイミングを逸してしまいました。
「アルツィアさまのせいでは――」
アリスさんが女性に申し訳なさそうに声をかけます。その姿に私の心がざわめきました。アリスさんとオルテさんが話している時も、これが起きたような……。
(……なに、いまの?)
この感情が私を不安にさせます。私は胸を押さえつけました。
『とにかく、あまり無茶をしていはいけないよ。これからきみにも”お役目”についてもらうんだから』
お役目、そういえば私にもそれがあるとのことですが、一体……。
『さて、きみにとっては初めましてだね』
その女性が私に話しかけます。
『私はアルツィア、この世界と、きみの世界を創った”神さま”だよ』
こともなげに告げられる衝撃的な言葉に私は固まります。
「かみ……さま?」
神さまって、あの神さまでしょうか。神樹神社に奉られている……?
『ああ、その神さまだよ。リツカ』
簡単に私の心を読みます。
私の困惑した様を、アリスさんが心配そうに見つめていました。
『さて、何から話したものか。まずは世界のことについて話すとしようか』
思案顔だった神さまが、ゆっくりと話し始めます。